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作業環境整備編 〜校正机を導入する〜

■校正机がほしい!

校正の勉強をはじめてしばらくは、特に「作業机」と呼べるようなものがなかったため、ダイニングテーブルのすみっこで校正実習課題をこなしていました。
しかし、食事をとるためのテーブルですから、天板は低めですし、勉強やそのような作業に向いたつくりになっていないことは明らかです。
しかも、私は生まれつき視力が弱く、一字一字に細かく目を走らせるようにすると、しぜん、姿勢はだんだんと前かがみになっていき、気がつくと首まわり・肩・背中・腰にかけてバリバリに痛くなっているという始末。

『新編 校正技術』にも紹介されているように、これは《校正机》を導入するしかない。
まだ収入もない身ですから、なんとか家にあるもので工夫してみるという日々がはじまりました。

まずは、前述のダイニングテーブル上に、『imidas』などの厚みのある雑誌・書籍類を積み上げて、その上に平らな板を敷き、天板の高さを高くする作戦。
少しは目線が上がり、首への負担が軽くなる気もしましたが、同時に腕の位置も高くなってしまうため、肩がいかるようなかっこうになりあまりよろしくない。
これはすぐさま、却下となりました。

■コタツ机の活躍時代

やはり、手元は肩から腕を自然におろすような形がとれるような高さで、そこからゆるやかに傾斜をつけていって、原稿やゲラを置く位置では高くなるようなポジションがベストだろう。
そこで次に目をつけたのは、和室の片隅で出番なく置き去りにされていた、コタツ机でした。
コタツ机はご存知のとおり、脚の骨組みの上に天板をただ乗せただけの、単純なつくりをしています。

その天板の片側に、ザブトンでもマクラでも、なにか突っ込んでやると、適度な傾斜のついたりっぱな《校正机》が姿をあらわしました!
座面から天板までの高さも理想的です。コタツを壁ギリギリの位置に据えると、背中を壁にもたれかかるような姿勢で座れてラクです。
しばらくはこれでいこう! 次第になれてくると、首や肩のこりはウソのようになくなってゆきました。

特製《校正机》を使用するようになってから数カ月、ようやく念願のお仕事もいただけるようになってきたころ、新たな悩みが生じてきました。

首まわりはずいぶんラクだけど、なぜか腰や股関節が激しく痛い。
部屋のすみっこに座りこんでいるせいか、日中でも暗く感じるし、電話に出るなどなにか用事があって立ち上がるときに苦労する。
ゲラやら資料やら辞書やらが床に散乱していて、見た目にも汚く、掃除もめんどう。

後者の2点は、気分的な問題もあり慣れれば…というのもありましたが、いかんせん、体の不調は日常生活や、仕事そのものの能率にも支障をきたします。
これではいかん…と、著名な整形外科で診察してもらったところ、床に直接座る姿勢は腰に多大なる負担をかけるとのこと。私の場合、もともと持っていた軽い椎間板ヘルニアからくる坐骨神経痛を、さらに刺激し悪化させる結果を招いていたそうです。
なんとかしなければ。やはり、イスに座った姿勢をとらなくては。
そう考えて、再び校正机を探し求めはじめた私でした。

■製図板から書見台まで

以前から考えていたのは、製図用の「製図板」および「製図台」といわれるものです。
製図板は持ち運びに便利な傾斜脚つきのものも意外に手頃な価格で出回っているようなので、画材店に出向き吟味してみました。
ところが、この脚による傾斜というのが、わずか5°ほどのものなのです。
コタツ校正机では、正確にはわかりませんが、おそらく15°ほどの傾斜はついていたでしょう。
5°というのはあまりに緩やかすぎます。
かといって、本格的な製図台と製図板の組み合わせでは、高価格すぎました。しかも、校正するには不必要な機能が盛り込まれすぎています。
(−すぎる、のオンパレード!)

同時に、インターネット上で「校正机」「傾斜机」などのキーワードで検索してみました。
校正机などという名目で販売されているような製品はありませんでした。やはり、製図台関連の情報しか得ることができません。
先輩校正者の方々に情報提供を求めてみましたが、私と同じような道のりをたどってやはり有用な情報にたどり着けなかった、というお話や、特に作業上、傾斜は必要ない、というお話が多く、「それなら『書見台』で探してみてはどうですか?」 という情報にわずかな光明を見いだしたというぐあいでした。

■スロープデスクとの運命的?な出会い

そんなとき、たまたま他の家具を検討して通っていた家具店にて、なにげなく「こういう、傾斜のつけられる机を探しているんですけど」という話を切り出したところ、心当たりをあたってみてくれるという店員のことばに、ダメもとで望みをかけることにしました。
数日後、その店員から電話が入りました。「1点だけ、そのようなものが見つかりました」。
FAXでカタログコピーを送ってもらって、よくよく観察してみました。

…んんん、これは、なかなかよさそうだぞ! ちょっとカッコウは悪いけど、価格も手頃だし。
名称を見ると「スロープデスク」とあります。
インターネットで「スロープデスク」で検索をかけると、この商品の情報が数件ヒットしました。
どうやら、ネット通販を主体に販売されている商品のようです。
鮮明な写真も見ることができ、構造を把握できたので、その家具店に購入を申し込みました。
こうして、ようやく、私の《校正机》探求の旅はゴールを迎えることができました。

スロープデスク
書棚の横に置かれた
スロープデスク。
(クリックすると大きい画像に)

届いた当日、さっそく機能面を確認。
角度をつける機構ははなはだ単純なもので、天板の奥側(高くなるほう)の下にパイプが垂直についていて、脚のついた骨組みの水平に渡したパイプと十字に組み合わさるよう、金具で繋いであります。
その金具についたネジ(手で軽く回せます)を緩めて垂直のパイプを上下させ、調節することによって角度を0°〜90°までつけられるようになっています。
天板の、手を置く側にはちょっとしたペン置き(黒板の最下部にある、チョーク置きを想像してください)があり、奥側にはネジで緩められるつくりのこれまた簡単な紙ばさみが備えつけられています。なかなか使いやすそうです。

イス(これも今回、他の家具店で気に入って購入したオフィスチェアを組み合わせました)に座ってスロープデスクに向かってみると、イスの座面から天板までの高さが若干足りないようです。
そこで、次のオフの日に、DIYショップへ出向き、テーブル脚にかませるゴム脚と、「カグスベール」を購入しました。
ゴム脚は、高さを上げるためのものですが、市販のものでは目的に合ったものがありません。
そこで、適当なサイズのゴム製の円筒状の部品を4つ購入して、その片側に穴開け加工をしてもらいました。

ゴム脚部分
ゴム脚を履かせた部分のアップ。
白く見える部分から下が
カグスベール。

家に帰ってこのゴム脚を履かせようとしたところ、ショッキングなことが判明。
もともとこのスロープデスクについている、パイプ脚の先の黒い部品は、ネジ式になっていたのです。
つまり、この黒い部品をくるくる回して外し、同じネジ規格の継ぎ脚をつけようと思えばつけられたのです。でも、もうあとのまつり。ともかく、買ってきたものを取りつけてみます。

少し穴サイズを小さめに作ってもらったので、最初は入れるのに苦労しましたが、入るとガッチリと食い込んでちょっとやそっとでは取れない状態になりました。これで、天板の高さは5センチほど高くなりました。
そのゴム脚の下にさらにシート式の「カグスベール」を貼れば、畳の上でもラクに動きます。
実際に1〜2回仕事をしてみたのち、書類がずるずると落ちてくるのを防止するため、天板の手元側の辺にテニス用具の中にあったテーピング用のテープを貼り、ますます使いやすくなりました。

その後、この《校正机》で半月ほど作業をしてみましたが、腰から下の調子は上々です。
最初、腕の置きかたに慣れなかったせいか、少しだけ肩こりが復活しましたが、天板の傾斜のぐあいをいろいろに調整しているうちに改善されつつあります。
あとは、オフィスチェアが座面の高さだけでなく、背もたれと座面の傾きを個々に調節できるレバーがついたタイプ(これだけの高機能で、わりと安かった)なので、背もたれをいっぱいに前へ倒し、逆に座面をできるだけ後ろに倒れこむような角度に調節するようにして、背筋がピンと伸びた姿勢でデスクに対する前かがみ度を少なめにするよう、工夫しています。

もっと長い期間使用してみないとなんともいえないのですが、今のところ、体のぐあいもまずまずですし、頭の位置が上がって部屋の照明に近くなったため明るく感じます。
なにより、なにごとかあったときにすっと立ち上がれるのがgoodです。
書棚の隣りにデスクを置いていますので、辞書や資料類も床に散乱させることなく、さっと取り出せるので、以前よりは仕事部屋らしく見えるようになったのでは?と自負しています。
ちなみに、この校正机の名前は“ドウェイン”といいます(由来はFullhouseマニアならわかるかな?)。
あとは、仕事の中身の問題かな……(笑)。

修業の日々はまだまだつづく…

 

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