UBSでクロカンするコツ

クロカンをやる上で重要なのはその車の特性を知ること。これを理解しないばっかりに、あっと言う間に車がボロボロになり修理に金と時間ばかり食われ、楽しいハズ趣味(クロカン)が続かなくなってしまう。そこで今回はビッグホーンでクロカンをやる時のポイントについて研究しよう。
まず最初に、ビッグホーンでクロカンをやる上で問題になりそうな点についてまとめてみる。
●フレーム
UBS69以降のフレームは55を元に開発したモノ、という話をよく聞くがボクはこの話にはちょっと疑問を抱いている。確かに、基本構成は55のフレームとよく似ているが、しかし、良く見比べてみるとかなり違っている部分も多い。55の時代、ビッグホーンのフレームは丈夫という話は仲間内では有名な話であったが、69になってからは大夫状況が違うようだ。
例えば、クロカンに必要なピンドルフック。55の場合、リヤメンバーに予め穴が開けてあるので、そこにピンドルフックを買ってきてボルト止めすればOK! ソフトカーで思いっきりしゃくったりしても、ロープが切れることはあってもフレームが曲がることは無かった。ところが69の場合、穴は開いているもののそこにピンドルを付けてしゃくったりすると、ものの見事にフレームが曲がってしまう。思うに、フレームの構成はよく似ているものの、鉄板が薄くなったような気がする。クラッシャブル構造・・・。という事を言う人をたまに見かけるが、現在の衝突安全基準ではリヤメンバーは関係ないと思うんだけどなぁ。
●バンパー&フック
ところで、クロカンにスタックは付きものだからフックはクロカンの基本装備の一つだ。69のフックは55に比べフックがボルト止めされているマウントが大きくなりフレームのからのオフセット量が拡大している。フックは、当然、フレームの延長線上にある方が無理な力が掛からず良いワケだが、デザイン上の問題だろうか、かなり低い位置にオフセットされてしまっている。そのため、スタックして斜めにしゃくったりするとフックが取れてしまい大変危険である。(せっかく丈夫なフックが付いているのにもったいない)
メーカーからしてみれな、「真っ直ぐ引いてくれ」ということなのだろうが、真っ直ぐ引ける状態でのスタックは現実にはあり得ない。ここはやはり、80やパジェロのようにメンバーの真ん中にフックを付けてもらいたものだ。
次にフロント側を見てみよう。フロント側での問題は、やはりフレームの強度とバンパーのマウント位置だ。クロカンでは岩や土のカベにパンパーをぶつけることがあるので、バンパーはある程度強度がないと、パンパー自体がボディーにめり込んで二次災害となる。そこで、社外品のバンパーと交換するワケだが、取り付けには十分注意する必要がある。
例えば55の場合、バンパーの重心はフレームの延長線上にあったので、多少バンパーをぶつけてもマウントがフレームに沿ってずれるだけで、二次災害は少なかった。この時、バンパーのマウントがフレームに沿ってずれるというのがミソで、これで衝撃が吸収されていた。そこで、バンパーを取り付ける時はステーのフレーム側のボルト穴を楕円に空けておくというのがコツである。
ところが69になって、バンパーのマウント位置は大夫下の方になってしまった(ボディーの位置が高くなったという方が正解か)。従って、テコの原理でちょっとした衝撃でもバンパーは上を向いてしまう。また、重心がフレームの延長線上にないため、上記のずれによる衝撃の吸収もなく、衝撃はモロにバンパーステーとフレームに受けてしまう。当然、このマウント方式はウインチの装着にも不利で、ウインチベッドやバンパーステーはかなりの補強をする必要があるが、69のフレームはあまり丈夫じゃないため、丈夫すぎるバンパーはフレームを狂わせる結果となる。試しに、ギブソンバーやエリートバーなどを付けた69があったら、バーの上端を持って前後に押してみるといい。フレームが動いているのが確認できる。いくらテコの原理とはいえ人力で動いてしまうのには驚きだ。
●タイロッド
タイロッドの問題についてはこちらで書いた。
●トレーリングアーム
ビッグホーンの特徴は、リヤサスペンションの長いストロークにある。長いトレーリングアームがオフロードでのサス・ストロークを出し、デフ上にあるセンターリンクが効果的に脚のバタつきを押さえている。たぶん開発時には、サスストロークを殺さずバタつきをどう押さえるか、相反する問題の解決に「多大な時間と労力をつかったんじゃないかぁ」と思われる。このサス・ストロークは絶賛に値するが、一つだけ戴けない点がある。そう、アームの強度だ。
たぶんコストダウンのためだろうがビッグホーンのトレーリングアームは単なる鉄パイプでできている。正確には材質は分からないが、それ程強度のある部品ではない。他車では、ここは鍛造品が使われていたりするが、イスズも見習ってほしい。コストダウンのためマイナーチェンジで鍛造品から鉄パイプに変えたメーカーもあったが、ビッグホーンは最初から鉄パイプである。当然、クロカンで岩や堅い土山にヒットすれば簡単に曲がってしまう。
●スタビリンク
ビッグホーンの足回りでのもう一つの弱点はスタビリンク。はっきり言ってこのリンクは最悪だ。全く強度が無く人の手でも曲がってしまう。ノーマルのサスセッティングであれば、全く問題はないが、ショックとバネを交換しサス・ストロークを出した脚では、スタビの力にリンクが負けて破断してしまう。スタビクラッチも大したストロークは出ないので、焼け石に水である。
そこで、「スタビリンクを取っ払ってしまえ!」ということになるが、ソーサーや堅いバネを使ったリフトアップならサスが堅いのでスタビが無くても街乗りに耐えられるが、きちんと限界までストロークするようにセッティングしたサスでは、バネスパンが長くなるためスタビがないと街乗りで怖い思いをすることになる(ま、慣れの問題もあるが)。
●オイルパン
これも69の不思議な点であるが、55の時にはあったオイルパン・ガードが69になって無くなってしまった。従って、69のオイルパンは剥き出しである。オイルパンのガードは泥のステージでは大して問題にならないが、岩のステージでは前脚で浮いた岩がオイルパンを直撃し、オイル漏れの原因となる。特に、トーションバーが堅くなることを嫌って車高の低い車は、ヒットさせる確率が高いので要注意事項である。
さて、以上を踏まえた上でビッグホーンでクロカンをする場合のポイントを考えてみる。
●リヤバンパー&フック
リヤフックはとりあえずノーマルのままでも問題ないが、改造するのであればバンパーとセットで考えた方が良い。具体的には、リヤバンパーの方は社外品の丈夫なバンパーに交換するか、リヤメンバーにアングルやCチャンなどを抱かせ補強してやる。当然、バンパーが丈夫すぎてフレームがいってしまっては意味がないので、適度に曲がってくれるバンパーにすることが重要だ。そして、センターにフックの付けられるものにすること。フックは、ピンドルフックが丈夫であるが、いい加減な製品は、フック自体が伸びたり破断したりすることがあるので見極めは難しい。また、ピンドルフックは筐体がデカいため、すり鉢で岩などにヒットさせ、二次災害になる場合も多い。
そこで、当研究所のオススメとしては、80やパジェロのノーマルフックを流用するのが良いと思う。軽量、コンパクトで、安価。ループ式のフックは見た目よりも意外と丈夫だ。もし、強度的に不安があるようであれば、鉄筋をちょっと溶接してやれば良い。バンパーの取り付けには、楕円加工を忘れずにする。あっ、そうそう、注意点として、Cチャンなどの鉄骨剥き出しのバンパーは車検が通らないので気を付けること。
●フロントバンパー
フロントバンパーの方も、とりあえずはノーマルのままでも問題はない。ウインチを付けるのであれば交換する必要も出てくるが、ここはどう改造するか頭を悩ますところである。
フロントバンパーは、岩や土カベにぶつけることが多いので、適度な強度を持った粘りのある軽いバンパーが良い。具体的には、ギブソンバーやエリートバーなどのアルミのバンパーが考えられるが、強度が無いものも多いので見極めが難しい。ポイントとしては、材質にもよるが6mm以上の厚みがあること、終端が直角に曲がっていること、ステーがしっかり作られていること、などが挙げられる。
鉄製バンパーについては、ARBなどの丈夫なバンパーがあるが、ビッグホーンには丈夫すぎて不向きである。ただでさえフロントの軸重が1t以上ある車なので、重いバンパーやウインチを付けてこれ以上フロントを重くすることは、フロントの足回りに色々なトラブルが発生する原因となる(ディーゼルの場合ね)。クロカン性能は、フロントの乗り上げ性能によるところが大きいので、ウインチを付けるにしても、シンプル、軽量がポイントである。69の場合、上記マウント方式による問題もあるので、あまり丈夫なバンパーはフレームを曲げることになってしまう。当研究所としては、必要最小限の鉄製、または、丈夫なアルミ製が良いかな、と考えている。
●タイロッド&トレーリングアーム
タイロッドとトレーリングアームについては、こちらに書いたので参考にして頂きたい。また、スタビリンクの問題については現在研究中である。
●オイルパン
オイルパン・ガードについては、できれば有った方がよい。55のガードが流用できるかと思ったが、69に合わせてみると長さが大夫延長されているのでボルトオンでは装着できない。社外品のアンダーガードを付けるという手もあるが、現在ビッグホーン用として販売されているガードは、クロカン用というよりダートラ用といった感じでフルガードに近いものが多い。フルガードはラリーやダートラなどには良いのだろうが、泥や雪を抱えスタックの原因にもなるのでクロカンには不向きである(特にスノーアタックね)。
ビッグホーンの場合、オイルパンはそこそこ高い位置にあるし、メンバーのセンターも高い位置にあるので、これを殺してしまうのはもったいない。オイルパンだけガードすれば良いので、55のものを加工するか新規に作成するかしても、それ程難しい作業ではない。クロカン車は車重が重いので、ヒットしても平気な丈夫なガードを付けるより、できるだけヒットしないように必要最低限のガードを付けるようにした方が良い(お金もかからないしね)。結局、どんなに丈夫なガードを造っても、それを受けるのは最終的にはフレームなのだから。
これも、そのうち作成することとし、とりあえず岩場ではライン取りでカバーする。
●リヤサス
さて、肝心の足回りの方であるが、ビッグホーンの場合、基本設計でサス・ストロークは十分取られているので、それを上手に引き出すようなセッティングをしてやることがポイントだ。
具体的には、「街乗りメインでたまにオフロードを走る程度。オフロードもそんなにハードな所へは行かない」 というのであれば、ノーマのバネにソーサー(ダカールの商品名)、ショック交換程度で良い。ノーマルのバネは大変良くできているし、乗り心地や操安性などノーマルのセッティングが生かされる。この場合、ショックの選定は「ノーマルバネの自由長
+ ソーサーの長さ − 30mm」程度で良いだろう。2〜3インチのソーサーを入れた場合、ランチョの型番で言えばRS9001あたりが適当かな。
ショックの選定はなかなか難しいのだが、クロカンでは縮み側が重要なのでスッっと入るショックが良い。当研究所のオススメはランチョのRS9000である。縮み側はスッっと入るし、伸び側はアジャスタブルで色々なバネに対応可能だ。
本格的にクロカンをやる場合には、パーツの選定方法から違ってくる。足回りの部品を全て取っ払いサスの自由長を測定する。その結果を基に自由長を生かすショックを選定し、それに見合うバネを決定する。ここでも、基本は縮み側の性能だ。従って、ソーサーは入れてはいけない。ソーサーは単に車高を稼ぐだけでサスストロークは全く増えないので、言わば小手先のセッティングだ。で、それらを基にパーツのバランスを考え選定するワケだが、市販品では、ビッグホーンのサス・ストロークを生かし切るバネが存在しない。その結果、TRACサスができたワケだが、それでも完璧とは言えない。足回りのセッティングは難しい。この場合、ショックはRS9008あたりが適当だ。
●フロントサス
トーションバーについては、アームの長さ、バネ径、バネ・スパンで決まってしまうので、アームの長さ、バネ・スパンが(普通では)変えられない以上、どれを入れても大して代わり映えはしないので、ノーマルのバネを絞るのがお手軽だ(縮み側が堅くなるけどね)。バネ径を太くすることは可能なので、オーストリッチのバネがイルムシャーのバネより径が2mm程太いのでどうかな〜といったところ。誰か、試したら教えて下さい。
●タイヤ
そうそう、タイヤを忘れていた。クロカンに限らずタイヤは重要なのパーツだが、これについては、細身、大径という基本が守られていれば何を履くかは個人の趣味である。ビッグホーンの場合、きちんとセッティングされたサスであれば、外径820mm、幅270mmあたりが限界だ。タイヤで言えば235/85R16、32×9.5R、32×10.5R、750-16あたりだろうか。これでもフル・ストロークするとインナーフェンダーに少し干渉する。
255/85R16は履けないことはないが、タイヤがフェンダーに干渉するため、フェンダーの一部をカットする必要がある。255/85R16になると外径は840mm以上になるので、足回りのトラブルやクラッチの異常消耗に繋がりオススメとは言えない。いっちゃった人のタイヤだ。当然、街乗りは遅い。
ま、以上がビッグホーンでクロカンをする時のポイントだろうか。色々書いてきたが、ビッグホーンは乗用車化が進む四駆の中で、クロカンとRVを上手くバランスした数少ない四駆である。上記ポイントを参考にして頂いて、長くクロカン・ライフ楽しんで欲しい。
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