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 「だって」
 「だって?」
 「違う場所まで、変になりますよ」
 「なりなさい」
 喘ぎを遠慮なく漏らして欲しいと思うにつけ、そんなに簡単にはいかないのだろうとも思う。
 「んっつ、くんっつ」
 唇を噛んで必死に声を殺す風情にもまた、そそられる。
 恥かしいというよりは、その方が感じるのだろうと、知れた。
 ちゅうちゅうと吸い立てれば、髪の毛に潜り込んでいる彼女の指先が、きつく爪を立てきた。
 多少の痛さはあるが、それも彼女が感じている証と考えるのならば、愉悦にも摩り替わる。
 「ふっつ。んっつ」
 はぁ、と吐息と共に零れた舌先が、ちろりと唇を舐めるなまめかしさに、私は乳首から口を離
して、彼女の唇にキスをした。
 「ん、かっつか?」
 首を傾げながらも舌を差し入れれば、貪欲に答えてくれるのが嬉しい。
 私の唾液で濡れに濡れて、起立した乳首は愛らしい真紅。
 切り揃えられた爪の先で、そっと弾けば、撓る激しさで彼女の背中が弧を描く。
 「やっつ!ちいっつ」
 「気持ち、良いのかね」
 「ちょっと、痛い気もしますけど……先端を、爪の先で弾かれると、ああん!」
 言葉どおりになぞってやれば、眦には涙が浮かび始めた。
 「胸の中が、じわってして……あの、あそこが」
 「どこだね」
 熱に浮かされた表情が更に赤みを増す。
 肌が白いので、尚一層鮮やかだ。
 「ここ、が」
 私の手首を恭しい仕草で取って、己の秘所へと触れさせる。
 後程じっくりと見るつもりなので、今は彼女の表情を堪能した。
 さすがに恥ずかしいのか、興奮しているのか、閉じた瞼がぴくぴくと痙攣していた。

 「この、恥ずかしい場所が?」
 「触ってくださればわかりますよ」
 「……もう少し、先延ばしにしたいんだけどねぇ」
 と言いながらも、そっと入り口周辺をなぞる。
 「ふぁ!」
 中途半端なくしゃみにも近い、悲鳴。
 どれほど感じやすいのだろうか、手の甲の上、ぴゅんと愛液が飛んできた。
 「……そんなに、気持ちいいとは、嬉しいねぇ。ほら、見えるかな」
 きらきらと輝く愛液で濡れた手の甲を、わざわざ目の前まで持ってゆく。
 「…見えません……どうして…そんなに、意地悪ばかりするんです?」
 「それが、望みだったんじゃないのかい」
 「そう、なんですけれども」
 こんなにもある種、生温い陵辱は想像し得なかっただろうね?
 君は私の、君への執着を甘く見過ぎなのだ。
 「ふふ……まぁ。後少し、我慢したまえよ。この二種類の弾力が堪らないんだ」
 「やあんっつ」
 掌から零れんばかりの乳房を揉みしだきながら、乳首の先端に歯を掠める。
 「やっつ。かっか、駄目っつ。それっつ」
 「濡れるからかな」
 「そう、あそこが、濡れちゃうんです……もしかしたら、イっちゃうかもしれない!」
 切羽詰った声。
 初めてで、乳首への愛撫だけでいくなんて、どんな淫乱設定なのか。
 そんなにも男に都合の良い身体だとでも言うつもりなのか。
 まぁ、マレに見る感度の良さで。
 本人も気持ちが追いついてこなくて、出てしまうセリフなのだろうが。
 「この、ね。手に吸い付いてくるもちもち感と、乳首のこりこり感が美味しいんだよ。
  どちらも弾力性に富んでいるのは間違いないのに、全く違うんだ」
 自分でも驚くほどに飽きない。
 今度は乳首の根元にも歯をたてる。
 完全に起立したと思った乳首が更に良い歯ごたえを返してくるのは、嬉しい誤算。
 「やあっつ。もぉ、やぁっつ。ち、くび……いぢらないでっつ」
 必死に首を振るロイの額に張り付いた髪の毛を掻き上げて、唇を寄せる。
 涙を吸い上げて後、唇を塞ぎながら両方の乳首を爪の先だけで、ぴんぴんと弾いた。
 感じすぎる悲鳴は、全て私の口の中に消える。
 小さな痙攣を繰り返す身体を優しく抱えながら、私は執拗に乳首を弄り続けた。
 「や、もぉ…やっつ」
 キスを強引に振りほどかれて、ロイ君の腕が乳房を覆い隠す。
 自分の腕が触れる感触にすら、反応して、ん、と鼻が鳴った。
 「ろぉい?私は、まだしたいよ」
 「もう、駄目です…だってっつ、だってっつ!」
 「ん?」
 「……閣下の、呼気だけで…感じてしまうんです」
 上目遣いの訴える瞳は、酷く嗜虐心をそそられた。
 「感じておいで、と言っている」
 我ながら、こんな時に卑怯だな、と思いながら眼帯を外した。
 ウロボロスの刻印が浮き上がった瞳に囚われたロイ君は、恐怖にではなく魅了され、わなわな
と唇を震わせた。
 「さぁ。腕を解いて私におっぱいを弄らせなさい」
 おずおずと腕が外されて、突き出すようにして胸を見せてくる。
 紅潮しきった肌は鮮やかで、乳輪は更に。
 乳首はもっと鮮やかな紅色で染め上げられていた。
 「こう、するといいのかな」
 乳房をこね回して、乳首にふうっと息を吹きかける。
 「んっつ。ああ……イ、い……」
 太股をもじもじさせながら、指先がシーツを必死で掻いた。
 ふーふーと息を吹きかける度に、可愛らしい蠢きで目を楽しませてくれウ乳首を凝視してい
れば、ロイ君が私の顎に額を擦り付けてきた。
 「…ん?どうしたかね」
 「…も、我慢できない…デス…ここ…こっちも、弄って」
 膝をたてて大きく太股を広げたと思ったら、覚束無い指先が濡れそぼつ秘所を広げた。
 「どーしても、いじって…くれないなら、自分でするの…許してくださ、い」
 ロイ君の目線は己の秘所に釘付けだ。
 もう、どうしようもなく焦れて仕方ないのだろう。
 「ロイ君のマスターベーションも見たいけど、やっぱり一番は私の指で可愛がりたいよ」
 顎に懐いている額を、ひょいっと上げさせて、表情を伺う。
 欲情に濡れ切った眼差しは、私が夢の中でしか見れなかったそれ。
 「こっちと同じに、いっぱい。弄ってあげようね?」
 きゅうと容赦なく乳首を捻り上げて、ロイ君の唇から甲高い悲鳴を引きずり出す。
 「さぁ。よく見せてご覧」
 「……はい…」
 陵辱に都合の良い体勢を確実に取ってゆくロイ君が、不意に目を合わせてきた。
 「あの……閣下。お願いがあるんです」

 「何だね」
 例えば、これからロイ君の口から出るオネダリが『今すぐに死んで下さい』でも聞いてし
まいそうな気がして我ながら怖い所。
 「閣下のを、触らせて下さい」
 おや、そうきたか。
 「ふむ……」 
 「駄目、ですか?」
 「良いけれど……触って楽しい物でもないと思うがねぇ」
 私のアレは、私の意思通りに機能しているものだ。
 
     


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