「そうじゃなくて!」
「はいはい。聞いてますから。んなに大きな声出さんで下さい」
瞼の上にキスされて、興奮の息を幾度か逃がす。
「……羞恥プレイは、ほどほどにしてくれ」
「放置プレイも、言葉攻めもイイのにね?」
「ジャクっつ!」
「んもぅ。んじゃ、尿道プレイ?」
「……今日は嫌だ。普通に。普通が良いっつ!」
想像して、先ほど嫌だといったばかりなのに、腰が震える愉悦を思い出して、必死に
抵抗する。
尿道プレイに限定すれば、たまになら、いい?とか思う自分がいるのだ。
「そうなんです?もっと、あれこれ、それそれしたいんスけど」
じゃあ、何をしようかなぁ?と首を傾げるので、これ以上何かとんでもないことをされては
大変!と、私は奴のアレをぎゅうと握り締めた。
「いいから!四の五の言わずに、早くこれを入れろ」
恥ずかしいコトをしている自覚はないじゃない。
でも、マニアなプレイに走られるくらいなら、奥まで突き入れられて揺さ振られて、羞恥
に悶えながら溺れる方がずっとマシ。
……ずっと、イイ。
「うわぉ。積極的」
唇の端を噛まれて、にっこりと笑まれるのは、何度目だろう。
獲物を前にした時の肉食獣の目をされる。
これから私は、こいつに思う様貪りつくされるんだろうな、と認識を促されざる得ない
強烈な瞳だ。
「ほいじゃあ、中。ほぐしますよ」
「ほぐさなくても、イイっつ!ろーしょん、使って。すぐ、入れろ」
「……了解しました。んじゃローションプレイで」
「だから、ジャクリーン!そうじゃないっつ!ひあ!」
何時の間にか手の届く所に置かれているローション。
ジャンもそうだが、この手のグッズの準備は何故か完璧なのだ。
拙くなりつつある記憶を辿っても、つい先ほどまで、用意されていなかったと思うの
だけれど。
いきなり、ローションをたっぷりとアレの上にぶちまけられて、腰が引けた。
「ロイさん、ろーしょんぷれいは、大好きだもんね」
たっぷりとローションをまぶした奴の大きな掌が、玉から竿まで、丁寧に撫ぜて回る。
今触れている箇所は、どこも濡らす必要が無いのに、ローションの感触が広がる度に、
熱が上がってゆく。
「このまま、出しますか?」
「や、だ」
「俺と一緒に?」
「ん」
「……嬉しいです」
ご褒美のキスは意外にも鼻先に。
くすぐったくって、照れくさくて。
何時も鼻先にキスをされると、肩を竦めてしまう。
「……ああ、もぅ。アンタはなんだって、そう。かーいーんでしょうね?」
絶対お前の目はおかしい!と突っ込みを入れたかったのだが、奴の中指が、蕾の入り口
を擽ったので口を噤む。
あられもない声という奴が、喉の奥から突いて出そうになったのだ。
「声、堪えないで。聞かせて」
「だが……」
「うんと聞かせて、素直に強請ってくれたら、すぐにでも入れたげますよ」
男なら誰しもが羨む硬さと大きさを誇るハボックのナニに、掌で触れさせられた。
どくっつどくっつどくっつ、と、激しく脈打っているのがわかる。
我知らず、喉を鳴らして生唾を飲み込んだ。
「ね?俺もアンタが欲しくて限界なんです。だからさ。素直に欲しがってよ」
上目遣いに強請ってくる。
ジャンよりこいつは、何倍もストレートなオネダリが上手い。
更には、こちらが躊躇っていると強硬手段に出るのも厭わない。
今日は何時にも増して羞恥プレイが多かった。
私は身体よりも頭が爛れきっている。
「じゃあ、声。殺さないから」
「うん」
「……お前が、好きなだけ。可愛がって」
「っつ!」
恥ずかしさMAXのセリフは、頭が煮えていないと言えない。
や、煮えていてもそれはそれは恥ずかしいが、その恥ずかしさが愉悦なのだと、あっさり
飲み込んでしまえる。
「幾らでも。ジャクリーン」
「……きょーあく。ほんと、に、アンタ。ジャンをめろらせるだけじゃ、足りないんです?」
「私は貪欲だぞ」
ジャンとジャクリーン以外に、股開くつもりはないけどな。
「知ってましたけど。俺はアンタに溺れきる訳にはいかんのですけどねぇ」
はぁと深い溜息。
「別にいいだろう?誰が見てるでもなし」
「ええ、まぁ。そーなんだすけどね」
ばりばりと髪の毛を掻くジャクリーンだったが、何やら考え込んでいたのを吹っ切った
ようだ。
「とにかく。据え膳は美味しく頂きます」
「そうしてくれ。ふううっつ!」
奴の手首までがローションで濡らされている。
どこもかしこもぬらぬらだったが、いきなり指を三本も入れられて、衝撃に仰け反った。
「すっげ!」
「ばか。いきなり、すぎだ」
「おおーこれじゃあ、フィストとかできそう。やってもいいっス?」
「謹んで、遠慮申し上げる」
「えぇ。しーたーいー」
「……いい加減。お前を喰いたいんだ。大人しく食わせろ」
体中が次の刺激に飢えている。
フィストファックでも快楽は得られるだろうが、安堵と一体感は無理だ。
こいつが挿入するペニスだけが、それを満たす。
「……アンタ、本当に男前ですよね」
「惚れ直したか」
「毎日、新たな気分で惚れ直しますよ。ジャンと一緒にね」
「そうか」
「ほいじゃー騎乗位でもしときますか」
よっくらしょ、と、何とも間抜けな掛け声と共に奴がごろんとベッドの上を転がって、仰向けに
なった。
「はい、どーぞ。まな板の上の鯉です。好きに料理してください」
「や。むしろ、まな板お前で、鯉私だろうが」