前のページへメニューに戻る




 先刻よりも、張り付く感じが強い。
 「う、んっつ。気持ち、イイ」
 「よしよし。んじゃ、捲ってやるよ」
 「ひうあっつ」
 歯を使って皮を剥き上げられた途端綺麗な爪先がくるっと丸まるのが視界の端に映った。
 「よいしょっと」

 掛け声つきで上手に剥き上げたそこを、熱心に舐め上げる様は、少し、犬猫にも似ていた。
 「んっつ、んっつ」
 「ろぉい。声殺しちゃだめだろう?」
 「だって、変な声、だよ」
 「俺らにはいい声だよ。なぁ。マース」
 「……ああ」
 ぎゅうっぎゅうっと乳房を揉み上げる。
 乳輪の下に潜むしこりまでをも、やわらかくしようと。
 「ほら、マースもいっぱい聞かせてって」
 「まぁす、も」
 「俺はお前のイイ声なら、何時でも幾らでも聞きたいよ」
 首を捻じ曲げて俺の表情を伺おうとするので、目を覗き込んで告げる。
 「……まぁす?」
 「何だ」
 「綺麗な、翠だね」
 俺は大きく、息を吸い込んだ。
 それはとても、懐かしい表現だったからだ。
 「広い。ひろーい。草原の色だねぇ」
 目の端にキスが届く。
 ロイは、そう。
 俺の瞳の色がとても好きだった。
 「まぁすの、目大好き」
 「目、だけか」
 「んん?皆好きだよ。マースの事は全部好き」
 どれ程に望んだ言葉だったのだろう。
 何が切欠でもいい。
 ロイが俺を認識して。
 大好きだと言ってくれるのならば、それで。
 「……ロイ。マースにだけサービスすんなよ。俺は?」
 「エンヴィーも好きだよ。いっぱい好き」
 長い髪の毛を拾って、その先端に恭しく唇をつける仕草が気に入ったようだ。
 満足気に頷くエンヴィーは、またロイの股間に顔を埋めて、クリトリスを弄るのに余念がない。
 「その、翠色の、目で」
 「うん?」
 「私を……見ていてね」
 「言われるまでもなく。ロイを。ロイだけをずっと見ているよ」
 「…嬉しい」
 壊れていても、花綻ぶように笑う。
 や、壊れているからこその、微笑なのかもしれない。
 以前、こういった類の笑顔は見たことなかったから。
 
 俺はここに来て初めて。
 ロイが、壊れても良かったと、酷い事を思う。
 
 乳房に置いてあった手を顎にかけて、唇を吸い上げれば、一歩遅れた動きではあるが、必死
に俺の下についてこようとする。
 明確な意思が見えた。

 「んっつ、ああっつ。エン……駄目っつ、指で……しないでっつ」
 俺とロイが急激に心を寄せあえたのに気が付いたのか、エンヴーの指先がロイの肉粒を
擦りたてる。
 「いいじゃん、ロイ。我慢しないで、イっちまいな」
 「…でもっつ……ああんっつ」
 「見て、て。やるから」
 「……ふああっつ。エン、ヴィー……まぁーすっつ。ああっつ、イっちゃうっつ」
 絶頂の震えを抱き締めて、口付けて堪能する。
 余韻に浸りながらも、薄目の端。
 俺の姿を捉える健気さが、堪らない。

 「……エンヴィー兄様」
 「……ナンだよ。気持ちりィ」
 ロイの可愛い場所を舐め上げながらも、口調は明瞭だ。
 さすがにホムンクルス。
 もしかしたらテレパシーか何かで会話をしているんじゃないかとすら、思う。
 「入れるの、俺に譲っていただけませんかね」
 「あーね。せっかく繋がったんだしなぁ。もしかして錯覚かもしれんぞ」
 「だからこそ、ですよ。ロイが正気に返って、俺をまた見なくなっても。これから先ロイだけを
  見続けていけるように」
 元からそのつもりだった。
 と、言うよりはそれしか道がなかったから。
 でも、ロイが俺を見てくれるなら。
 俺は、何でもしてやれるのだ。
 昔と違い、俺には様々あった枷がなくなっている。
 例えばロイが、こいつらホムンクルスを殺して、リザちゃんと三人で永遠を暮らしたいと願え
ば、叶えられるだろう。
 あの、お父様ですら手順を踏まないと俺達を殺せないのだから。
 「ほんと健気だよね。まぁ、生前のロイちゃんはお前にだけ健気だったから。それもありかん
  な」
 「で、兄様?」
 「んーいいぜ。俺も鬼じゃねーし。ロイをいかせたら、消えてやるよ」
 「ありがとうございます」
 「……代わりに、今度は俺一人でロイを構わせろよ」
 「考慮します」
 「即答じゃねーとこも、嫌いじゃねーぜ。何だかんだいってもお前さんが一番ロイに狂ってる
  からなぁ」
 くすくすと喉で笑ったエンヴィーが、ロイのクリトリスをちゅうと吸い上げる。
 小さいながらも、きっといい感じに硬くなって、吸い応えがある状態になっているに決まって
るんだ。
 ああ、俺も早く舐め捲くりてぇなぁ。
 「やんっつ。だメッツ。もぉ。駄目いっちゃ、あああんっつ」
 ロイの背中が綺麗に反り返った。
 エンヴィーの顔にはぴしゃっと蜜が飛び、俺ががっしりと掴んでいる胸はぷるぷると絶頂の
余韻にいやらしく、悶えた。
 「まーす。まぁすっつ。お願いっつ。いれ、てぇっつ」
 イった後の喪失感が堪らないのだろう。
 目の端には涙を浮かべての必死の懇願に、ごくっと喉を鳴らしたのはエンヴィーも俺も同
じ。
 それでも俺は、じっとエンヴィーを見詰めると言うよりは、睨みつける。
 「はいはい。邪魔者は退散しますよ。全く俺ともあろうものが、弟には……甘いよなぁ」
 「甘いのは、ロイに、の間違いでしょう」
 「はははは。違いないな」
 くしゃっと邪気なく爽やかなくらいに笑ったエンビーの姿が、すうっと消え入った。
 探っても気配は感じられない。
 天邪鬼だから、言った通りにしてくれるかどうか心配だったのだが、本当に消えてくれた
ようで、ほっとする。
 「マース。まぁす?」
 「ああ、ごめんな。今、入れてやる」
 スタンダードな正常位に身体を入れ替えて、自分に都合良く動き易い形にとセットした。
 これなら、ロイの気が済むまで、愛して、やれる。
 ひくひくとまるで、俺を誘い込むようにして蠢いている入り口に先端を押し付けて、一気に
押し入った。
 これもホムンクルスの特性なのか、ロイの中は誰がどんなSEXを、どれほどしても、処女
の慎みを忘れなかった。
 先端を入れ込むまで、絶妙なひっつかかりと、完全に奥まで銜え込ませるまでの必死の
締め付けは腰骨が震えるようだ。
 「ああ……入って、る」
 「気持ちイイ?」
 「ん。気持ちイイ。マースの硬くておおきくて、熱い……」
 ほうっと満足げな吐息は、キスの序でに唇の上に零れ落ちた。
 「動いても、いいか」
 「初めは、ゆっくりで。段々激しくして欲しいな?」
 「はいはい。ロイさんのお望みのままに」
 生前と同じ風に。
 俺達が親友の枠を出なかったあの頃と同じ風に微笑まれて、深くにも目頭が熱くなった。
 一旦奥まで孕ませてしまえば、肉襞が淫らに絡み付いてくる中を、ゆったりと擦り上げる。
 鼻にかかった喘ぎが、甘えたな響きで愛らしい。
 「ロイ」
 瞼に口付けて、頬に唇をあてて、額に唇を押し付けて、唇にそっと触れて、顔を覗き込む。
 「マース」
 何か、このまま抱き殺したい満足感だった。
 ロイが蕩けそうな顔で、俺を見詰めたまま微笑んでくれたその日には。

 もしかしたら、この先。
 ロイが、俺を大切に思い続けてくれるのだとしたら。
 生前のように、くだらない話をして。
 馬鹿みたいに二人。
 延々と酒を飲み交わすなんて、事もできるかもしれない。
 この身体を覚えた今、手放すのは難しいけれど。

 何時か。
 身体を貪らなくても、隣に座れるだけで暖かな気持ちになれる、あの私服の感覚を思い出
せればいいと、思う。




                                                      END

   


 *ふー終わった。これからロイにゃんをいかせまくったマースが満足して 眠りについた後、
  ロイさんがトンでもない悪な事を画策するのですが……。
  機会があったら挑戦してみたいと思います。

  



                                         前のページへメニューに戻る
                                             
                                             ホームに戻る