龍麻が、少女に何を見せようとしているのかなんて、
考えるまでもなく想像がついた。
間違いなく龍麻は、行為を見られると興奮が呼び覚ま
される人間に属するだろう。
すでに死んでいるとはいえ美少女に分類される幼いギ
ャラリーに、見せつけるまでもなく出されたナニは既に
かなり激しく猛っていた。
「紅葉……」
名を呼ばれて促され、目を閉じたままで口の中に龍麻
の巨大な肉を迎え入れる。
熱くて太い肉の塊が口の中いっぱいいっぱいに押し込
められる苦しさには眉を潜めて耐えた。
頭がまた、つきんと痛む。
まるで少女の嫉妬がそのまま伝わってくるようだ。
喉の奥を突く長くて大きな肉塊が容赦なく出し入れさ
れる。
せめて自分が楽なようにと意識して唾液を絡めるので、
溢れた液体は口の端から糸のように零れて流れると、顎
を伝い花びらの上にほとほとと落ちた。
龍麻の肉塊からにじみ出る先走りの液体と自分の唾液
が絡まって息がつげずに頭がくらつくのか、少女の目線
の強さに追い詰められて呼吸が詰まるのか、もう判断す
る気力はどこにもない。
ただ目を閉じて龍麻が満足するまで、肉塊に舌を絡め
て何度も吸い付いては詰まった息と共に吐き出される液
体を無理やり咽下した。
頭に差し入れられた指にぐっと力が籠る。
喉の奥に吐き出されるだろう液体に備えて、鼻から息
を吸い込んで待ったが、予想は外れた。
「……っ……」
勢い良く唇から引き抜かれた肉塊は、僕の顔全体にね
ばつく液体を浴びせかけた。
かけていた眼鏡にガードされた瞳以外は全て白い液体
の洗礼を受けてしまう。
「……驚いた?たまにはこーゆーのもおもしろかろう?
俺のを浴びて呆然とする紅葉ってのも、すっごく可
愛いわ」
はらはらと絶え間なく落ちてくる花びらが唇に止まっ
たのを見計らったタイミングで、龍麻が吐き出した液体
と花びらを指先で唇の中に押し込んでくる。
「さてと、今度は紅葉の番だな…ここなら押し倒して
も制服が汚れないだろう?どの道、血に塗れた服は
廃棄処分だろうから気にすることもないんだとは思
うが」
龍麻の前で血の匂いをまとうのを毛嫌う僕が、服を替
える間も惜しんで駆けつけたのがそんなにも嬉しいのか、
龍麻の顔には満足気な表情さえ浮かんでいる。
押し倒されながら、眼鏡を外されて桜の花びらに埋め
るようにして置かれた。
手際よくズボンが脱がされるというよりは、勢い良く
剥がされて、下半身が剥き出しになった恥ずかしさも今
日はあまり覚えない。
桜にでも、魅入られたのだろうか。
決まりきったように…最後は抱かれて狂ってしまうの
だとわかっていながらも…抵抗を重ねてしまうのが常だ
ったけれど、何だか今日は違う。
所詮はどうあがいても表裏一体の僕達だ。
結局の所僕も龍麻と同じ性癖の持ち主なのかもしれな
い。
恐らくは少女の激しい視線によって酷くなってゆく痛
みが、心臓の音と重なり出す。
ふとした拍子に聞こえる自分の鼓動は、自分が確かに
生きていると認識する手段の一つだ。
僕はその手段と痛みのリズムを合わせることを覚えた。
"痛み"を当たり前の日常に組み込もうと僕が考え出して
鍛錬を繰り返した末にようやっと見出した逃げ道は、龍
麻に抱かれる時にも適用されている。
……皮肉にも。
こめかみの鈍痛と龍麻が入り込んでくる時の激痛は、
今すぐ叫び出してしまいたいダメージを僕に与えた。
嫌だ、嫌だ、嫌だ!
どうして僕がこんな痛い思いをしなくてはいけないの
か。
これこそが人を殺め続ける僕に下される罰なのか。
罪は己の痛みでしか贖えないものか。
咎はどこまで、どこまでつきまとうのか。
……許される殺人は本当に存在するのだろうか。
痛みから気を紛らわせようという本能によって、乱れ
始めた思考が好き勝手な暴走を始めた。