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 「そう。呼んでください、もっと。私を求めて。求めてくれれば、私は貴方を…」
 満たしてあげられる。
 そして、私も例えようなく満たされる、から。
 髪の毛があたってくすぐったいのか、紅葉のしなやかな指が太ももにあたるら
しい私の髪の毛を人差し指で掬って、震えながら耳の後ろへかけている。
 「くすぐったいですか。ここに、触れて?」
 せっかく耳にかかった髪の毛を、紅葉の指に絡めさせながら太ももをなぞら
せた。
 「…本当に…くすぐった…い…」
 「気持ちよくは、なりません?男の生理は不思議なものですからねぇ」
 くすぐられて勃起するなどよくある話。
 人の感覚器とは奇妙の一言につきる。
 喉の奥を締め付けるようにして、紅葉の肉塊を愛撫すると細身の肉が喉を
圧迫するほどに膨脹した。
 「…唇を、離し……て…くだ…」
 「遠慮することはない。たっぷりと、出してくれればいいですよ。いつもいつも
 …していることですからね」  
 しゃぶりながらの会話なんて慣れてしまえば、普通にする会話と何等差し障
りがない。
 肉から口は瞬間離して言葉を紡いでは、喉の奥に届くまで銜え込む。
 息が絡んで咳き込みそうになるのを悟られないように、舌を絡めては唇をす
ぼめて吸い上げた。
 「…口、を…」
 半ば起き上がった無理な態勢で紅葉の指が私の唇を、なぞる。
 「催促ですか。そんな風に躾た覚えはないのですがね」
 「躾られた…覚えなんか!…あ…だ…ん…ふ…」
 喉の奥に飛んだ滴りを口に収めたままで、俯いているの紅葉の掌に落として、
そのまま私の猛った肉になすりつけさせた。
 「たくさんでましたから…濡らしやすいでしょう。貴方の中にいれるのですから、
  きちんと濡らして下さいね。…痛いのは嫌いなんでしょうから…」
 何度入れても辛そうな声は変わらない。
 どんなに時間をかけて愛撫をしても痛みを完全に拭い去ることができなかっ
た。
 だいたい男が男を抱くなんて所に無理があるのに加えて、思いの疎通がほと
んどないに等しいのだから、致し方ないのか。
 「…て…?…」
 「ええ、入れて…紅葉の中で出してしまえば今日の所は解放しますよ。明日
  はまた龍麻達と戦闘にでなければなりません」
 狐と狸の馬鹿し合いくらいどうってことないが、龍麻の目が私に向いてしまっ
たら正直、隠しおおせる自信がない。
 龍麻の力は一介の陰陽師風情がどうにかできるものでもないのだ。
 自分の出した液体で手を濡れ光らせて、私に奉仕するように傳き両手で肉を
擦る紅葉の、忘我の淵にいる表情が本来紅葉が見せる姿を踏みにじっている
ようで、いっそおかしいかった。
 堕とすなら、どこまでも。
 最後、まで。
 「自分で、入れてください?」
 あぐらをかく要領で座った私の上に、完全に自分をなくしたかに見える紅葉
が、片手を使って体を起こすと太ももの上に座り込む。
 ほ、と息をついて自ら腰を浮かすと私の肉塊を握り締めて秘部に押しあてる。
 ぐぬ、と入り口を押し広げたところで紅葉の両腕が私の背中へと、軽く弾み
をつけて回った。
 倒れこむままに、私の肩に上半身を押しつけながら性急に腰を落とす。
 「……痛……う…あ…く…つ、つ……つ」
 背中に爪がたてられた。
 ひきつるような痛みを覚えるので、爪痕でもついてしまったかもしれない。
 「力を、抜いてください。ここをもっと緩めると楽ですから」
 「できれば…苦、労…し、ん…ん…は…あ」
 「苦労しないって?言ってる側から、はしたない音をたてているのはどこのど
  なたでしょうか……」
 痛みを堪えながらも、早く私をいきつかせようと頑張る紅葉だったが、それ
はあくまでも自分が痛くないように刻んだリズム。
、私にとってはもどかしい以外の何物でもなかった。
 「もっと…ですよ…」
 紅葉の腰を引き上げてから、私がつけた赤い烙印が散る肩に顎を乗せて、
その重みと腰に回した両腕で限界を訴え始めた肉に押しつけた。
 「だ…嫌、…だ……つ…ら…」
 「もう、痛くはないでしょうに。また勃ってますし。
  本当の所を、どうぞ」
 「つ…つ…うう…ん…」
 唇がきつく噛み締められて、目には涙すら浮かんでいる。
 「紅葉…」
 突き上げては押しつけるリズムを小刻みに、情け容赦なく叩き込んでゆく。
 「…は…はる…あ…き…」
 「大丈夫ですよ。私しか、聞いていないんですし、ほら。何でしたら記憶も消し
  て差し上げます。貴方も…最後は……覚えていないのですから」
 「もう…」
 「もう?」
 それでもためらう唇に自分の唇を押し当てて、そっと離す。
 何かを思い出したように、離れるのを嫌がってついてきた唇が貪るように私
の唇に絡み付いてきて、唾液が口元を滑るほど夢中になった後にようやっと。
 「許、し……て…く、だ…さ…」
 涙がぶわりと溢れて、私が望んだ言葉が囁かれる。
 どうやらまだ、微かに正気が残っていたようだ。
 呪に符に、言霊に。
 あれだけの暗示をかけたというのに。
 全く……一筋縄ではいかない人だ。
 「ちゃんとに言えましたね。それで、いいんです。一緒に、いきましょうか?」
 紅葉の腰を固定させたままで、肉を深くに突き入れる。
 「…あ…深……い…う…んん……」
 揺さぶられるのを、意識が飛んでいかないようにと私の瞳を必死に見ながら
一緒にいきつこうとする紅葉の瞼に軽く唇で触れる。
 「ここが、好きでしたね」
 この場限りの真っ直ぐな瞳を、それでも離さないように見つめ返して、紅葉
の再び生き返った肉塊を掌で扱いた。
 「…も…は…る…だ……め…い…、ああっ」
 紅葉の吐息が一番荒くつかれる所を狙って突き上げると、二度目でも勢い
の衰えない液体が飛んで私と紅葉の腹を白く汚した。
 力の抜けた紅葉の中は細かい蠢動で満たされていて、その微妙な締め付
けがどうにも堪らなかった。


 

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