「しゃーねぇな。くれて、やるよ」
どっこらせっと、枕元に行儀よく並んでいるゴムのうち一つを手にすれば。
「やっつ!先生。生でして下さいっつ!」
「……お前なぁ。医者の俺にそれを言うかね?」
そりゃ妊娠の心配はねーだろうがな。
あそこってーのは、細菌の巣窟なんだ。
幾ら綺麗にしたって、お互いの繊細な部分をぶつけ合うんだぜ?
用心に越したこたぁ、ねーだろうに。
「だって、先生のを中で、生で感じるの好きだし……鋼のには、ちゃんと着けさせますよ」
「あったりまえだ!大人のマナーだろうが」
「だからこそ。先生とは、ね……他の人間とは皆無ですから、病気とかも心配ありませんし」
「それも、あったりまえだ!んなに、あちこち手を出す淫乱なら、捨てるぞ?」
「嫉妬して、くれてるんです」
……どうして、そうなるんだ。
「曲解するな。嫉妬は別の所でする」
まぁ、微塵も嫉妬がないとは言わない。
未だに、どうしてこいつが、何時までも俺に執着するのかイマヒトツわからないトコもないじゃ
ないから、一部だけ認めることにする。
「じゃあ、尚の事。生でお願いします」
「何が尚の事なんかわからんが……ああ、もう!しゃーねぇなぁ」
そりゃ、俺も男だ。
SEXは生が好きに決まってる。
ただ、後始末とか病気なんかを考えるとゴム装着は基本だろうよ、と思うだけで。
こんなにも求められて、嬉しくない訳がないんだ。
まー。
何かあっても俺ぁ、医者だからなぁ。
こいつの為に、性病関係の治療はばっちりだもんなぁ。
こっそり勉強したんだよ。
万が一を考えて。
今の今までよくよく考えてみれば、ほとんどが中出し万歳だが、お互い一度も病気になった
例はない。
ゴムを着ける以外の所で、気を使ってるからな。
マスタングも、医者である俺に頼ることもなく、流されない面もあった。
だから、これ以上……嫌がるのも、ナニだろうよ。
俺は、年齢にしてはそこそこなんじゃねーの?という勃起具合のソレをマスタングの入り口
に押し付けた。
先端に、ちゅうっと吸い付いてきて、貪欲に飲み込もうとする様は、時々。
マスタングの生き様なのかもしれないと思う。
どうなるかわかっていて、奴の中に潜り込んで行く俺の生き様も、そこにあるのかと、同時
に。
「ああっつ!せんせっつ」
「……んだよ」
マスタングがイイ声出してくれたお陰で、先端を食わせた途端に堪えきれずに漏れてしまった、
俺の、間抜けな鼻声はばれなかったようだ。
危ねぇ、危ねぇ。
「せんせっつの。はいってるっつ!」
「だ、な……。旨いか?」
「はいっつ。すごく、美味しい、です……もっと、食べさせて……ね?」
首を捻じ曲げて、訴えてくる。
蕩けてしまいそうな瞳。
苦しい体勢だろうに、俺が諾と言わねば、何時まででも様子を伺っていそうだ。
「わあった。もっと、奥まで入れて、やっから……前向いとけ……」
「……せんせ?」
艶めいた唇から放たれる、俺を呼ぶ声。
耳が犯されるってーのは、何も受身の人間だけじゃねぇと思う訳だよ。
少なくとも、俺はこいつの声で無茶苦茶発奮すっからな。
「今度は、ナンだ」
「やっぱり、抱っこがいいです」
「あー駄目だ。お前の背中がうねくるのを見てぇ」
「マニア、ですね」
「んにゃ。お前さんの背中が踊るのを見たら、たぶん全員バックで挑むだろうぜ」
それぐらい見事なのだ。
背中が感情を語ってみせる。
男は、背中で語るって奴だな。
……ん?さすがにちょっと、違うか。
「そういえば、鋼の、も。後背位、多いかな」
「だろう?お前に惚れるだけあって、イイ趣味してるな。エドワード兄も」
年が二周り、三周りか?
離れてるが、一応あれでも恋敵。
言わねーでおいてやるぜ?
身長差が気にならない体勢だから、そればっかになるってーのはよ。
「貴方ほどじゃあ、ないですよ」
「そりゃ、お前さん。年の功って奴だ。さ、大人しく前向いとけ」
「はぁい」
俺が奴にSEXの最中は、快楽以外与えないってーのを、信じて疑わないんだろう。
駄々は捏ねるが、こいつは、普段を知る人間が見たら驚くほどにSEXに従順なのだ。
早く、という感じに。
腰が、ゆっくり一回転だけされる。
アレの先端に、ちゅちゅちゅちゅっと、連続で接吻された気分だ。
医師ならではの特殊プレイで、奴の中を器具で覗きこんでやった事もあったが。
別に。
色が綺麗なぐらいで、ナニ変わったとこもねーんだよな。
この特殊の吸い付きの解明は、医師の俺ではできない。
ま。
する必要もねーんだろうけどさ。
俺は、奴に悟られぬよう息を吐き出しながら、殊更ゆっくりとナニを押し込んで入った。
歓迎される動きは、慣れた奴の中に潜む女がさせる。
押し出される動きは、単純に受け入れる場所ではない所に、強引に侵入を果たそうとする
異物の排出を計る、肉体の反応だ。
この絶妙なバランスが、また。
心地良い。
「あ、あ、んんっつ。せんっせ」
「ちゃんと入ってるか」
「はい。せんせ、の。全部。奥まで、いっぱい。はいって、る」
「入り口も好きだが、この奥も好きだもんなぁ」
男なら浅い部分にある前立腺に触れる辺りが、一番良いのではないかと思うのだが。
マスタングは、俺のナニが届く最奥を突付かれ、広げられ、犯しつくされるのを一番好む。
「そ、です。おく、いじめられるの、すき。だい、すきっつ」
「おい、おい」
「だから、せんせ」