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 今だって、後ろから抱き締めて強引に向かせての口付けに反応しそうになる自分の体を、
何とか制御しようと虚勢を張る紅葉の姿にこそ、魅入られている。
 微かに残る血の芳香が、俺の獣じみた性分に火をつけて寄越すのだ。
 「いじめてって、貴方、言う事にかいて、全く。僕はMじゃないと思いますけど」
 耳朶の一番やわらかな部分を噛まれて、身体を震わせる紅葉をきつく抱く。
 苦しくなったのだろう、唇から、かは、と小さな吐息が零れ落ちる。
 「俺だってサドじゃねーよ?」
 前に手を回して、紅葉の股間に手を当てた。
 案の定勃起してやがる。
 「でも、お前これで、勃起するじゃんかよ。Mじゃねーっつっても、説得力ねーやな」
 「疲れマラって奴でしょう?」
 「……言ったな?」

 手早くジッパーを外して、ナニを外へ出してやる。
 「ちょ!」
 大慌てで、隠そうとしたって無駄。
 こんな時、俺を欲しがってるお前の体が満足に抵抗できないって、誰よりよく知ってるのは俺
だぜ?
 いい感じに天井を向いてる紅葉の肉塊の先端を、親指の腹でゆっくりとなぞってやる。
 ねばつく粘液がつーっと糸を引く様子まで見なきゃならんのだ。
 プライドの高い紅葉にゃあ、恥かしい通り越して拷問かもしれんな?
 「祇孔っつ!」
 手の甲に、本気の爪が立てられたが、その程度で俺の動きは止められない。
 突き飛ばすくらいしてくんなきゃさ。
 「やあ」
 根元を握り込んで、今度は掌で先端を撫ぜつけてやる。
 無骨とまではいかなくとも、マメだらけの堅い皮膚が、敏感な個所に触れているのだ。
 感じやすい紅葉にはたまらないだろう。
 腰がびくびくと震えてだんだんと前かがみになってゆく。
 「どーする?こんなトコでだしちまうのか、お前さん」
 耳朶を舌先でなぞりながら、前を覗き込む。
 掌にべたつく先走りの量は増えて、肉塊は限界にふるふると震えていた。
 見やすいように掌をどければ、ちょうど、新しい蜜がとろりと溢れ出るところだった。
 ああ、今すぐにぶちこみてーや。
 勃起したてめぇのナニを、紅葉の秘所にズボンの上から押し付ければ、欲しがって揺れる淫
蕩さ。
 「紅葉?」
 「……ここじゃ、イや、です!」
 正気に返ったように首が幾度も振られる。
 珠のような汗が、目の端で散った。
 「じゃ。どこにするんだ」
 この程度で興奮してるんじゃあ、ベッドの中に入ったら、どれほどのもんなのか、想像しただ
けで、咽が鳴るってもんさ。
 「ベッドで、して、下さい」
 「良い子にしてりゃあな」

 「……!」
 何かを言いかけた唇を噛んで、きっと俺を睨みつけてくる。
 にやにやと笑ってやれば、今時、歯がぶつかるような不器用な口付けが届いた。
 全く、俺らがどんなに犯りまくってきたと思ってんだ、ああん?とか問い詰めたくなる、覚束な
い口付けなのだが、それにソソラレるってんだから、我ながらベタ惚れだ。
 「はいはい。よく出来ましたっと」
 「ちょ!祇孔っつ!」
 「んー?お前さん、また痩せたりしてねぇ?」
 軽々とって訳にはいかないが、ふらつかない程度のしっかりさで、紅葉の身体を担ぎ上げる。
 お姫様だっことかも、俺は好きなんだけどな。
 今やったら、蹴り飛ばされそうな気がするんで、こっちにしてみた。
 「……痩せてませんよ!貴方、僕が食事の残すの苦手だって知ってて、山盛りにするじゃな
  いです!」
 仕事をした後は格段に落ちる食欲を、少しでも底上げしようと、あの手この手を使ったが、俺
が手料理なんざを披露して、せっせと食べさせるのが一番良いと気が付かされた。
 「そっか。何となしに軽くなった気がするんだが。ま。実際剥いてみりゃ、わかんだろ」
 「……剥いて……って。貴方……本当に……」
 俺の肩の上で、はあ、と深い溜息をつく、尻をぺちんと叩く。
 「何だ?不満か」
 「いいええ。貴方様に不満だなってこれっぽっちもございませんですよ?何時も満足させて
  いただいておりますからねぇ」
 ……何時だって犯りすぎの自覚はある。
 今まで、こんなにも自分から欲しいと思った相手はいなかったので、歯止めが利かないの
も承知。
 でもって、女と違って、なまじ体力がついてくるから、限界ぎりぎりまで追い込んじまう。
 本人そうとは、気が付かぬままに人殺しの興奮を隠しもせずに、奔放に振舞ってくるのだ、
我慢しろって方が無茶だろ?
 「今日も、いい仕事するぜ?」
 「……仕事、なんです?」
 「言葉遊びだ。んな、顔すんな。愛の営みと言った所で、照れるのはお前だろう」
 案の定頬が赤い。
 「ほらよ。お望みのベッドだ」
 スプリングのきいたベッドへ、ぽんと投げれば、ふこふこの羽根布団に、紅葉の身体が沈む。
 「ああ、蒲団干したんです?いい香り」
 上着を脱ぎ捨てながら多い被さりつつ、髪の毛を掻き上げて、すんと匂いを嗅げば、血の
芳香と太陽の暖かな香り。
 この、ギャップがたまらない。
 「待って……自分で…脱ぎますから」
 キスをしながら、慣れ手順でワイシャツをはだけようとすれば、紅葉の手が咎めてくる。
 「何だよ。せっかく、好きなのに。脱がすの」
 ゆっくりじっくり脱がしながら、視姦されて、更に高ぶってゆく様を見るのもまた、SEXの醍
醐味だろうが。
 「……だって、貴方……じらすじゃないですか……今日は、早く……欲しいから」
 
 俺の唇の舌を形に沿って丁寧に嘗め上げて、紅葉は自分のワイシャツのボタンを外しだす。
 飽きさせないように俺の目を媚態を孕んだ眼差しで見詰めつつ、無論手元なんか見ずに器
用に手早くボタンを外し終えた。
 自分でも焦れて仕方ないだろうに、ゆっくりとワイシャツを肌蹴る様は誘っているようにしか
見えず、思わず生唾を飲み込む淫蕩さだ。
 露になった肌に鼻を寄せれば、血と汗の香りがした。
 背筋を興奮以外の何物でもない怖気が走って苦笑する形のまま、紅葉の胸に口付けた。
 とくとくとくと穏やかに伝わってくる鼓動が心地良い。
 そのまま、ずっと血に塗れる生活から逃れようとしない愛しい存在が、確かに生きているのだ
という感触をずっと味わっていたいのだが、そうもいくまい。
 俺はズボンから引きずり出した紅葉の肉塊を、掌に包み込むようにして握り締めた。




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