バンの中には、大柄な西洋人カップルがすでに乗り込んでいて、荷物も 体に合わせて大柄なせいか、そうとう詰めてもらわないと僕の入る余地が なかった。この3人で全員揃ったらしくバンは出発した。5分後、まだ 朝の5時半だというのに客でいっぱいの軽食屋にバンはストップし、兄ちゃんは コーヒーは要るかい、とさわやかな笑顔で尋ねてきた。全員が濃くて甘い ネスカフェを飲み、その10分後バンは小さなツアーオフィスへたどり着いた。 ツアーオフィスに着くと、しばらく待つように言われたのでソファで寝ていると 爽やかな兄ちゃんはここへ送り届けるのが仕事だったらしく、歯を輝かせながら帰って いった。西洋人カップルも僕同様あまり眠れていないのかソファでうつろな目を しながらもたれあっていた。とろとろしかかったころに、奴がやってきた。
さっきの爽やかな若者とは正反対の浅ましそうな顔をしたぼさぼさの長髪の 薄汚いおっさん。ちょっと言い過ぎかもしれないが彼はそんな印象とともに ツアーオフィスにやってきた。僕とカップルは彼のワンボックスカーに乗せられた。 車はしばらくあちこちのツアーオフィスをまわり、他の旅行者が何人か集まってきた。 車は運転手を入れて11人は乗れる。先に乗った客ほど後ろに詰め込まれるので、 僕とカップルは一番後ろのシートに乗せられていて、前の様子はほとんどわからな かった。
7人ほど集まった時点で、車は何件目かの新たなツアーオフィスの前に停車した。 また誰か乗ってくるんだろうな、とぼーっとしていると運転手が呼びに来た ので、仕方なく降りた。どういうわけか車が停まっている前にあるツアーオフィスではなく、 そこから角を曲がって少し歩いたところにあるまた別のツアーオフィスへ 連れて行かれた。ツアーというものは自分で手配しなくてもいいぶん、向こうの手順に 従わないといけないところがあるので、何か渡したりもらったりすることがあるんだろうと 思いながら、そのオフィスの扉を開けた。
今回のことは、そういう旅行者の心理をついたやり口にしてやられたところがある。 寝不足もそれを手伝ったのだろう。扉の向こうにはタイ人にしては恐ろしく 太ったいかつい女性とその取り巻きらしいのが2,3人いた。そして、僕を椅子に座らせ、 女は威圧的な口調でしゃべりかけてきた。