「……気がつかなくて、悪かったな」
自分でもどうかと思うが、この手の色事にはとんと疎い。
知識としては世間一般の物は持ちえるのだが、こうやって実戦レベルでの話になると、どうも
苦手だ。
不得手でも、奴がどうにかしてくれるさ、とか甘い事を考えているので、得意になる事はこの
先、一生ないんじゃないかなーとも思う。
「いいえ。この手の色事に無駄に気が利いたら、ロイさんじゃないですって」
「凄い言われようだな」
「もう。勘違いしない下さい。そーゆー貴女が、好きなんですよ」
ぬちゅっと音がして腰が引かれる。
突き上げられる瞬間の激しい衝撃には痺れのような快楽が走るが、抜き出される時は、胸が
締め付けられるような寂寥感というか切なさに煽られる。
「……本当。真面目に、真剣に。そんな可愛らしい顔しないで下さいって。私。これでも、無茶
しないように我慢してるんですけどねぇ」
「どんな、顔だ?」
「『抜いちゃ駄目。寂しいから』って顔です」
まんまだ!
「抜きはしませんから。安心して下さい?ロイさんが望むなら、私ずうっと繋がっていてもいい
ですよ?」
こいつなら遣りかねない。
冗談めかして、その癖。
真摯な目の色で告げられて、諾、と答えてしまいそうなくらい、私はこいつに溺れているが、
頷く事は永遠にこないだろう。
抱き合う至福も好きだが、抱き合わない至福も味わいたい私は、しみじみ贅沢者だ。
「……コレ、以外にもしたいことは、たくさんあるから駄目だ」
「言ってみただけですよ。大総統に、なるんですもんね?」
「付き合ってくれるんだろう?」
「無論。貴女が望む形でどこまででもね。まぁ、個人的な意見が通るのならば、秘書辺りが
いいです。ずっと近くに居れるし」
「……仕事中。部下の前で無駄に懐かない自信があるなら、頷かないでもない」
今は違う部署で働いている。
部下達で十分満ち足りている。
けれど、側にこいつがいれば、もっと良いのになぁと思う時はあった。
特に腹が立っている時とか。
こいつは私を宥める天才だから。
「うーん。難しいですねぇ。今の部署にいたって懐きまくりなのに、側に居たら触れずにはい
られないじゃないですか」
「……私もな?お前が…私の尺度で考えればかなり好きな部類に入ると思うが…そんなに
四六時中触れていたいとは思わないぞ?」
「ああ、それはぁ、嘘」
「嘘じゃああんっつ」
止まっていたアレが不意にイイところを突いてきたので、声が喉の奥から溢れて出た。
今の今まで、私はこいつの大きいアレが中に入っているのを失念していたのだ。
ほだされるにも程がある。
慣らされるのは時々、しみじみと恐ろしい。
「確かにSEXみたく濃いスキンシップはさて置くとして。抱っことこね。ほっぺちゅうとか。その
程度のスキンシップだったら貴方の方が好きだと思いますよ?」
「そ、そうか?」
「だって貴方。私が研究に没頭すると覗きに来るでしょう?」
「それは!」
無茶をしでかさないか心配なだけで。
後後始末をきっちりするとはいえ、読書中に爆発音が響き渡るのは、驚く、から。
「お前が、むちゃ…する、から」
ちゅくちゅくと小刻みに中で動かれて、思考は拡散し、声も掠れる。
激しくない前後運動は、熟れた体の熱を煽るだけだ。
「それもあるでしょうけど……単純に、私が近くに居ないと寂しいんでしょうに」
あんまりにも嬉しそうに囁かれてしまえば、否定するのも可哀想な気がして。
私の心の中、奴がずっと抱き締めてくれればいいとか、思う瞬間もあるのは事実なので。
不肖不精頷いてみた。
途端。
こちらが恥ずかしくなるような、蕩けた顔を見せられた。
「……この、嬉しさは。こっちで表現しましょうね?」
「けっつ!」
結構、だ。
という言葉は、勿論最後まで言わせて貰えなかった。
「やぁ。J駄目、それは。それだけはいやあっつ」
まだ小さく刻む浅い交接を繰り返しながら、指の腹で無防備に剥き出しとなっていたクリトリ
スを擦り上げてきたのだ。
「お願い、よしてぇっつ」
これだと感じ過ぎてしまう。
太股が跳ね上がるのを、自分で止められない。
クリトリスに身体中の熱が集ったようになって、子宮の奥深くからとろとろと蜜が溢れ出てし
まう。
「大丈夫。ロイさんなら上手に感じられますよ」
うっとりと、私の顔を見詰めながら、指とアレを動かすペースを少しづつ上げてゆく。
「ああ、やあっつ。いくっつ。だめっつ。いっちゃう!」
やわらかく円を描いていたクリトリスの上にある指が、不意にかりりっと爪を立ててきた。
いっぱいいっぱいの所に、更なる刺激。
「いくっつ!」
堪えるまでもない。
私は聞くに堪えぬ嬌声を上げて、絶頂を迎えた。
「ああ……ロイさん……中、すごーい……うねりながら、絞ってきますよ…私も、もう出した
いです」
「出して、いいぞ?中、に」
月経の最中は、子供も出来にくい。
卵子がまだ体内に残っていて、子宮外受精を果たす可能性もないは、ないが。
こいつが、そんな事をするはずもないと。
全く盲目的に信じていた。
例えば、私が子供が欲しいと一言、告げたならば。
その後の行為で間違いなく、孕ますような。
何と言うか、こう。
私の希望を叶える事に、至高の歓びを見出す奴だから。
ましてや、自分の望みと重なったら尚のコト。
言い方は、理不尽この上ないが、下手は打たないだろうと。
「いいんです?」
「今更、だ」
「子供、欲しいの?」
「……何時かな。時が来たら」