本人の考えも追いつかない反射的な行動は、私にとっては都合良く。
まるでクリトリスを私の口に押し付けるような格好になる。
「ほら、私の口元に自然にくっ付いてくるよ。これじゃあ『嘗めて下さい』と言ってるのと同じだ」
今度は唇だけで、ちゅうっと吸い立てる。
ふるるっと震える感触が唇に心地良かった。
「あ!ああっつ。らぁ、す」
太ももとびくびくと波打たせながら、ロイの腰が曲がって、乳房が頭の上に覆い被さってきた。
「たりな……足りないんです。舌だけ、じゃ」
耳朶を嘗めるようにして、懇願が注ぎ込まれる。
「では、歯も使ってあげるよ?唇だって、な」
クリトリスの表皮をこそげ取るように、力の加減をしながら甘噛みをすれば。
「つ、あ!……それ、だと。ちょっと……痛い、から」
「そうか。ロイは痛いの好きだからねぇ。それじゃあ、お仕置きにならないんだった……失礼?」
懸命に首を振るロイの瞳からは、涙が伝った。
自分の熱を持て余し、思う通りに快楽を貪れない切なさ故の雫は、何時だって私を興奮させた。
「ほら、こうやって痛いトコロをぺろぺろされると、困るんだ」
充血したクリトリスを舌先で、つんつんと突付いては舌の中央部を上手く使って飽きる事無く
嘗め上げる。
時折、キスをするように吸い上げるのも忘れない。
「本当は、私だって優しくしたいんだよ?」
「あ……あ……う……え……うくっ」
泣かせれば鳴かせるほどに、いとおしくなって、益々優しく出来ない。
マスタングが、イイように、しているはずなのに。
行為はエスカレートする一方だ。
「ロイ?」
「ラース。らあ、す……足りない。もぉ足りなくて、我慢できないのぉ」
そろそろと伸びてきたマスタングの真白い指先が、クリトリスの先端に触れる。
「あ!あああっつ。んう」
それだけで、満足し切った甘い声音がバスルームに溢れた。
「おやおや。自分で、してしまうのかね。全く……ちっともお仕置きになりやしない。ほら、駄目
だよ」
手首を取って、背中に縋らせる。
体重がかかってくるが、軽いものだ。
「らーす?も、いかせて、下さい」
マスタングの切り揃えられた爪先が、湿気でぬるつく背中を滑りそうになるのか、時折きつく立
てられた。
「舌と唇だけで、いきなさい。タイミングを見計らって、噛んであげるから」
自己主張も激しい肉の粒を突付き、全体を嘗め、思い切り良く、吸い上げる。
繰り返される愛技の中で、もどかしいながらも、マスタングはその熱を高めてゆく。
「あ!あ!あっつ!らーす。ら、すっつ」
「いけそうかね」
「ん。ちゃうっつ……いっちゃう……ああ、いか、せてぇ……」
花びらから行く筋も伝い落ちる蜜を愛でながら、クリトリスに今までにない強さで、歯を立てた。
「あっつああああうっつ」
私の肩の辺りで激しく太ももを痙攣させながら、いってしまう。
ぴゅぴゅと飛んだ濃厚な蜜は、ちょうど私の唇の上にとろとろと滴った。蜜をぺろりと嘗め取っ
て、深みのある味に満足して後、舌先を膣の入り口に差し入れる。
「入れちゃ、入れちゃ駄目ぇ」
口だけの抵抗など可愛いもので、素直すぎる濡れた入り口はたやすく、私の舌を迎え入れた。
膣内は絶頂の後特有の痙攣を起こしており、ぴくぴくと堪らない蠢動を繰り返した。
この絶頂の瞬間をナニで味わうのが好きなのだが。
まぁ、先は長い。
一度くらい物足りなさげな、マスタングの膣を苛めるのもいいだろう。
「舌が、ぬめぬめって、中で動くのっつ」
案の定、下肢全体を引き攣らせるようにして、びくつかせている。
「気持ち、いいかね」
「……った、ばっかりだから……よくわからない、です……それ、よりも」
目の端をより赤くして伏せると私の首に腕を回して、まるで乳房をおしつるような格好で。
「ぎゅって、抱っこして欲しい、です……」
いく瞬間は、無性に不安にかられるのだという。
マスタングは夢中になればなるほど、親が子にするような穏やかな抱擁を求める傾向にあっ
た。
「可愛くいけたしね。お仕置きも、まぁすんだ。良いだろう。来なさい」
「はい」
大きく頷いたマスタングが、するっと位置をずらし、今までマスタングが座っていた位置に代
わりに腰を落とす。
「さあ」
完全に勃起しているペニスに、すっかり開いた花びらを押し付けるようにして、座り込んでく
る。
腰をぐっと引き寄せると、ぬちゃと蜜がペニスに絡む。
「あんっつ」
思わず甘い声を漏らしたマスタングの舌を絡め取るようにして、口付けながら、ぎゅうっと強
く抱き締めてみる。
「はあ、気持ちイイ……」
挿入の最中より満たされた風情の溜息が耳の奥にまで、届いた。
何となく癪に障らないでもないのだが、たまにはご褒美もいるだろう。
調教躾の基本はどちらも飴と鞭だ。
頬にかかっていた一房の髪の毛を後ろ側へと追いやり、そのまま艶やかな黒髪を撫ぜ上げ
れば、マスタングは心地良さそうに目を伏せた。
何もかもを任せきった、この満たされた表情を、ぜひ鋼の錬金術師に見せてやりたいものだ。
マスタングと違って、完全な犬として扱われている彼は、ただマスタングを喪うのが怖くて従順
を守っている。
錬金術そのものを理解出来なくなってしまったマスタングと違い、彼は今だ国家錬金術師とし
ての、それもトップクラスの術を保持しているのにも関わらず、使えないのだ。
マスタングが彼の恋人であった時間は、短なものだっただろう。
万が一にも、マスタングが恋人としての彼を思い出す事は無いと言うのに。
見捨ててしまえば、少なくとも己は逃げおおせるだろう。
待っている幼馴染や、弟ですら、いると聞いている。
それでも尚、犬で居続けるのはきっと。
彼も私達と同じに、や、それよりも深くマスタングに捕らわれているのだ。
既に、己の知るマスタングは、もうどこにもいないと理解していても。
望みを捨てきれないのだ。
全く、人とは、愚かな生き物だ。
微笑んだのに釣られて、私の肉塊が震えたらしい。
「んっつ」
とマスタングの唇から甘い吐息が零れた。
「さぁ、ロイ。今度は下のお口で私を感じて貰いたいのだがね」