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 今日は、駄目。
 絶対に、駄目なのだ。
 「そおっとも、しなくていい」
 びくっと背中まで快楽の筋が走る。
 乳房を揉みしだかれて、眩暈がしそうな愉悦に襲われた。
 「普段から、感度良いのに。月経の最中は、ロイさん。更に数倍?って感じで感度上がります
  モンね」
 じわっと体内から溢れ出たのは、月経の血液か、快楽の愛液か。
 「月経の、最中はSEXに向かないから……寄せって!んんうっつ」
 首を捻じ曲げられてのキス。
 絡み付いてくる舌先は何時だって熱心だが、私をその気にさせようとするキスは半端なく、淫
らだった。

 「…キン、ぶりっつ」
 乱れる私の隙を伺う絶妙なタイミングで、何時の間にかスカートから引きずり出されていた、
ワイシャツの隙間をぬうようにして、掌が素肌にあてられる。
 ひんやりと冷たい感触。
 キンブリーは決して、体温が低い方ではない。
 むしろ平熱は女性である私の方が、ずっとずっと低いのだ。
 つまりは、それだけ。
 奴の体温を冷たいと感じる程、私の身体が熱くなっていると。
 感じていると、そういう事だ。
 臍の辺りを、もったりとした動きで摩られる。
 幸いな事に、私は月経痛が酷い方ではない。
 人の話を聴くにつけ、随分軽い方なのだろう。
 せいぜい、少々気分が落ち込む程度。
 痛みは下腹部にどんよりとした何やらが、わだかまっている感じ。
 ただキンブリーの掌で特に下腹部を摩られれば、その温もりは心地良かった。
 「貴方が気持ち良いというのならば、こうしてお腹摩ってるだけでも満足ですよ?でも、もっと
 もっと違う物が欲しいですよねぇ」
 にっこりと首を傾げられてしまう。
 こいつの、こんな表情を知るのは、恐らく私だけだろうし。
 ましてや、それを可愛いなんて思ってしまうのは、これもまた私だけだろう。
 「私が、欲しいですよね。ロイさん」
 ね?
 と重ねて問われて、いいや、と言えない自分がいる。
 絆される、とは。
 まさしくこんな状況だ。
 「私は……何時だって、お前が欲しいよ…でもっつ!」
 「でもっつ。今日は駄目だっつ」
 「どおして」
 「だって……嫌だろう」
 出血を続ける穴に挿入するのは、とさすがにストレートな言い回しは出来ずに、躊躇えば。
 「私、貴方とならどんなSEXでも楽しめる自信がありますよ」
 言えない言葉を見通しているのだろう、奴は、嬉しそうに続ける。
 「月経の最中は、貴方の初めてを貰い続けている気分になれて、萌えますし」
 「……馬鹿がっつ!」
 どこか馬鹿かって。
 本気言っているのが、何よりも一番。
 「出来うる限り優しく、丁寧にしたつもりだったんですけど。貴方最初は酷く痛がっていたし、
 出血も多かったですからね」
 年を重ねた後の初めては、それこそ十代の頃にするのに比べ痛みが酷いとか、出血がな
かなか止まらない恐れもあるなんて、随分怖い話を聞かされた。
 特に初めての相手が自分より若くて、アレが大きいと最悪ですよ?
 と、苦笑して教えてくれたのはホークアイ中尉。
 彼女の初めては、実はハボック少尉で。
 繋がった次の日、浮かれモード炸裂の少尉と悲痛な面持ちで過ごしていた中尉を思い出
す。
 キンブリーは、私と同じ年だしSEXにも手馴れていたから大丈夫だと、思ったのは、間違っ
ていなかったけど。
 アレが、大きかったのは誤算だった。
 「まー狭いのは今もおんなじですけどね。こんなにやりまくってるのに、どうして、頑ななま
  んまなのか。男としては嬉しいですけど。ロイさんが辛いのは頂けないです」
 普通は、これだけ、その…すると。
 もう少し交接がスムーズになるらしいのだが。
 や。
 交接自体は結構スムーズだと思う。
 ただ入り口を潜るあの瞬間に、眉根を顰める痛みを覚える事が多い。
 「ノックス医師辺りに診て貰った方が良い気もしないんですけど。ロイさんの、ここ。誰にも
  見せたくないんですよね」
 
 「……先生には、診てやろうかと言われてはいる」
 「えっつ!そうなんですか。じゃあ、駄目ですね」
 「なんだ、それは」
 「全く油断もすきもない。ロイさん、ノックス医師には色々と無防備だからなぁ、もう」
 この調子では、実はノックス先生にキンブリーとの性交渉のあれこれを相談しているなんて、
知られた日には大変だ。
 先生は生粋の医者なので知識は広く詳しい。
 また多種多様のケースも知っている。
 更には徹底した守秘義務。
 医師の中には口の軽い者も多いが、先生はその対極。
 たぶん殺されたって患者の秘密を漏らす人ではない。
 その辺りも安心して相談できる理由の一つなのだが。
 「病気とか、何時もと違う症状とか出てる訳じゃありませんよね?」
 「何時もと…違う、症状、か?」
 「もしかして出てるんですかっつ」
 や、何もそう大げさに考えなくてもいいんだ。
 違う症状が出ているが、それは先生に診てもらう類の病ではない。
 「する、度に。気持ち良くなるくらいだ」
 何を馬鹿なとか、惚気ているのか?と言われても、自分の想像から遥か越えてしまうのだから
仕方ない。
 分不相応な愉悦は、人を不安にもさせるのだ。
 「……も……驚かせないで下さいよ。心を鬼にして先生に診察をお願いするところでしたよ」
 「そこで、どうして心を鬼にする?」
 「え?鬼にでもならなきゃ、ロイさんの可愛い所を他の人間に見せるなんて、できっこない
 じゃないですか。ま、診察には勿論私もご一緒させていただきますが」
 「先生を信用できないのか?」
 「してなきゃ、貴方を診せやしませんて」
 つまりは、信用とは別の所で純粋に心配なだけの話。
 先生曰く『べたに甘いな。べったべただ!』
 「……お前って奴は……」

                          




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