「トカラ」固有の生物群    
タモトユリ(鹿児島県指定天然記念物)

口之島にだけ群生する。「最も高貴なユリ」という学名をもつ。
他のユリが花弁を下に向けて咲くのに対し、「タモトユリ」は空に向かって咲く。強く上品な香りと、純白の花が特徴。

ユリの代表種とされる「カサブランカ」は、この「タモトユリ」と他のユリとを交配させて作られたものである。「タモトユリ」は日本国内よりも海外で人気が高く、戦後の貧しい時代に乱掘されて園芸業者に売られ、絶滅の危機に瀕した時期もあった。現在では、県天然記念物に指定され、長崎大学などで種の保存のための栽培が為されている。
江戸時代には、毎年12本ずつ幕府に献上されたと古文書にあり、平家の落人伝説も持つ、悲しい花である。
天に向かって咲くタモトユリ
トカラ馬(鹿児島県指定天然記念物)

中之島でのみ飼育されている。県の天然記念物に指定されているとはいえ、現在20頭ほどしかいないため、絶滅の危機が去ったわけではない。
日本馬の原種といわれている。以前はごく普通に農耕馬として使われていたが、農機具の発達と共に使われなくなり、現在では純粋に種を守るためだけに飼育されている。

※2007年秋から東京・上野動物園で種の保存を兼ねて、飼育展示される。

放牧中のトカラウマ トカラウマ
野生牛(鹿児島県指定天然記念物)

口之島にだけ生息している。現在の生息数約100頭。
もともとは家畜として飼育されていたものが野生化したものではないかといわれている。
世界的に見ても、完全な野生状態が見られるのは口之島だけである。
年に数頭捕獲され、徳之島の闘牛などに使われている。回り込むように生えた角に特徴があり、野生牛の強さは他の牛の追随を許さない。
学術機関の研究も盛んで、京都大学は定期的に調査を行っている。

口之島野生牛 霧の中から姿を現した野生牛
トカラヤギ

古くは奄美大島や沖縄各島にも生息していたが、現在では野生のものは「トカラ」にしかいない。
沖縄などではヤギを食べる習慣があるために絶滅したのではないかと思われる。

飼育されるトカラ山羊 絶壁に立つトカラ山羊
アカヒゲ

ツグミ科の小鳥。種子島、奄美大島、徳之島に留鳥として分布。清流のある深山の林に生息。
翼長7cm。オスは背面が濃暗赤色、胸腹面は白く、のどの部分だけ黒色。メスには、黒色部分はなく、全体に暗色。
習性は近似種のコマドリに似ている。林内の地上で食物をとる。
羽色が美しく、飼い鳥にされるが、保護鳥である。
トカラ列島(十島村)の村鳥でもある。
トカラファンの中には、この鳥の美しさに惹かれてトカラに通いつめている研究者もいる。

アカヒゲ アカヒゲ
「トカラ」のその他の動植物
「トカラ」の気候は亜熱帯であり、”ガジュマル”の木が生い茂り、”バナナ”が自生し、”ハイビスカス”が赤い花を咲かせている。ある島では”パパイア”を栽培している人もいる。トカラは「ガジュマル」と「琉球竹」の島でもある。
哺乳類、鳥類、は虫類、チョウを除く昆虫類、クモ類、陸産貝類の分布が、奄美大島と屋久島・種子島の間を走る「渡瀬線」で北と南に分かたれている。トカラはその渡瀬線上にあり、それゆえほかの地域にない多彩な生態系を形作っているのである。
 
島で咲き乱れるハイビスカス
ハイビスカス
ガジュマルの老木
ガジュマルの老木
トカラのどの島にもあるガジュマル。平島にあるガジュマルは樹齢1000年を超える。
気根が下の方に向かって伸びていく不思議な植物である。
溶岩地帯に咲くマルバサツキの群落 ピンクの色が美しいマルバサツキ
マルバサツキの群落 マルバサツキの群落
屋久島などにもあるが、諏訪之瀬島のものほどはない。ここの群落は人を圧倒する迫力を持っている。「十島村」の花にもなっている。
トカラではポピュラーなツワブキ
ツワブキ
これもトカラのどの島にも咲いている。
ガーデニングブームで、都会でも栽培されているが、自生したツワブキの黄色い花は可憐で美しい。
この他にも、「トカラアジサイ」、「アダン」、「ビロウ」、、「ハマゴウ」、「ヤシャブシ」などの植物があり、「エラブオオコウモリ(国指定天然記念物)」、「トカラハブ」をはじめとする動物群も異彩を放っている。
トカラ」自然の造形    
宝島の大砂丘
宝島の大砂丘
セリ岬の奇岩
小宝島の赤立神
宝島の大鍾乳洞
宝島の鍾乳洞
諏訪之瀬島の乙姫の洞窟
諏訪之瀬の須崎
 
 
 
トカラは海も空も澄んでいる。限りなく透明に近く、遥かかなたでは水平線と空が一つになっている。海鳴りと風の音、きらめく海原、キラキラ輝く空気、そのすべてが遠い昔に忘れ去った私たちの心の故郷の光景である。
日本では少なくなってきた真の自然が残るトカラの今を、いつまでも残しておきたいと願う。
十島村昆虫保護条例施行
平成16年6月22日に施行。この条例は、十島村内の昆虫(幼虫、さなぎ及び卵の状態にあるものを含む。)を村・村民等が一体的かつ総合的に保護を図り、人類共通の財産として、将来にわたり子孫に伝えていくこととともに、自然環境を保全する意識の高揚を目的としいる。この条例により、村有地内において私的利益を目的に昆虫の採取捕獲が禁止となる。