ホムンクルスに取っては、諸手を上げたい所だろう。
自分達がどう足掻いても届かない、人間に限りなく近い不老不死の姿がそこにあったんだ
から。
ロイは、リザに会えると必ず、全裸にして体中くまなく傷がないかを確かめる。
リザちゃんも、同じ。
ロイに会うことを許された日には、やはり丁寧に服を脱がして、隅々まで、身体が損なわれて
いないかと確認する。
その、習慣は。
意味のない習慣は、ただ俺の空しさと切なさを煽った。
二人の身体に傷は残らない。
どれほど壊れても、人間なら即死の怪我でも。
数分もすれば完全な復活を遂げるからだ。
けれど、怪我させなければ、取りあえずは酷い目にあっていないのだと。
やはり壊れた思考で、感じ事を考える二人が。
とても、悲しかった。
そして、羨ましかった。
「明日には、リザちゃんも帰ってくるって。久しぶりにゆっくりすればいい」
「はい」
恐怖政治の元。
完全な一枚岩となったアメストリスに未だ牙を向く、ドグラマの一個師団を沈黙させる為に、
派遣されたのは三人。
リザちゃんと、ラストと、グラトニー。
ラストはリザちゃんには憐れみを、グラトニーには母親のような慈愛を注ぎ。
グラトニーはリザちゃんを、絶対食べてはいけない存在だと認識し、ラストには、完全服従の
姿勢を取っている。
リザちゃんは、二人を尊敬は出来ないけれど、仕事が出来る上官と受け止めているらしい。
この三人が同じ作戦に借り出される事は多かった。
リザちゃんは、遠方からの援護。
ラストは、接近戦。
グラトニーは、後始末。
中々巧妙に役割分担がされている。
完全沈黙の作戦は一度たりとも失敗に終わった試しはなかった。
無論未だ光線を続けるドグラマの、それも師団を相手にしたのだ。
ラストに至っては、三日経っても癒えない傷を抱えているという。
リザちゃんは、被弾して貫通した右目の視力が、回復しきっていないらしい。
グラトニーなどは、食欲が失せるほど、腹が一杯のようだ。
師団を三人の人間もどきに全滅されたと、ドグラマ側は衝撃を隠せないだろうが、ホムンク
ルス側としても人間にまだそれだけの戦闘力があると知って、色々と作戦を練り直しているら
しい。
ま。
俺には関係ない事だがな。
「でも、今は俺達の相手だ。イイ子に喘げよ」
「……酷く、しないなら」
「酷くはしねーって、もう。ただちょっと」
エンヴィーを見下ろすロイの縋る色を含んだ瞳を歯牙にもかけず。
「しつこく、するだけさぁ」
自分の欲求を押し付ける所は、さすがにホムンクスルだ。
「……しつこいのも、嫌なんだけどね……」
言っても無駄だと思っているのだろう、小さく吐息をついたロイは諦めた風に、エンヴィーの
頭の上に掌を、そっと置く。
「前のアンタは素直じゃなかったけど。今のアンタは本当に素直だよなぁ。最初はツマンナイ
とか思ってたけど。アンタが従順なのは良いやね」
珍しく邪気なく微笑む。
俺はこれが、ホムンクルスがする最高の賛辞だと知っていた。
「もちっと、上手く弄ってやれよ、マース」
「……お兄様の方こそ。頑張ってくださいね。やっぱり胸よりも直接下を弄る方が感じるもの
ですからね」
「だ、な。本当、人間の身体って面白いよなな。こんな小さい所が下手したら一番感じるって
言うんだから」
未だ何の反応も示してはいないクリトリスを皮の上から、ぺろっと舐め上げる。
ひく、とロイの唇の端が引き攣って。
「くすぐったいよ、えんヴぃー?」
実際こそばゆそうに、腰を捻る。
「くすぐったいの、苦手だモンな、ロイは。でもちょっとだけ我慢だ。すぐに気持ち良くなって
おつゆ、いっぱい出ちまうようにすっからな」
太ももに、キス。
元々人を陵辱するのは得意だったと思うが、こんな風な陵辱は、ロイが手の内に落ちてから
覚えたんじゃないだろうか。
最初は、俺や閣下の愛技を見て学んでいるようだったが、最近ではめっきりロイの反応を
伺いつつ、良い所を探すようになった。
ロイに取っては、リザちゃん以外の誰から何をされてもきっと同じなんだとは思うが。
少なくとも、ホムンクルスの個々のメンツがそれぞれ、固体なりの個性を持ってロイに溺れて
いっている気もする。
無論、俺も含めて。
「ん?うう?」
身体の奥から湧き上がってくるのだろう快楽を、疑問に感じている風情だ。
嫌ではないにしろ、積極的に快楽に溺れるまでには、まだいきつけない。
そんな状況。
以前は、すぐさま躍起になって攻撃的な色を見せたエンヴィーも、今は慣れたものだ。
まず、皮を被ったままのロイのクリトリスを丹念に舐め上げる。
時折反射で跳ねるロイの太ももを宥める他は、それだけ。
舌先で突付いてみたり、中央のざらざらした場所を擦り付けてみたり、ちゅうっと吸い上げ
たりを飽きる事無く繰り返す。
「あ、ん」
散々に慣らされた身体だ。
快楽には弱い。
声に艶が混じるまで、さして時間は掛からなかった。
「ロイ。ここ、気持ち良くなってきたんかよ」
「ん?」
「気持ち良いかって、聞いてる」
尋ねる合間にも、舌の動きは実に活発だ。
じゅっと吸い上げて、仰け反った喉に指を這わせた俺も、黙って見ているのを止めて、乳房
への愛撫を続行する。