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 「壬生さんが銜えてたモノよりずうっと、小さくて細くて。申し訳ないんですけど。
  その分、できるだけもたせますから?」
 一方的な奉仕を強制する、暗い愉悦。
 壬生さんの頬にあてた指先を滑らせて、唇にあてる。
 人差し指を下唇にあて、親指の腹で殊更ゆっくりと上唇をなぞる。
 「……紅葉、さん」
 後輩である僕が、苦手を意識しているとはいえ、先輩にあたる壬生さんを『先
輩』ともつけずに。
 例えば、京一先輩や龍麻先輩のように、下の名前で呼ぶ。
 慣れない呼び方に、ちょっとだけ舌がもつれたが、それぐらいは愛嬌というも
のだろう。
 行為そのものよりも、僕が親しげに呼んだ名前に反応したとしか思えない。
 「……ふ、ざけっ!……るなあっ!」
 壬生さんの首が僕の肉塊を避けてかたくなに、振られた。
 僕のそそり立ったそれに、叫んだ瞬間歯があたって、あやうくいきそうになっ
てしまう。
 「……と、危ない。危ない」
 根元をきつく絞り込んで、腰を引いて衝撃に耐えること、数秒。
 「ふざけてなんか、いませんよ?」
 僕は再び、壬生さんの唇に肉塊をおしつけた。
 がんとして口を開けない、壬生さんの態度は『可愛らしいなあ』という苦笑を
誘う。
 「せっかくだから、手伝ってもらえますか?」
 一人で強引に事を進めるには、少しばっかり手に余るので、周りの触手に
声をかければ。
 壬生さんの顔を正面に向けるのに使っていた、僕の両手の代わりを買って
出た触手が、がっちりと固定してくれる。
 「ありがとうございます。後は出来れば……僕のナニに気を取られすぎない
  ように。かまってあげてもらえますか?」
 まだまだ、さやかちゃんを喜ばせなくてはいけないナニだ。
 噛み切られてしまっても困る。
 鎌首を擡げて様子を伺っていた太い触手の一本が、頭を下げた、ような気
がした。
 「あああっつ!」
 動きをとめていた、壬生さんの中に入っていた巨大な触手が、リズミカルな
動きを再開したようだ。
 叫んで大きく開かれた唇は、細い触手達が、広げたままの状態にしてくれる。
 よくよく見れば、か細いくらいの触手達は、懸命に壬生さんの口腔を貪って
いた。
 壬生さんの首の辺りが痙攣を起こしているのをみると、口の中で踊っている
触手からも、愉悦がもたらされているらしい。
 「さあ。入れますよ?」
 大きく目を見開くことでしか、意思を伝えられない壬生さんに、微笑んで見せ
ながら、肉塊を一息に奥まで入れる。
 うねる触手がびっしりと蠢く口腔は、いまだ嘗て無い快楽を引きずり出す暖か
な穴だった。
 やわらかそうな壬生さんの舌が奉仕なんてしてくれなくても。
 どころか、素早い動きで噛み切られるよりも早くいってしまう。
 「ちっ!」
 僕は舌打ちして、肉塊を抜き取った。
 びゅっと、爛れたSEXライフに甘んじている僕にしては、物凄い量の精液が
壬生さんの整った鼻筋から唇。
 顎のラインまでを汚した。
 情けなくも腰を前後に振って、今出せる分は全て壬生さんの顔に吐き出した
というのに、僕の肉塊は、出したとは思えないほどの反り返りを保ったままだ。
 さやかちゃん相手だと、数をこなすのには薬でも使わないときついのに。
 「ああ、さやかちゃんとしてる最中に壬生さんがいればなあ」
 この痴態を見せ付けられたら、いかな僕でも煽られて。
 淫乱なさやかちゃんが気を失うまで、攻めてあげられるだろうに。
 もっとも。
 こんな壬生さんを前にして、さやかちゃんを抱きたいと思うかは甚だ疑問であ
るけれど。
 「さて、と。こんな情けない顔射じゃあ。満足してもらえませんよね」
 僕の出した精液に汚されても、やっぱり綺麗な壬生さんの顔を伺う。
 触手に引き摺りだされる快楽に負けてか怒りは、すっかりなりを潜めた。
 悲しいかな、濁った瞳の中に、僕への感情が見出せない。
 怒りよりも、尚も切ない空虚。
 例え壬生さんに加える好意の数々が、愛情からきたものだとしても。
 壬生さんの瞳が、僕に向かって微笑まれることはない。
 龍麻先輩や、京一先輩に向けられるように無防備な笑顔が花、開くなんて。
 決して、有り得ない。
 「だったら、せめて。嫌われるよりも激しく。憎まれてみたいじゃないですか?」
 好かれたいと思う相手は何人か、いた。
 けれども、憎まれてもいいから、僕を。
 その瞳に映して欲しいと思ったのは、初めてかもしれない。
 「もう一度口で、してもらうのもいいんですけど。やっぱり中の方がいいかなー」
 誰に聞かせるでもなく呟いた言葉に、壬生さんを弄りつづける触手が過敏な
反応をする。
 僕の前にあった壬生さんの顔が、くるりと反対側を向き。 
 今度はすらりと伸びた足と、引き締まった太ももと、筋肉でできているのだろう
に見た目はとてもやわらかそうな尻とがこちら側にきて。
 触手によって解されて、淫らな収縮を繰り返す個所が、僕のナニがある位置
に固定された。
 ゆら、ゆら、と。
 触手が蠢くのに任せて揺れる壬生さんの腰を捕まえる。
 背中のあたりでうねっていた触手を軽く手で払うと、僕の意図を組んだのだろ
う。
 するすると触手の数が減り、首、手首、足首を拘束するだけになった。
 最も、僕の手が届かない壬生さんの無理やり勃起させられてしまう肉塊や、
食べたらおいしそうに見える乳首などに絡んだ触手はそのままだ。
 よく見えるようにと秘所を広げた触手が、しゅるりと1本僕の目の前にきて、何
かを訴えるようにうねうねと蠢く。
 「えーと?僕が入れるここに入ってる触手は抜けてもらえるかな?純粋に壬
  生さんの中を堪能したいから。広げてくれてる触手も他へ移動してくれると
  嬉しいな。その方が無理やりっぽくていいよね」
 言った途端。
 触手は僕の言う通りに移動してくれる。
 僕は、着ている服のボタンだけをはだけて、壬生さんの背中に覆い被さった。
 「壬生さんの可愛らしい、ここに。入れますよ?」
 



                                    
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