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 びくっと太ももを擦り合わせるようにして、村雨さんの頬を挟んでしまっている
身では否定の言葉すら紡ぐ気が失せた。
 それ以上、言うな!とのの意味を込めつつ、村雨さんの髪の毛をぐしゃぐしゃ
とかき混ぜると、それなりには整えてある前髪がばさばさと降りてくる。
 前髪の隙間から僕を見つめる、そのまなざしが、とても龍麻に似ていた。
 僕の感情の揺れを、全て間違いなく見通す、視線は背筋がぞくぞくする興奮を
呼び起こす。
 蓬莱寺さんに必要以上の好意を擁くのを見越して、僕を甘やかす龍麻。
 僕に甘いという点をひっくるめて、蓬莱寺さんを犯せる雄の部分すら肯定した
上で、龍麻が好きな村雨さん。
 己の感情に余裕があると、そういうことなのかもしれないが、二人は時折、嫌
になるほど、良く似ていた。
 「さ、め、さ?」
 「んだ?もう出るってか。もそっと我慢してみろよ。その方がもっと気持ちイイ
  からな」
 しゃぶりながら言わないで欲しい。
 歯が、舌が、吐息が微かにあたって、激しい愛撫よりももどかしくて、余計に
煽られる。
 「だって!んんっ」
 裏筋を擦っていた指先が、そのまま袋に滑った。
 腰の辺りを摩っていた指も、合わせて袋をいじりだす。
 「し、ない、で」
 そんなに、色々と。
 一度に、されたら。
 「我慢、できなあ」
 できる我慢もできなくなる。
 「ん。うっ!」
 恥ずかしいくらいに腰を突き出して、村雨さんの口の中に放精する。
 「ああっつ!吸わない……でっ!」
 まだ吸い足りないとばかりに、吐精している最中にも音をたてて吸われた。
 まるで中に詰まっている精液を全部吸い出そうとする強引さだ。
 「やあ」
 自分では抑えきれずに、太ももと肉塊がびくびくと同じリズムで震えた。
 「……全く。可愛いやな?」
 ただでさえ外れた道で、尚も惑うように優しく、微笑むのはやめて欲しい。
 僕の精液の匂いが香る唇が、容赦なく襲い掛かってくる。
 乾いた喉と、唇が湿らされてゆくのは、きつい匂いも気にかからない心地良さ
があった。
 「さてと?」
 離れた唇が淫猥に歪む。
 何を言おうとしているかなんて、聞かなくてもわかる。
 「僕のように、は無理でしょうから。できるだけ早くイってくださいね?」
 一度隣のシートに移った僕が、ふうと息をついている横で、狭い空間から、の
そのそと這い上がった村雨さんは、僕が座っていたシートに腰を据えて、ズボン
を脱ぐ。
 肉塊は天井を仰いでいるし、大きさは尋常じゃない。
 硬さも凄いし。
 何より驚かされるのは、こんな状態になっていてもいきつくのはずっと先だとい
う所。
 「我儘言うなよ?こいつが中に入ってる時は『もっと!』なんて可愛らしく鳴く癖
  に」
 「それと、これとは。別、です」
 僕は先刻まで村雨さんが納まっていた場所に、身体を滑り込ませる。
 正座をすると位置が微妙になってしまうので、いわゆる女の子座りで身体を固
定した。
 こく、と喉が鳴るのを悟られないように。
 ゆっくりと巨大な肉塊に舌を這わせ始める。
十分すぎる硬さを誇る肉塊は、同じ男としてはうらやましくも有り、ねたましさす
ら覚えるけれど。
 体の奥まで穿つ感触を知ってしまった僕は、更に違う感情を抱く。
 下から上へ、上から下へ。
 飴をしゃぶる要領で。
 ソフトクリームを食べる感覚で。
 滴り落ちる雫が零れ落ちないように、舌全体を絡めての愛撫。
 村雨さんの出す体液よりも自分の唾液でヌルつき始めた所で、大きく息を吐
きながら、肉塊を飲み込む。
 反り返って喉一杯に圧迫する肉塊を、僅かな隙間から入り込んでくる空気を
上手い具合に享受しながら、吸い上げた。
 「…ん……ふ……」
 銜えている僕の鼻にかかった声が響くも、村雨さんの口からは吐息すら零れ
ない。
 根元まで銜えながら、目線を上げれば。
 「ん?何だ……ああ。ちゃんと気持ちいいぞ……全く、上手くなったもんだと、
  今も思ってたトコだぜ」
 本当に気持ちいいのだろうかと、勘繰りたくなる余裕の体。
 僕なんかは、自分でも情けないくらいに甘ったるい声が零れるんだけども。
 だいたい村雨さんは、いきつくその瞬間ですら、さして。
 声を上げたりしない。
 「誰もがお前みたいにイイ声だせるわけじゃねーんだぜ?だいたい俺が
  可愛らしい声なんか、上げてみろ……嫌だ嫌だ。想像しただけでも萎
  えるってなもんだ」
 甘い睦言を紡ぐ唇は、確かに、あえやかな喘ぎにすり替わったりはなしない。
 想像すらできないけれど。
 「目一杯俺のナニを頬張って、一生懸命扱いてくれる紅葉さんの痴態って奴
  には興奮するんだけどな」
 もう少しわかりやすく、感じてくれればいいのに。
 と、最近は思うようになった。
 抱き合うようになってから長くはないが、濃い時を過ごせば、愛情はなくとも、
そんな風に考えてしまうものだ。
 「……苦しいか?」
 僕の拙い口腔での愛撫では物足りない村雨さんの腰が、もったりと揺れて、
時折僕の喉の奥を突く。
 その度に全身総毛だって、目じりには涙すら浮かぶが、むせ返りそうになる
のだけはどうにか飲み込んで首を振る。
 「ったく、素直じゃねーな」
 僕の後頭部にがっと回った片手が、肉塊をより深く銜え込むようにと、激しい
前後運動を繰り返す。
 「う……ん……ふ……ふ……」
 鼻から息をして、せめて呼吸だけはしようと試みるが、村雨さんの手が自分の
ペースを刻み出せば、ただ翻弄されるだけだ。




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