まぁ、好みはあるだろうがな。
この身体を前にして、勃起せん男は男じゃねーだろうとまでは、考える。
初めての身体だ。
男を知らぬ身体だ。
けれど、百戦錬磨の娼婦並みの色気と艶がある。
贔屓目でなくこれは、天性の物だろう。
「いや。いー身体だなぁと。しみじみ思っただけだ」
言いながら、鼻先にキス。
くすぐったそうに肩を竦められたが、嫌がってはいない。
その証拠に、俺の何ともな発言への批判がなかった。
こいつは、あまりSEXとは縁がなさそうな、甘いやり取りが好きなのだという確信を強める。
「……貴方には、違うコトで、褒めて欲しかったかも、です」
「優秀とは聞いている。お前が生徒だったらな。たぶん素直に褒めていたかもしれんな」
「あまり、褒めない方だと。龍麻から聞いてますよ」
「不出来な生徒が多いんでな。俺とて、たまには褒めるさ……たぶんな」
「たぶんなって……貴方らしいですけど。教師の基本は飴と鞭じゃないんです?」
「鞭好きな生徒が多いぞ?」
「貴方の、気のせいじゃないですか」
「……お前。話ずらすの上手いな」
ついつい、こいつを組み敷いているのを忘れる。
それもまた、こんな行為に及ばなくとも、こいつとの対話が楽しくて仕方ない自分が乗って
いるのだという、自覚はあるのだが。
「……貴方こそ。さすがは年の功。正気に返るのが早いですよ」
はぁ、と溜息をつけば、豊かな乳房がふるんと揺れた。
そうだな。
俺的には、こっちを堪能するのが当たり前なんだけどな。
「この状況じゃぁ。正気にも返るさ。こんな大きくて、愛らしいおっぱい目にすりゃぁな」
「んっつ!」
散々弄り倒した乳房は、熱くて蕩けそうだった。
先に進もうと思っていたのに、また逆戻り。
全く。
困った身体だ。
「せんせ?」
ぽふんと、豊かな胸の中顔を埋めてしまえば、なぜか心配そうな声。
このまま、眠りにつくのも悪くないと、真剣に考える自分が確かにいて。
俺は一人、苦笑する。
「いぬがみさん?」
益々、壬生声が拙い物になってゆく。
何だか、洒落にならない勢いで睡魔が襲ってきた。
俺が、女の腕の中で眠るなんてなぁ。
……驚きだ。
「……もりと、さん?」
しかし、躊躇いがちに呼ばれた。
杜人さん、の声に。
眠りかけていたはずの、欲情が甦った。
「んだ?そんなに、したかったのか?」
無茶苦茶に貪って、とろとろに蕩けさせて。
この、俺の肉に。
縛られたまま、壊れてしまえばいいと。
どうしようもない、独占欲が瞬時に頭の中を満たした。
「やあっつ!」
大胆に太股を抱え上げれば、悲鳴も上がるだろう。
ばたつく足首を、骨軋むほど締め付ければ、びくりと震えた肩を合図に抵抗が収まった。
「このまま、寝てもいいと思ったんだぞ……真剣に」
自分でも信じられない、穏やかな感情。
お前を抱き抱えて、何もせず、ただ。
温もりを感じるだけで、至福を覚えられると思った。
実際、覚えられるのだろうと、信じてもいる。
それほどに、嘗てない心地良さなのだ。
「だが、お前は、呼んだからな?」
しかし、お前は、俺を、呼んだ。
獣でもある、俺の名前を。
「もりと、と呼んだからな……」
奪うしかないだろう。
壊すしかないだろう。
俺の欲望のままに。
お前が、俺を呼ぶのなら。
他でもないお前が、呼ぶのなら。
太股に口付けをする。
思うままに吸い上げれば、震える太股の上、真紅の花が咲いた。
キスマークなぞ、つける趣味はなかったのだが、こいつの肌は簡単に鮮やかな色を湛える
ので、つい、つけたくなってしまう。
白い肌を汚す暗い愉悦と、紅い花を咲かせる独占欲。
どちらも、今までの俺にはなかったものだ。
それが、どれほどのものでもないとしても。
俺を変えた、責任は。
この、身体で取って貰うぞ?