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 あの、やわっやわの唇の感触。
 触るとぷにょんて指先を弾いてくるんだ。
 「そうそう、あの唇で。咥えて欲しいんだよなぁ」
 俺は大きく息を吐き出しながら、スウェットとトランクスを鼻歌交じりに脱ぎ捨てた。
 以前は、物騒な生活を送っていたモンで、靴と上着を脱いだ状態で寝ていたんだ。
 何時でも飛び起きて、逃げ遂せるように。
 でも、大佐を抱いてからは駄目。
 寝る前には必ずシャワーを浴びて、パジャマ代わりのスウェットに着替えるようになった。
 何がそうさせたのかって。
 大佐を覚えてから、自慰の頻度が上がったから。
 赤面モノの理由だが仕方ない。
 いきなり大佐の甘さを与えられたんだから。
 あの男の甘さは麻薬だ。
 チェリーだった俺には刺激的過ぎた。
 お陰で、この様。
 「ん、しょっと」
 記憶をキスまで揺り起こしただけで、もう完全勃起状態だ。
 大佐に言わせれば、若いねー、くすっ。てなもんだろう。
 かぱんと太ももを開いて、大佐がここにいるのだと思い込む。
 太ももに挟まれて、俺のナニを咥えてくれているのだと。
 そんな風に。
 早く出ててしまわないように、根元をきゅっと掴んだ。
 こんな時機械義手の腕は、何時だってシーツ握り締める担当だ。
 生身の手ばかりが活躍する。
 「えーっと」
 大佐はフェラが上手い。
 なんてーか俺の経験が浅くって、スキルがないせいであんまし本番はしたがらない。
 気持ち良いより、痛いってーのが先立ってしまうらしい。
 あん中に突っ込んでがんがん腰を入れるのも大好きなんだけど。
 辛そうな顔はあんまり見たくないので、大佐が咥えようか?って上目遣いで見上げてくる時
には、本番はしないようにしている。
 手扱きで一回、口で一回、ダブルで一回。
 計三回。
 それでも足りなければ、我慢して本番ってーのが普通かな?
 大佐は結構な淫乱さんなので、俺の高ぶる様子を見ていけるし、ナニ入れなくても指で中を
苛める度に漏らしてしまったりもする。
 俺にフェラさせようって気はあんまりないかな?
 まー俺がど下手ってーのもあると思うけどな。
 「んーと」
 目を閉じて大佐の唇の感触を思い起こす。
 根元をきつく絞り込んだ状態で、もう先走りがだらだらの先端にちょんと舌先を押し当ててくる。
 俺が、間抜けた声を上げるのを満足そうに聞いて、先端を舌先でぐりぐりって。
 精液が出てくる穴を広げられるようにして、愛撫される。
 全く、初心者に向かないよなぁってのは、されて何回目かに気が付いた。
 大佐ってば、指先で被ってる皮を引っ張って、小さな穴を広げて、透明の液体がとろとろ零れ
る様を見るのが、どうやら好きみたいだ。
 変態!とか言ってやるんだけど。
 だって君、見られると気持ち良さそうに腰動かすよ?
 なんて反論された日には二の句も継げない。

 目を開けてしまえば、嫌でも大佐の姿が側に無い事を実感してしまうので、何時だってマス
ターベーションの最中は目を閉じっぱなしだ。
 声だって我ながらどうよ!と舌打ちしたくなるレベルでリアル。
 些細なイントネーションまでもを妄想の中で明確に体現できる。
 例え、俺の目が見えなくなってもアルと大佐の声だけは間違いないね!っていう位。
 アルフォンスは弟だし、幼い頃はさておき、人体練成を行ってからは、特にその感情を態度
と声の波でしか量れなくなった事もあって、努めて感情を読み取れるようにしてきたから、出
来ない方がおかしい。
 でも大佐は、そうじゃない。
 会っている時間なんて、アルの何百分の一程度でしかないのだ。
 けれど、実に鮮明に思い出せる。
 まぁ、これが恋愛って奴なんだろうなぁと、ぼんやり。
 大佐に言った日には『私とアル君を比べるなんて、アル君に失礼じゃないかね』と、イマヒト
ツポイントのずれた返答を寄越しそうだ。
 意外に天然ちゃんなのよね。とは、ホークアイ中尉談。
 「……何だか、ずれてきたぞ?」
 アルのことを考えたらいけなかったのか。
 中尉まで思い出してしまった。
 綺麗で厳しくて優しい大佐の副官。
 大佐が特別になる前は、自然な思考の流れで大佐の恋人だと思い込んでいた人。
 あんまりにも大佐が中尉を大切にするもんだから、中尉に直接大佐をどう思っているのか
聞いた事がある。
 ま、子供って立場を盾にして聞き出すのは卑怯かなーと思ったけど。
 直球が好きな中尉なら許してくれるのかな、と甘えた。
 答えは、単純明快。
 『全てよ?大佐は私に取って全て』
 にっこり微笑まれて、さらっと言い放たれた。
 あれは暴走しがちな俺を牽制したんじゃないかなーと、今は思う。
 俺とは違う形で、もしかしたらとてもよく似た感情で大佐が大切なのだろう。
 「中尉が女性で、しみじみ良かったよ」
 もし、男性だったら色々な面において勝てない。
 大佐が俺で良いと言ってくれても、俺は不安を拭いきれないで足掻く。
 それだけの、存在だ。
 「……だから、ずれてるんだってば!」
 今は大佐の側にいる中尉の存在に堪らない嫉妬を覚えている場合じゃなくて。
 大佐の、俺だけが知っていると自負してはいる、蕩けきった風情を…。
 『鋼の?気持ち良いかい』
 ちゅぷんちゅぷんて、わざとらしく大きな音をさせて、大きく口を開けて俺のナニを頬張る大
佐の顔は、なんとも間抜けで愛しくて、とんでもなく淫蕩だ。
 俺を咥えてくれる、上の口も舌の口も小さな方だと思う。
 他を知らないから断定は出来ないけれど。
 自分で認めるのも癪だが、お子様なアレは、発展途上中って感じで、決して大きくはない。
 まぁ、フェラも男にも手馴れた大佐には簡単なんだろうけどさ。
 とにかく、気持ちよくて。
 俺が主導権を握れる日が来るのか不安なくらいだ。
 「……んっつ、そこっつ」
 妄想の中で大佐が口を窄めて、自分の頭を結構激しく動かしてちゅぽちゅぽとナニを出し入
れする。
 「もっと、吸えっつ、て」
 



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