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状況判断による行動

悠くんは全く言葉を理解していません。
なのに、毎日の生活の中で繰り返し行われる行動は、言葉がけだけで十分通じます。
例えば、外出から帰ってきて、サリーが声をかけます「手を洗ってね。袖をキュッキュッ
と上げて石鹸つけてね。」。悠くんは、そのとおりに、濡れないように袖をあげて石鹸を
つけて手を洗ってくれます。
学校でも、先生が全員に「帰る準備をしなさい」と指示を出すと、悠くんもランドセルに
机の中のものをかたずけはじめます。それでいて、「言葉がけを全く理解できない」と
いうのは、説得力がないですよね。
サリーも時々「本当は解ってるのかも・・・」と錯覚します。
そこで、状況と全く違う言葉かけをして、実験をしてみました。


        



実験 1

 普段、言葉がけだけで出来る「手を洗って」の指示を全く違った場面で声かけしてみる。
 
    お風呂で、身体も洗い終わり、後は洗面所に出て身体を拭くだけという状況で、
     「手を洗って」と声をかけてみました。
    悠くんは、バスタブに蓋をする、洗面所に出る扉を開けるなど、今までこの状況なら
    こうしたという行動をサリーの反応を見ながら(正しいかどうか確かめている)やっ
    ていました。
    結局、手を洗うことはできませんでした。


実験 2 

 悠くんが理解していると思われる指示「テレビを消して」と「カーテンを閉めて」を、声かけと
 しぐさとでだす。


    サリーが、カーテンを見ながら手を少し動かし(閉めるしぐさ)ながら、「悠くん、テレビ
    消して」と声をかけると、やっぱり悠くんは、さっとカーテンを閉めてくれました。

 



        



他にもいろいろやってみましたが、普段声かけで出来ている行動が、本当は状況を判断
してやっていることがよく判りました。

先日、ある療育で、車椅子に乗ろうとしている悠くんに、A先生が聞きました。
「誰に押してもらう? (自分の鼻を指でトントンしながら)私? それとも、(向こうに
座っているB先生を指差しながら)あの先生?」。
悠くんは、指示されたとおりにB先生の所へ行き、その先生の鼻をトントンしました。
指示を出したA先生のしぐさは自然に出たものだと思いますし、手でそういう指示を
出したとは思わなかったでしょう。でも、言葉を聞かず、そのしぐさだけから読み取っ
たとしたら、「あの先生の鼻をトントンしなさい」ということになります。
言葉の理解があると誤解していると、このように、指示を出した先生と、受けた悠く
んとのずれのようなことが起こります。もしもこの時に、指示どおりにしたのに「どう
して出来ないの」と叱られたとしたら・・・かわいそうですね。
言葉で十分理解していると誤解される悠くんは、よくこういった被害にあうと思います。
言葉は理解していないとわかっているサリーでも、時々やってしまいますから・・・(--;)


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