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 それとも、あの龍麻先輩が『半身』なのだと、笑いながら特別扱いするからか。
 自分が抱え込んでいた全ての負の感情が一気に暴発してしまったとしか思えない、我ながら
失礼を通り越して酷い仕打ちだ。
 案の定壬生さんは。
 「君に、助けなど、求めないっ!」
 ぬらつく触手にあますところなく弄られながらも、きっぱりと言い切った。
 「いいんですか?本当に。こんな特殊な状況では、誰かが見つけてくれる可能性は低いです
 よ……万が一、見つけられたとしても、その時まで正気を保っていられるんですか?」
 人を見下しきった嘲る物言いに、蒼白かった頬に、かっと朱が上る。
 「そんな化け物に弄られて、何度イったんです?一度や二度じゃあ、ないですよねぇ?」
 太ももの辺りから足首まで、明らかに精液と思われるものが飛び散っていた。
 乾いていない所を見ると、乾く間もなくイかせられているのだ。
 人でないモノがもたらす快楽とは、どんなものなのか、想像もつかない。
 「もしかして、またイくんじゃないです?」
 くすくすとわざとらしく笑ってみせる僕に、壬生さんは必死に唇を噛んで、きつい、身も凍る
冷ややかなまなざしで睨み付けてくる。
 例えばこれが、こんな狂った状況下でなかったら、僕はそのまなざしに恐れ、背筋を震わせ
たことだろう。
 が、今は違う。
 暗い、下卑た感情に違いは無いが僕は、壬生さんの眼差しに愉悦で、怖気がたった。
 「ああっつ!」
 僕が見ているせいかもしれないが、一層激しくなってゆく触手の愛撫に壬生さんの口から
ついに、聞いている方こそが赤面してしまう嬌声が零れ落ちた。
 冗談抜きに下半身直撃で、僕の肉塊はズボンの下で元気になってゆく。
 今だ嘗て聞いたことのない、男をそそる、声音。
 何人か抱いてきた、もう顔も名前も覚えていない女の子達よりも、愛しているはずのさやか
ちゃんよりも。
 比べ物にならないほど、引き摺られて、魅入られる。
 「ん……」
 同じ男として射精を堪える辛さはよくわかる。
 ましてやそれが相手にあわせる為でもなく、自分がより深く感じられる訳でもなく、決して
見られたくない相手の手前、堪えて見せるならば、尚の事。
 何本も、もしかしたら何十本も絡みつく、そう、ちょうどさやかちゃんと仲の良い比良坂さんが
髪の毛を括るのに使う、細い髪ゴムの太さと同じ触手の内、数本が壬生さんの肉塊の先端を
抉じ開ける。
 精液が吐き出される小さな穴からは、透明の液体がじんわりと滲み出ていた。
 思わず生唾を飲み込む僕の目の前で、なだらかな突起が幾つもある触手が、穴の中に
ゆっくりと潜り込んだ。
 「嫌だ!嫌だああああっつ!!」
 こちらも触手に犯されている濡れた唇から、高い、悲鳴があがる。
 そんなプレイがあるのは、知識として知ってはいたが、目の当たりにするのは初めてだ。
 言うまでも無いが、自分が経験したことなどない。
 十数センチは潜っていただろう触手が、今度は入った時より更に時間をかけて出てゆこうと
する。
 「あっ!あっ!あっ!ああっつ」
 突起の数だけ、声が上がった気がする。
 膝を擦って悶える壬生さんを、更に追い詰める触手は、ずっ、ずっと小さな穴で抜き差しを
始めた。
 「だ、イや!嫌だあ、も、やめ…痛っ」
 痛い、と。
 痛みを訴えたのと同時に他の触手達が、愛撫の手を強めるのが目に見えてわかる。
 女の子が感じる所と同じ場所全て、例えば耳の裏、項、乳首に、腹、腰に膝頭、足の指一本
一本までに触手が絡んでは、擦り上げているのだ。
 これでは幾ら壬生さんでも、気が狂う。
 「んあっつ、あんっつ、つううああ」
 丸まった爪先が、限界を訴えてどれぐらいの時間が経ったのか。
 本当は僅かな時間だったのかもしれないが、それこそ目を皿のようにして壬生さんの痴態を
見続けている僕にとっては、数時間にも思える長さだった。
 何時の間にか根元を抑えていた触手が、壬生さんの肉塊を根元から先端にかけて、差し
抜きと同じリズムで扱いていた。
 「駄目、駄目だ……も、駄目……だっ!」
 治療でもなければ触れることの無い性器の内側を、突起の浮かんだ適度に硬く、全体的には
やわらかなもので擦られ続ける快楽がどれほどのものなのか、壬生さんの瞳は涙で濡れてい
る。
 中で思う様蠢いていた触手が、やっと抜き出されるのと同時に。
 「やあああっつ」
 壬生さんはイった。
 膝頭を擦り合わせて、太ももがびくびくと震える。
 飛んだ精液の勢いは良かったが、少量だ。
 余程気持ち良かったのか、目がとろりと溶けている。
 僕の事なんか、すっかり忘れてしまっただろう。
 「気持ち、良かったですか?」
 側に寄って壬生さんの頬に触れる。
 よくよく考えてみれば、僕が壬生さんに触れたのは初めてかもしれない。
 あまり親しくない先輩で、会う場所も限られていればそんなものだ。
 普段の印象から、きっと冷たいだろうと想像していた壬生さんの頬は、なめらかにやわらかく
て、指先でも感じられる熱さを持っていた。
 「……?」
 涙に潤んだ瞳は、やっぱり僕を認識しておらず、どこか空疎で覚束ない。
 「僕が見ていたのを忘れるくらい、気持ちよかったんですね?……全く。そんな瞳をされたら、
  黙って見ているの、失礼だって気分になってくるじゃないですか」
 続けて口から溢れた言葉は自分でも、信じられないものだった。
 壬生さんの様子を伺っている最中だって、ずうっと猛っていたけれど。
 まさか、触手と同じ責めを壬生さんに加えるなんて。
 絶対。
 絶対、想像すらしなかった。
 「誘う、貴方が悪いんですよ」
 これはもう、強姦魔の究極理論。
 苦笑をするしかない、猛り具合の肉塊は、ズボンのジッパーを下ろすのにも梃子摺った。
 特異なSEXにすら慣れ始めた僕が、ここまで興奮するなんて早々あっては困る。
 僕は、さやかちゃんの捌け口でしかない、玩具なのだから。
 



                                    
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