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 「動くな、と言ったよ。ロイ」
 「申し訳、ありません」
 本来謝るべきなのは、怪我をさせた私の方なのに、マスタングが私を責めるなんてありはし
ないのだ。
 私はシャワーのヘッドを掴むと勢いよく湯を出して、マスタングの下肢の泡を洗い流した。
 「あ!やあっつ!」
 水流が強すぎたのだろう。
 マスタングは衝撃に太ももから手を離して、膝を抱え込んだ。
 「ロイ?怪我した所を見ないと。さぁ、もう一度太ももを持って」
 膝頭間から入れていたシャワーを取り出して、湯も止める。

 既に泡は跡形もなく流れていた。
 私を受け入れる、少しだけぬるついた花弁の上。なだらかな膨らみの辺りに一センチほど
の切り傷を見つける。
 薄皮一枚剥いだような傷は、今のマスタングならば、数時間もすれば痕すらなくなる程度
の軽傷だ。
 本人は全く気がついていないだろうが、私の体液を散々受け入れてしまった身体は、既に
人でないモノに変貌しつつあった。
 まだ、私と同様とまではいかないだろうが、それでもきっと人の倍は長くを生きるだろうか。
 できれば、永遠に。
 この身体を貪っていたいものだ。
 すっと一線に走る赤い糸のような傷に舌を這わせる。
 「やっ。やぁ、キング」
 ぴちゅぴちゅという血を嘗め上げる音はバスルームにあからさまに響き渡った。
 「何か。染みる……そう、染みるんですっつ!だから……ああっつ」
 「こうして嘗めれば、早く治るのだよ。消毒は染みるものだと、聡明な君がわからないはず
  はあるまい。さ。我慢だ」
 今度は血を吸い上げるようにして、とても治療行為とはいえない所業に出る。
 舌の上に絶え間なく広がる、血の味は、びっくりするほどに甘い。
 本来なら塩辛いはずなのに。
 マスタングの血だけは、昔からひどく甘かった。
 「だめ。きんぐ……だめ、なんです……」
 太ももがひくひくと怪しく波打ち始めた。
 極々慎ましやかに閉じていた花弁が、ゆっくりと開く様は何時でも私の飢餓感を煽る。
 透明の蜜を零し始めた花弁に唇をつけて、今すぐに啜り上げたい衝動を堪えるのは一苦労
だ。
 「何が、駄目なんだね。ロイ。ん?」


 「お願い、します……らあす」
 オネダリの時は、ラースと私の真実の名前を呼びなさいね?
 真実の名前が、ホムンクルスである事の証なのだと、そんな事実を知るまでもなく。
 ましてや知ろうなどと、頭の片隅ですらも思わず。
 ただ私に教え込まれたままに、呼ばれる名前。
 それだけで、満たされた愉悦が、ぞくりと身の内に走る。
 「嘗めて、下さい」
 「先刻から、嘗めているよ?もっと激しくして欲しいのかね」
 言いながら、わざとらしく大きな音を立てた。
 「違う!ちが、うんです……違うトコ、嘗めて欲しいんです」
 「どこを?ちゃんと、言わないと駄目だよ」
 見上げた片目の視界に、羞恥に頬を真紅に染めたロイが映った。
 私には持てない綺麗な真赤色だ。
 「ここ、嘗めて下さい」
 マスタングの指が花びらの両端をひっぱり、中が良く見えるようにした。
 「お願いします」
 とろっと、滴った愛液は尻の方へと滑りつつ、バスタイルに落ちる。
 「びしょびしょの、おまんこかな?それとも小さいけれど、かちかちに硬くなってしまったクリ
  トリスかな?どちらを嘗めて欲しいのか、きちんと言葉にしなさい?私の気が、長くないの
  は知っているね」
 ふるっと震えたのは、私の言葉に怯えたから。
 最初の内こそ、マスタングの口から悲鳴すらも漏れなくなるような痛みでお仕置きをしたもの
だが、今はただ度を越した快楽を与え続ける事をお仕置きにしている。
 その方が、マスタングには堪えるのだ。
 軍人として長くあったせいか、それとももともとそういった性癖があったのかはわからないが、
マスタングは痛みに強かった。
 人には限界を超えた痛みを感じると、無意識下にそれを痛みとは違うものと認識させる機能
がついている。
 マスタングはたぶん、その機能が優秀なのだろう。
 代わりに、快楽に弱いのだ。
 特に、だらだらと終わりの無い到達を要求されるのは。
 男の言わば射精をすればすんでしまう到達と違って、SEXに慣れた女は際限もなくいける。
 身体が持つ限り、何度でも高みへと駆け上がれるのだ。
 クリトリスでいき、膣でいき、子宮ですらいって。
 更に三箇所同時の到達も、今のマスタングならできる。
 涙をとめどめなく流して、その癖、淫蕩に次を欲しがって腰を振りながら果てるその様は、
私の嗜虐心を甚く満足させてくれた。
 「く、いといす。嘗めて、下さい」
 「こりこりのクリトリスを嘗めて欲しいんだね」
 「はい」
 「クリでいったら、次はどうしたい?」
 望む場所に息を吹きかけてやる。
 皮の捲れていないそこよりも、濡れた場所に刺激は強かったようだ。
 新しい蜜がとろとろと溢れる。
 「今は、考えられません……早く、クリ、トリス……弄って……」
 「弄って、と。きたかね。ロイのおねだりも随分的を得るようになったものだね」
 ひくひくと収縮を繰り返し濡れそぼった穴に、指を差し入れる。
 「あんっつ!駄目!まだ、そこは……だめっつ」
 「こんなに、とろとろにやわらかくなって美味しそうなだというのに、」食べさせて貰えないと
 は、悲しいねぇ」
 「ラース。先に、弄って。そこじゃなくって」
 「どこ、を」
 「クリトリス……指の、腹でたくさん、擦って欲しいデス」
 やっと具体的なおねだりがでてきた。
 幾度しても、恥ずかしさが拭いきれないらしく、マスタングの口からいやらしい言葉を引き出
すのには、なかなかに時間がかかる。
 まぁ、そのプロセスがまた。
 楽しくて仕方ないのだか。

 「ちゃんとに言えたのは褒めて上げるが。ロイはこれが、お仕置きだと、すっかり忘れているね?」
 何ともイイ歯ざわりになってきた、クリトリスに軽く歯を立てる。
 「ひゃっ」
 行き過ぎた刺激に、ロイの背中が激しく仰け反った。
 




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