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 じわりと胸の奥から込み上げる笑みは、歪んでいたかもしれない。
 ロイに見られなくて良かった。
 私は、くちゅるくちゅりと濡れた音を立てる中を、丹念に捏ね繰り回した。
 確かそんなに奥でもなかったはずだ。
 Gスポットと呼ばれる場所は。
 通常、数センチの腹部側……まるで、学生が読む教科書か辞書に出てくる説明のような
言葉が浮んで、苦笑い。
 「んっつ!んっつ!」
 反応は悪くないが、そこにあたればもっと顕著な反応をするはずだ。
 最も、Gスポットと呼ばれる快楽の坩堝を持たない女性は多い。
 むしろレアで、持っている女性は三割程度だとも、聞く。
 彼女が持っていない可能性も、普通は高いのだが。
 私は、彼女がいやらしくもイトオシイ場所を持っていると、信じて疑わなかった。
 「ひうっつ!」
 突然、彼女の全身に痙攣が走った。
 「ああ、あったね?」
 しかし、どこだろうかと、もう一度。
 正確な場所を掴む為に、範囲を縮めて探る。
 「あああっつ!だめぇっつ」
 教科書通りの位置。
 入り口から三センチ強の所に、気をつけねばわからない、微かなざらつきを帯びた箇所が
あった。
 「良かったね、ロイ。とても可愛がって上げられ易い所にあるよ?」
 「やあっつ、らめっつ」
 指の腹で押して、撫ぜて。
 爪の先で引っかいては、撫ぜた。
 「ここは、気持ち良いかね?」
 「やっつ!やあっつ!」
 全身の硬直と紅潮は酷くなる一方。
 これだけ感じてくれるなら、初めてでも、あまり。
 痛みを与えなくてもすむだろうか?
 ひくついて、触って欲しいと自己主張の激しいクリトリスも今は、あえて放置。
 今度は、この可愛らしいざらつく箇所だけでイかせてみたい。
 指の腹で擦るのと、爪で弄くるのとどちらがいいのだろう。
 爪だとやはり傷がつくかもしれない。
 こちらの方が微妙に、声の上がりが高い気もするけれど。
 「ひうっつ、ひ、ううっつ」
 泣きそうな声だけれど、泣いている訳ではない。
 目の端に浮んでいる涙は、先ほどから幾筋も零れていたが、痛くて、辛くて泣いているの
でもないはず。
 ヨくて。
 鳴いているのだ。
 指の腹で突付くという、指の出し入れをしばらく続ける事にして、数分?
 もしかしたら数十秒なのかもしれない。
 「あ!あ!イくっつ」
 一層切羽詰った声と共に。
 「おお!」
 ぷく、ぱん!と、膨れた気泡が破裂する。
 淫らな粘液で出来た気泡が壊れたのだ。
 潮吹き豪華版と言った感じだろうか。
 「ほら、ね。やっぱりいけた」
 クリトリスでの絶頂よりも、中のうねりが激しい気がする。
 切断してみる事が出来たら、さぞ、眼福だろう。

 「やぁ。キングっつ。お願いですっつ、もう、入れてっつ。キングのぺにすを入れて、下さ
 いっつ!」
 恥らいも何もあったもんじゃない、露骨なオネダリも、可愛くてしょうがない自分がいる。
 「そんなに、私が欲しいかね?」
 「欲しいですっつ!キングのがいいですっつ!キングのじゃなきゃあ、いやですっつ!」
 身体が言わせるのか。
 ヒューズ君への、復讐心が言わせるのか。
 その、どちらでもいいかと吐息をつく、必死の懇願に。
 私の限界の糸は呆気なく切れた。
 「では、入れよう。ちゃんと、見ていなさいね?」
 「はい」
 紅い、まるで彼のイシュヴァールの民を思い起こさせる、真っ赤な瞳がじっと私のペニス
を見詰める。
 それだけで、どくんと硬直が増した気がする。
 その様を見てロイが小さく、喉を鳴らす。
 怯えには聞こえず、歓びを期待するそれに、私はようやっと彼女の入り口に硬直を押し
当てた。
 それはもう硬直という表現が、これ以上に相応しい状況はないだろうと思う硬さだった。
 先端がくにゅりと、やわらかな花びらに包まれる。
 それだけでも、童貞のように放出してしまいそうだった。
 気持ち良い。
 心地ち良い。
 堪らなく。
 どうしようもなく。
 入り口で、焦らそうかと思ったが、必死の眼差しに負けてぐっと腰に力を入れた。
 ぷち、ぷち、と肉の切れる音が、聞こえた気がした。
 まだ一番厳しい部分が入りきらない内に、彼女は首筋を仰け反らせる。
 悲鳴は、必死に堪えているのだろう。
 喉の奥で、小さく、ひ、ひぅっと怯える声がした。
 私は一旦、ペニスを完全に抜き取った。
 「やあっつ!キングっつ!」
 首筋に伸びてきた指は、必死の爪を立ててきた。
 今まで体験した事のない類の痛みに、怯えている筈なのに。
 それほど、温もりの喪失が怖いのか。
 人ではない、この私の。
 温もりとは言えない、僅かなそれでも。
 彼女には、今。
 必要なのだろうか。
 太股を見れば、目にも鮮やかな鮮血が二筋ほど伝っていた。
 私は無言のまま太股を抱え上げ、下から上へと付いた血筋を綺麗に舐め取る。
 鉄臭いけれど、舌先に残るのは感銘を受けるほどの甘さ。
 裂けてしまった花びらを、丁寧に舐める。
 やぁ、やぁ、という否定の声は、吐息に紛れる微かなモノ。
 この愛撫は、そこまで嫌悪するものでもないようだ。
 怯えて丸まってしまった足の先を撫ぜながら、血の芳香が漂う箇所を舐め続けた。
 ひくひくと震えるクリトリスに触れば、痛みは薄れるだろうかとも考えたが、それは二度目
の挿入時に怯えられた時に取っておこうと、下らないことを冷静に考える。




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