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 「お前っつ、何をやってるんだ?」
 「んー?いくのに時間かかってロイちゃんが、かあいそっかなーと思うからさぁ。ちっとでも扱
  いていきやすくしてんの」
 にやにやと笑うヒューズの目は、それが本心ではないと如実に物語っている。
 「嘘をつけっつ」
 「どーして?どーして嘘だってわかるんだ。んー?」
 耳朶をぬろりと舐められて、頭の中にまで吐き出された熱い吐息が侵食してゆく。
 「目が、嘘ついてるっつ」
 「目?」
 「そーだ。目だ。お前っつ。嘘、っつく時、目の色が濃くなるんだ」
 キラキラと輝いて尚、深みを帯びてゆく爽やかな翠色。
 嘘を付かれているとわかっても、見入ってしまう鮮やかな、私の大好きな色彩。
 「へぇ?そうだったんだ。自分じゃ。わっかんねーもんなぁ。どれどれ」
 ヒューズは私の目をじいっと覗き込んでくる。
 この男、この状況で私の目に映っている自分の目の色を見ようとしているのだ。
 そんなコト、できるわけがないのに。
 「んー?わっかんねーなぁ。わかるのはロイちゃんの呼吸がむっさ荒いコトぐらい」
 「荒くも、なるだろうがっつ!馬鹿っつ」
 硬く大きくなるのもいい加減、限界に達したヒューズの肉塊は私の入り口だけをこねくり回す。
 入り口がヒューズを欲しがって貪欲に蠢くのが、何とも居た堪れない。
 「すんげーひくひくしてる、ロイのあそこ。先端をちゅうちゅう吸ってくるぜ。ああ、たまんねー」
 「も、いい加減に、しろっつ」
 「怒らないでさぁ。酔いのせいにして、おねだりして見せろよ。可愛くさぁ。したっけ。奥まで入
  れてやっからさ」
 んーと。
 その目で覗き込むのは、反則だ。
 私がお前の、目に弱いの、知ってる癖に。
 「も……まーぁすの、欲しい」
 「欲しい?」
 「ロイの、ここに。お口に、入れてぇ」
 指先で広げればそれだけで、ヒューズの先端が少しだけ進入してくる。
 「あ!いいっつ。もっとっつ。まーす。もっとして。奥まで、入れて?」
 「……お前、今自分がどんなに凶悪な面してっか、わっかんねぇんだろうなぁ」
 何とも場違いなしみじみとした声音。
 「一人で、素面に戻るなっつ。早く私と…私に…溺れてしまえぇ」
 「…その殺し文句は、効くなぁ」
 くすくすと笑いながら、やっとヒューズが自らの意思で挿入を開始した。 
 「あっつ!ああ、まあすっつ。とちゅーで、止めるなっつ」
 「っていうけどさ。ここ先端でちょちょって付くの好きだろ?」
 言いながら、感じる箇所を擦られる。
 肉塊全体で擦られるのも、こうしてピンスポットで突き上げられるのも、好き。
 ヒューズにされるなら、何でも、どんなコトでも好きだ。
 ……好き、だ。
 「ん、ひゅ。好き」
 「好き?ここ、突付くのが、か?」
 「違うっつ。ってる。んうっつ。わかってる、だろ」
 「俺が好きって、ね」
 「そーだ。大、好き。だっつ。ううっつ」
 一番奥。
 例えば自分の指では決して届かない奥底。
 ヒューズしか知らない私のイイ所。
 「あっつ。ひゅっつ、入った」
 「ん。これで全部だ。旨いか」
 「凄く、美味しっつ」
 「俺も、滅茶苦茶旨いよ。あんだけ飲んでるのに、もってかれそうだわ」
 ぶるっと腰を振るわせたヒューズは、私の膝までもを抱え上げ状態を倒して口付けをしてく
る。
 酒が回った身体でなくとも、苦しい体勢だ。
 「んっつ。ひゅ。ひゅう。く、し。くる、しっつ」
 口付けは私の舌を吸い上げて、根元から噛み上げる激しいもので、ただざさえ霧が掛かっ
た思考が、更に愉悦に爛れて行く。
 「あっつ。あーあーっつ。まー。まーすぅ」
 「蕩けそうな、顔しちまって。こんな男殺しめ」
 「違うっつ!私は、オトコ殺し、なんか……ないっつ」
 ゆっくりと私の痙攣しきった中を堪能するように動いていたアレが、だんだんと高みを目指す
スピードへと切り替えられた。
 「私が、殺すのは、お前だけだっつ」
 殺されるのを許すのも、勿論。
 にゅちゅにゅちゅっと恥ずかしい交接音が、頭の中で鳴る。
 しているのは繋がっている場所のはずなのに、音は脳内に直結しているように、うわんわん
と響き渡っていた。

 「駄目だっつ」
 頭の芯から揺さぶられて必死に締め付けながらヒューズのアレを堪能している最中に、
ヒューズの悪戯な指先は反り返ってとろとろと射精もしないのに、蜜を垂れ流す私の肉塊の根
元から先端までを。
 しかも、ど真ん中の筋に沿って滑らせてくる。
 「よせっつ、それ。だめ」
 「嘘。だめ、じゃなくて。イイ、だろ?」
 到達が近い腰の突き上げに加えて、ダイレクトな愛撫は手に余った。
 「ヨ過ぎて…こわいんだっつ」
 射精の瞬間に感じる落ちてゆく感覚が、常時ある感じ。
 頭の中、体が落下し続けるような不思議な感覚が私を満たすのだ。
 それは気持ち良さを永遠に与え続けられるような錯覚に陥って、自分の全てを手離してしま
いそうで、純粋に怖かった。
 「俺と、してるんだぜ?怖がるこたぁねーだろう」
 「馬鹿っつ。お前と、だからだ」
 こんなにも溺れる相手はヒューズしかいないのだ。
 これから先、抱き合い続けられる訳ないとわかっていても止められない原始の衝動にも似
ている欲望が。
 「……マジ…殺されそうだよ…ロイ」
 出る、寸前のヒューズの声が、低く低く体の中に響いて染み渡ってゆく。
 声を聞くだけでイケるなんて物語の中だけだと思っていたけれど。
 今私は物語を地でいく状態になっていた。
 ずっつずっつと肉が擦れ合う音が一段と激しくなって、容赦なく奥底を抉られる。
 慣れた身体は男同士の交接だというのに、痛みなど欠片も有りはしない。
 あるのはただ、人が受け入れられる限度を超えかけた深い愉悦。
 「……も…も、ひゅ…も」
 身体は既に射精に集中している。
 ただ感じている事をヒューズに告げたくて、舌足らずに名を呼べば、熱烈な腰の動きに陰り
を見せないままで瞼に唇が下りてきた。




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