「ジャクッツ」
「……はい?」
「……っと!」
「『もっと、キス』?『もっと、違うトコロを、して?』」
キスも好きだが先にも進みたい。
黙りこんだ私に、ジャクリーンは戦闘時では見せない笑顔を見せた。
「我侭っスね。じゃあ、キスしながら違う所も可愛がりましょう」
何故か私ばかりが濡れている唇の上をねろりと舌で撫ぜられて、はい、と一指し指が一本、
口の上に押し当てられた。
「はい。どーぞ。好きなだけちゅうしてやって下さい」
……私がしたいのはお互いの唇を使ってのキスなのだが?
文句を言おうとすれば、奴の指がきゅうと唇の上強く押し付けられる。
「貴方の好きにして、いいんですから」
だいたいがジャクリーンの好きにされてしまうSEXに置いて、少しでも私が好き勝って
できる場面は嬉しいのだが。
指舐めじゃあ、な……。
うらめしそうに上目遣いで見れば、実に腹黒そうに笑ったジャクリーンは、すっと腰を
落とした。
いわゆる乳首攻めをまだ、諦めていなかったらしい。
既に完全に勃起している私の性感帯は、奴の唇がそっと触れてきただけで、過剰な
快楽を伝えて寄越した。
首が仰のいてしまい、嫌々と振るのだが、奴の指も唇もしつこくて。
指は唇をふよふよあやし、唇に至っては乳首をきゅっと挟み上げた。
「ん、うっつ!」
私に任せるといいながら、結局奴の指先に支配されてしまっている私の唇からは、
満足な喘ぎも零せない。
せめて、少しでも反抗しようと何とも子供っぽい思考に走って後。
私は、ようやっと奴の人差し指を堪能し始めた。
まず先端に、触れるだけのキス。
ここで、爪とこんにちは!なんてことは無い。
私と付き合いだしてから、奴の爪は常に綺麗に切り揃えられて、表面を撫ぜる程度の
やすりもかけられている。
自分に関してはずぼらな部類に入る奴が、ここまでするのも無論私の為。
私の身体を自在に這い回る指先が、己の意志と反する場所で傷つけないように、との
配慮だ。
最前戦で一週間以上ジャクリーンであり続けた時も、奴は私の身体を抱え込んで周囲を
警戒しながらも爪を整えて見せた。
甘やかされているな、と思う。
「あ、やあっつ」
ちょうど第一関節までを口の中に迎え入れた時。
奴の唇が乳首を挟み込んだまま、首をくいっと後ろに引っ張った。
乳首が引き連れる感覚は、私の腰に重く甘い熱を灯して行く。
離してしまった指先に、ほらほら!っというように、唇を叩かれて、再び吸い付けば、
口の中。
何とも言えない微細な塩辛さが口の中に広がった。
よく好きな相手の身体はどこもかしこも甘いというが、私はそうは感じない。
どこか何時でもしょっぱい。
気になる物でもなく、むしろ好みの塩加減だなんていえば、ジャクリーン、ジャン揃って
暴走しそうなので言わないが。
常に私に興奮している汗と、やはり私の為にしか流さない血の味が全身に染みこんで
いるのかと思うと、堪らなくそそられてしまうのだ。
指を根元まで銜え込んで、ちゅうっと吸い上げる。
よく赤ちゃんがする、指吸い、という仕草があるが、あれよりももっと露骨で別物の。
愛撫でしかない所作。
「また、ふやけそうですよね。俺の指。ジャン君に怒られそ」
怒られるというよりは、寂しがられる、が正しい。
ジャクリーンに、そんなに甘やかして貰って!
俺だってしたいのにっつ!
と、なる訳だ。
ジャンは私をあれだけ甘やかしても、まだ甘やかしたり無いらしい。
今ですら、二人の相手以外考えられないほどほだされていると言うのに。
「んっつ」
爪に歯を立てながら、指先を舌でちろちろ。
私の胸に顎を預けたジャクリーンが、その様子をじっと見ている。
実に、蕩けそうな顔で。
「凄い顔してるぞ、お前」
「ロイさんには、負けますよ」
「そんなコトないぞ!私は、そんな、にやけた顔はしてない」
「ああ、ね?にやけた面は、してないでしょうね」
くすりと、口の端を上げるジャクリーンに、私の背中はぞくぞくした物を感じ取る。
ろくでもないことを思いつくのは、ジャン以上なのだ。
「でも」
「や!それ、やあっつ!」
奴の指先がつつつーと、腰のラインを辿り始めた。
「嘘。好きでしょう。あ、違いますね……大好きでしょう?」
耳朶を噛まれて、肩を震わせながらも、指の行方から目が離せない。
腰骨の半ば辺り、自分で触れたとて、どうということもない場所。
私を構いたがる二人の指だけが知る。
その箇所を触れられると、私はそれだけで達してしまうのだ。
最初はくすぐったいだけだったはずなのに。
何時の間にか、極端に感じるようになって。
数度、漏らしてしまったコトすらある。
「お願い、許して!」
何より、そんなどうでも良いような場所を弄られて射精してしまう、自分が恥ずかしくて、
情けなくて。
私の声は、半泣きになる。
「イヤです。アンタのお漏らしも、しばらく見てないし」
「変態っつ!」
「変態上等。好きな人の全部を見たいと思ったら、普段絶対人には見せない行為は、特に
見たいでしょうが」
違いますか?
と、ヤバイ場所数ミリの箇所を弄られて、腰を揺らした。
違う、と断言できない自分が居る。
奴等の放尿シーンを見たいとは思わないが。
人には見せない。
私だけに見せる表情があるのは、嬉しいから。
「だからね?見せて。ロイさんが、お漏らししちゃうトコ」
ついに、ぎゅっ、と。
腰骨の付近。
駄目な場所を強く押された。