俺は暴れる紅葉の身体を抱えて、寝室へと運ぶ。
自分以外は誰も寝せたことがないベッド。
もてる性質だしSEXも嫌いじゃなかったが、自分のテレトリーにメスの臭いを撒き散らされ
るのが嫌だったから、遊びは全て外で済ませていた。
大半が年上のねーさん達だったので、ホテル代は相手に持たせっぱなし。
懐すら痛まなかったって寸法さ。
それがどうよ?
紅葉と何時かしようとか考えて、整えた大き目のダブルベッド。
シーツも枕カバーもタオルケットだって新品を下ろしておいた。
タオルもバスタオルも、使うかもしれないんで、ベッドの下に仕込んであるし。
あー他の女とする時には必須の、コンドームだけは用意してねーな。
「いやっつ!だっつ……はな、せ。たつ、ま……」
半端なく強い薬なのだ。
処女でも痛みなくよがり狂うほどの。
はっきりいって、紅葉じゃなければここまで耐えられない。
っつーか相手である俺を、拒否できない。
必死に振る首の細さに眩暈を覚えて、その華奢な首が折れてしまうんじゃないかと、馬鹿な
ことを考えて。
「紅葉、抵抗、するな」
俺は紅葉の顎に指を引っ掛けて、黄金色の瞳で以って紅葉を呪縛する。
薬よりも何よりも、本当は効くのだ、俺の声は。
紅葉の体から、更に力が抜ける。
抵抗する、最後の力というか、覇気、が。
くったりと俺の胸に頭を寄せてきたその額に唇を寄せて、紅葉の身体をタオルケットを剥いで
新品のシーツの上に横たわらせる。
はだけられたシャツから、片方だけ見える乳房はほんのりと赤く、その天辺ですっかり起立
した乳首は更に愛らしい紅を保っていた。
俺は唾を飲み込みながら手早く自分が着ていた服を全て脱ぎ捨てた。
三秒速攻の早業だ。
紅葉から逃げる術を奪っておいても、安心できない辺り、自分でも終わっていると思う。
気だるそうに俺の行動を見守っている瞳は虚ろで、少し寂しそうだった。
「絶対よく、してやるから」
お前が俺のモノだって。
もっと自信が持てるようになれば、優しく優しく甘やかしてやる。
SEXは勿論、それ以外でも全て。
「だから、今は。俺の好きなように、させてくれ」
マッチが軽く乗りそうな睫を数度瞬かせて、紅葉はゆっくりと腕を上げる。
俺の首筋に触れてくるので、そのまま首を落とせば、力ない手首から先がもったりと絡んだ。
「私は、君に……逆らうようには、逆らえるようには、できていない」
「ああ」
「だから……好きに、すればいい」
「ごめん、な」
「謝るくらいなら、しないで欲しいね?」
何もかもを諦めた微笑なんて、本当は浮かべさせたくないけれど。
これから俺が紅葉に強いる行為を考えれば仕方ないのだろう……。
協力的ではないにしろ、受け入れてくれる気になっただけでもよしとしないと、な。
「先に謝っておいて。少しでもお前に嫌われないようにしてるんだ。これから無茶するのは、
目に見えているしな」
自分で作っておきながら言うのもナニだが。
どこもかしこもが、好みの女なのだ。
ただでさえ、めろめろに好きな相手なのに。
どこまで自分を節制できるか、自信がない。
「……どんな事をされても、僕は君を心の底からは嫌えないんだから。
言い訳も、いらないよ?」
「それは、それで、寂しいよな」
「度を越して、無体を強いている自覚があるのならば、これ以上は勘弁して欲しいね。今だっ
て十分僕のキャパを越えているのだから」
許しを請う仕草で、紅葉のたわわな胸に顔を埋めている。
心音は、乳首を弄っていた時よりも早い。
これから更に激しさを増してゆく陵辱に、怯えているのだ。
キャパを超えているのなんて、百も承知。
「ここまで、来て。止められない。紅葉も男なら、わかるだろう?」
「わからないね。今の僕は、女だから?」
「紅葉……」
冷え冷えとした眼差しは、俺のやる気を削いでゆくが、ここで止めてしまっては元も子もない。
徹底して、紅葉の身体に愉悦を覚え込ませて、俺に抱かれる至福に浸れるまで溺れさせない
と、紅葉は俺から逃げ出すだろう。
逆らえないからこそ、逃げを打つ紅葉の行動なんて、簡単に想像できた。
「しか、も…強姦…なん、て……」
大きく息を吐けば、紅葉の体がびくんと露骨に跳ね上がった。
薬が回ってきたのだろう。
俺が吐き出す吐息の当たる感触に、感じてしまうのだ。
「ごう、かん、なんて。はん、ざい……なのに」
自ら暗殺を生業とする人間が、何を間抜けた事をと。
紅葉を知らない人間は言うに違いない。
けれど、紅葉ほど、仕事以外の犯罪に潔癖な人間はいないと思う。
常にある罪悪感が、そんな風な気質を作り上げたのだと知っているけれど。
「うん。知ってる。罪は贖うよ。だから、もう。黙って。全部俺に委ねていろよ?」
浅く苦しげな息が紡がれる唇を塞ぐ。
痺れでも起こしているのか、微細な振動を伝えて寄越す紅葉の舌は、適度に生温く柔らか
く、俺の舌に劣情を煽る激しさで馴染んだ。
「んっつ?うんっつ。ふぅっつ」
キスに慣れない風情で、目の端に涙を浮かべる状態に至っては、アレがはちきれそうな
艶っぽさだ。
涙をちゅっと吸い上げて、乳房に掌を乗せる。
「やあっつ!痛いっつ」
……先程弄りすぎたのが利いているのかもしれない。
だったら、もっとダイレクトな快楽を与えた方がいいだろう。
俺は無言で、紅葉のズボンに手をかける。
脱がされる意図を悟ったのか、紅葉の足がばたばたと暴れたが、力の入らない身体では
満足な抵抗なぞ、できるはずもない。
苦もなくズボンを抜き取れば、細いがむっちりとした太ももが現われた。
紛れもない女の太ももの上、男物のトランクスが陣取っているのには、無駄に興奮させ
られる。
脱がせようとして、ふと思いつき。
我ながら、イヤラシイよなぁ、俺。
と溜息をつきながら、トランクスの所謂社会の窓を広げた。
そこから、紅葉の秘所を覗こうって寸法だ。