瞬時迷って後。
　「ん」
　自分のトラウマを少しでも軽くする為に、薄める為に、大きく頷いた。
　奴が、それは素早くジーンズと下着を取り去ったので。
　「ひゃっつ」
　そおっと触れた途端。
　アレがびくんと大きく動いたので、思わず手を離してしまった。
　「どーしました？」
　まるで汚い物にでも触れたみたいな反応をしてしまい、怒られると肩を竦めたが、ハボックの
反応は淡々としていた。
　「急に、びくってなるから」
　「ああ。大佐の手がやわらかくってね？もっと触ってって、ナニが勝手にオネダリしちまったん
　です。我侭な息子でゴメンネサイね？」
　「や！私こそ、すまない。今度、こそっつ」
　怒られなかったのに、ほっとしながら、またしてもそろそろと指を伸ばす。
　再びアレがぴくっと揺れたが、耐性があるので今回は大丈夫だ。
　そのまま、掌で握り込んだ。
　「あったかぁい」
　「俺は、気持ち良いです
　「この熱は、心地良いな」
　「じゃあ少し、擦ってみますか」
　「ん。頑張って、みる」
　自分がされるのに抵抗はあるが、ハボックの体だからだろう。
　性器への愛撫を施すというのに、自分でも飽きれるほど抵抗がない。
　両掌で、アレを包み込むようにして擦った。
　脈が何本も立っていて、それが指先にあたると、するりと動くのが楽しくて、脈を追うように
して擦った。
　「アンタ、何です。それ」
　「よく、ないのか」
　「逆っスよ。初めてなのに。何で男のツボ知ってるんです？」
　「や！別にその。血管がな、触ると逃げて。ぷくっとした感触が掌に面白いから、それを追い
　　駆けてるだけ、なんだ」
　「へぇ？それでこんなに気持ちいいんかぁ。相手が大佐だからですかね」
　うーんと不思議がるハボックに、これではいけないと彼の要望を聞く事にした。
　「お前は、どうするのが気持ち良いんだ」
　「そうですね。男としては定番中の定番なんですが……ここ、わかります」
　ハボックが自分のアレを摘んで、裏側を指差す。
　「何か……線があるな」
　「そ、裏にある筋で。まんま裏筋ってんですけど、そこを擦られるとやっぱり気持ち良いです
　　ね」
　言われて、指の腹で上から下までなぞってみる。
　目に見えて、ハボックの身体がぞくぞくぞくっと震えた。
　ストレートな反応が可愛くて、親指を筋の上にあてた状態で、大きくて硬いアレを握り込む。
　そのまま力を入れて、上下に擦ってみた。
　「お、わ！ちょっと、大佐。それタンマっつ！」
　４，５回行ったり来たりしただけなのに、もう十分に大きなナニが、更に大きく硬く、そして熱く
なった。
　「凄い、熱いぞ。はぼ」
　「や。大佐。く、んっつ。待って、ほんと。マジに出るって」
　「出してみろ。見てみたい」
　「アンタ、何その顔。ううー何か。すっごく面白い本見つけた時の顔にそっくり！」
　俺は、本じゃないのにー！と、性行為の最中に囁かれる睦言とは程遠い言葉を喚きながら、
ハボックは射精に至った。
　イく瞬間に、触れていた幹が一弾と大きくどくんどくんと脈打って、鈴口が、ぷくんと開いた。
　手を動かさずに続けていれば、開いた口から、とろっと透明の液体が零れたと思ったら、
白い液体がびゅくっと大層な勢いで吹き出てくる。
　射精を生で見るのは初めてだった。

　「……おお！」
　「……楽しそうで、何よりデスヨ」
　ぜひぜひと珍しく荒い呼気を紡ぐハボックが、可愛くて可愛くて。
　キスをしてみた。
　今度は鼻から抜ける息が荒くなる。
　何時も、恐怖に追い詰められていてハボックを観察する余裕なぞ、微塵もなかったが、
こうした性行為は実にハボックを可愛く見せる。
　普段、仕事でドジをした時とか、中尉に怒られている時とかの、しょんぼりした顔とはまた違う。
　こいつの、色に爛れた間抜けた顔。
　そんな、顔が堪らずに、可愛くて。
　どうしようもなく愛しい。
　もしかしたら、ハボックも。
　例えば、色欲に溺れる私を見ても。
　可愛いとか、愛しいとか。
　思ってくれるのだろうか？
　「はぼ？」
　「あい」
　「私が、ね」
　「ええ」
　「うんと、いやらしいコトになって。醜態を晒しても、可愛いとか思う？」
　「……どしたんです？」
　今までとはむしろ間逆の思考に、驚いたらしい。
　覗き込む瞳は、疑問でいっぱいだ。
　「ん。や。今、射精した時のお前がすっごく可愛くて」
　「かわいい？」
　「どうしようもなく、愛しいと思ったから……もしかしたら、お前も。そんな風に思ってくれるの
　　かな、ってええええっつ」
　突然、ぎゅうと抱き上げられた。
　ベッドの上で、腕の力だけで。
　小さい子に、高い高いをするみたいに持ち上げる。
　ハボックの腕力の凄まじさは知っていたつもりだが、これは驚きだ。
　「ろいろいろいろい！　ロイさんっつ」
　物凄い剣幕で名前を連呼されて。
　「はいっつ！」
　反射的に返事をする。
　「すっげぇ。嬉しいっつ！」
　「え？」
　「アンタが俺を見て。そこへ辿り着いてくれたのが、どうしようもなく、嬉しいっつ！」
　そう、言うと腕を下ろして。
　ぎゅううっと私の身体を抱き締める。
　幼子が、クマのぬいぐるみを抱き締める必死さに、とてもよく似ていた。