タイロッドが折れる謎

UBSで一番ネックになるのがタイロッドの破損。今回はタイロッドが折れる謎について研究する。
●現象確認
まず最初に、タイロッドが折れた現象を確認してみる。
1つ目のケースはUBS25。購入したばかりのほぼノーマル状態で、タイヤは32×11.5RのAT。本栖ハイランドに行った時、三角木馬があったので足慣らしにちょっとトライ。ゆっくりと三角木馬に進入し、前脚が木馬に掛かったところでアクセルON!。当然、越えられるハズもなくセンターのクロスメンバーが木馬の頂点に引っかかってストップ。ドライバーは、結構その気になっていてアクセルを吹かしクラッチを繋ぐ。2〜3度、フロントが少し持ち上がったと思ったら、「バキン」という音と共にタイロッドが破断。ハンドルは直進状態だった。
2つ目のケースはこちらでも紹介したUBS69(電子制御)。F2のトップ・オブ・チェストでゆっくりと進入し、前脚が浮いてストップ。ラインを修正し轍のような段差を越えようとして右にハンドルを切りながら軽く前後に揉む。これも「バキン」という音と共にタイロッドが破断。

3つ目のケースはUBS69(メカポンプ)。これは、フロントにアップスペーサーが入っている。折ったタイロッドの数は約10本。当初は、「運転が下手だ!」とか「走り方が悪い!」とか、みんなに言われていたが、さすがに10本も折ると車の問題が濃厚(よく10本も折ったモンだ)。同社種がほとんど折れていないことを考えるとアップスペーサーが原因。
●原因と考察
以上が主な折れたケース。960(UBS69以降)が発表された当時、リフトに上げて直ぐに気づいた点は脚周り関係の部品は55のものを流用しているということ。正確には、ホイルベース、トレッドとも長くなっているため、従来のものを延長し使用している。従って、シャフトの径はそのままなので相対的に強度が落ちている計算だ。特に、ポンプが電子制御になったUBSは更にトレッドが拡大しているため、この現象は出易くなる。
次に、折れた状況を考えると足が地面から離れ空転し接地した時に折れている。当然、でかいタイヤが空転し接地するワケだから、その慣性エネルギーは相当なものだろうが、原因はそれだけではない。
ここでポイントとなるのは接地の仕方。UBSは脚が伸びるとネガキャンになり、タイヤは内側から接地する。従って、接地した瞬間タイヤは内側に走ろうとする。更に、前進にトルクがかかればタイヤは内側に切れ込もうとするので、アクセルON
+
でかいタイヤの慣性エネルギーで無理矢理ハンドルを切られることになり、それがタイロッドを直撃する。特に、2のケースのようにハンドルを切りながら段差を乗り越えようとした場合には注意する必要がある。
また、ハンドルを切るとナックルのアームとタイロッドの角度が厳しくなることは、現車で試して見れば直ぐに確認することができる。
もう一つの問題としてはアーム(タイロッド)の角度。アームの角度=タイロッドの角度だから、下図のようにタイロッドに角度が付けば斜めの力が大きくなりタイロッドが曲がる原因となる。赤丸の所が一番力が掛かる場所だ。

更にUBSの場合、脚が伸びるとネガキャンになるので更にタイロッドに負荷がかかる。

ここでのポイントは、トーションバーを絞ることによるリフトアップは、ノーマルと脚の伸びは変わらないのでほとんど影響無いという点である(むしろ車高ダウンによるオイルパンの干渉の方が心配だ)。3のケースを考えた場合、アップスペーサーによりナックルの位置はスペーサー分下がるので、ボールジョイントの角度は限界を超え、結果、10本もタイロッドを折ることになる。因みに、その後アップスペーサーは外され、タイロッドは折らなくなったそうだ。
●結論
以上から、当研究所がオススメするタイロッドを折らないためのテクニックとしては、
●フロントがジャンプした時の接地時には、一瞬アクセルを抜く。
●その際、ハンドルはできるだけ真っ直ぐにする。つまり、前輪が浮くような
所はできるだけ真っ直ぐにアプローチをすること。
●アップスペーサーやバンプストッパーの切除など、ナックルを下げる改造は
できるだけ避ける。(タイロッドがノーマルの場合ね)
●タイロッドを強度のあるものに交換、または、補強する。(特に電子制御以降のUBS)
後日談:
下記のようなご指摘をこちらのWebmasterから頂いた。
>絞り込んでれば、例えばノーマルと比較すると、同じ荷重ならより角度のつ
>いた状況で受けれますよね。ということは、より角度のついた状況で十分な
>トラクションが発生する、ということになりませんか?
確かにその考えは一理ある。バネを絞った状態でそこに車重がかかれば、絞ってない場合より足が伸びようとする分、接地面圧は高くなるのでグリップが良ければ折れ易いという状況が発生する。但し、通常はタイヤがスリップしてくれるハズである。では、スリップしないケースは? と考えると、
●えらいグリップが良い路面での山跨ぎのようなケース(F2など)
●フロントがジャンプして着地した瞬間(ヒルクライムの頂上)
●えらいグリップの良いタイヤを履いている
特に2番目のケースでアクセルを踏んでいる場合は致命的である。フロントの軸重は通常時の軸重(1150Kg程度)+その位置エネルギーが一気にタイヤにかかるからスリップする間もない。但し、これは運転を気を付けることによってある程度は防げそうだ。
しかし、なぜ大して絞ってもいないノーマルが折れたり、隊長が10本もタイロッドを折ったのだろう・・・? 別の理由もあるようだ。実は以前から気になっていたことがある。ボールジョイントの限界角だ。下の写真を見て欲しい。

ちょっと分かりにくいが、ジャッキアップした状態でノーマルのタイロッドを当てがってみた。タイロッドホルダーが付いているのが車に付いているタイロッド。驚くことにボールジョイント角は既に一杯だ! これではボールジョイントが受けた力は全てボールジョイントのボディーにかかり、上記赤丸の部分を直撃する! これは設計ミスだな。
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