清末愛砂さん インタヴュー 
――国際連帯運動の活動とは


――「国際連帯行動=International Solidarity Movement*1はどのようにはじまったのでしょう?

サイードの文章*2に載ってるんだけど、ムスタファ・バルグーティ博士っていう人が「非暴力でやろう」と提唱して、サイードやマフムード・ダルウィーシュといったパレスティナ人の知識人が呼びかけた。これにパレスティナの若者たちが呼応して始まったのが「国際連帯行動」。これに現地で支援活動をしている外国からのグループが合流して、実際の活動の中心を担ってきた。

パレスティナ人が前線に立つと、イスラエル軍に撃ち殺されるから。キャンペーン自体は去年の8月からだけど、動きはもっと前からあった。それ以前から同じようなことをやっていたグループにGrassroots International Protection for the Palestinians(GIPP)っていうのもある。

「国際連帯行動」は、パレスティナ人主導の運動であり、これに外国人が呼応して一緒にやっている。

――「非暴力」という思想はどこからきているんだろう。

どうなんだろう……。キング牧師とか、ガンジーとかの教えを汲んでいるパレスティナ人もいて、非暴力で抵抗しようという人々もずっといたんだよね。そういう流れでもあることは確か。

――実際の活動内容はどういうもの?

今回のように難民キャンプのなかでデモをやったり、泊まり込んだりするほかに、農作業の間に撃たれたりしないように、パレスティナの農家の仕事を一緒にするとか、チェックポイントでの行動、例えばパレスティナ人が通れないようにブロックが積み上げられているのを、手で押しのけたりといった行動をしている。イスラエルの戦車が進んでくればその前に寝転んだり。あと、難民キャンプへの連帯訪問とか、その場に応じていろいろ。

3月末の侵攻後は、例えば聖誕教会にどっと駆け込んで水と食料を届けたり、救急車に同乗してイスラエル軍の通行妨害を阻止したり、救急車が近づけない建物に、救急車と一緒に走り込んで負傷者を助けたりとか。「国際連帯運動」のデモでは、イスラエル軍が来たら外国人が前に出る。

――一体どれくらいの外国人が現地に入ったのかな。

3月中は70人ぐらい。侵攻がひどくなってからは「どんどん来てくれ」って呼びかけに応じて、もう計千人くらい入ったんじゃないかな。私がいた時点で200人くらいいた。そのあとガンガン来たからね。連れ合いがスペイン戦争に参加したっていうおばあさんも来てたよ。

イタリアからはアナキストが来てた。「みんなでスクワット(不法占拠)して一緒に住んでるんだ」と言ってたよ。彼らは国際連帯運動のなかでの意志決定のやり方についてもいろいろこだわって発言してたね。スクワット生活では、全員が車座になってめいめい言いたいことを徹底的に言い合って、ものすごい長い時間かけて寄り合いをするって言ってた。

――「国際連帯行動」参加者の意志決定はどうおこなわれているのかな。

「国際連帯運動」では、参加者はそれぞれ7〜10人のチームを作って、その単位で各自の行動決定をするのね。それをまた全体会にかける。

チームのなかで、たとえば自分はこの行動には危険だから参加したくない、今日は疲れたから動きたくないという人がいれば、どうすればいいかチームのなかで話し合う。あと、チームのなかでマスコミ対応とか、全体会とチームのそれぞれのレベルでの意志決定を伝達する役とか救対とか、役割分担を決めてる。

――いろんな国から来てる人たちがどうやってチームをつくるの。

たとえば語学的に難があるイタリア組はイタリア人でチームを作ったり、マンチェスターから来た人はそのまとまりでマンチェスター組を作ったり。バラバラで来た人たちはそのなかで作る。

――全体方針はどこで立てているんだろう。

現地の状況をよく知っているパレスティナ人や、長年現地で暮らしている支援NGOの人たちで構成されるコーディネーターたちが決める。「平和を求めるユダヤ人の声」というアメリカの団体も代表を送ってる。今日こういう行動したいけど、こういうスケジュールでどうだろうというのがコーディネーターから降りてきて、これを全体会で話し合う。これを各チームに持ち帰ってまた協議。

こうしよう、とか言ってても、5分後に状況が一変することもある。だからケータイはつなぎっぱなしにしておく。「いま、ラマラはこうなってる、ベツレヘムはこうだ」とひっきりなしに情報が入ってくる。状況が変化するたびに、各チームが内部で協議する。全員がイエスかノーか、発言を求められる。

「あなたはこの行動やりたい? 疲れているならホテルに戻って休んでる?」とか。

ちなみに私がいたチームは、いつだってみんなイエス!(笑)。マンデラチームっていうんだけど(笑)。デモの時はすぐ一番前に行こうとするからね。怪我した7人のうち2人がマンデラチーム。もう気合い入ってるって感じ。カナダ人、ベトナム系アメリカ人、イギリス人、アイルランド人……面白いチームだったよ。

――いま(5月18日)、イスラエル軍に逮捕されて獄中でハンストをしてる人が5人くらいいるんでしょ?

「国際連帯行動」に参加する人には、事前にすごい分厚い文書が送られてくるのね。

そこに、入国の仕方から、ヘブライ語でのスローガンの言い方とか、逮捕された時の闘い方まで書いてある。見捨てられる事はありません、必ず弁護士が入りますとか。獄中闘争をやることは参加の前提になっているのね。強調されているのは、パレスティナ人と一緒に捕まった場合、絶対にパレスティナ人と分断されないこと。間違ってもパレスティナ人の名前を言ったりしないこと、書類にサインなどしないこと。

いま、ハンストをしているのは、聖誕教会の行動で逮捕された人たち。強制送還ではなく、同意の下での自主的な退去という形で国外へ出ることを求めてる。というのは、強制退去になると今後10年はパレスティナに入れないから。逮捕されて、強制送還された人はラマラーの議長府と聖誕教会に入っていた人たちで、10人以上いる。

――最後に、「パレスティナ解放・夏のキャンペーン」への参加を検討している人たちに一言。

自分の責任でやる気があるなら、意義のある行動になるでしょう。もちろん、命の保証はないし、パクられる可能性も高いし、捕まったらハンストとかすることになるかもしれないし、やっぱり大変。でもパレスティナは外からの支援を必要としている。夏のキャンペーンは6月下旬から2ヶ月続くから、そのうち1週間でも10日間でもいいから、参加して欲しい。

*1
いますぐ!!!→ http://www.palsolidarity.org/
*2
「パレスティナに芽生えるオルターナティヴ」(『戦争とプロパガンダ2 パレスティナは、いま』E.W.サイード 中野真紀子訳、みすず書房 2002.6.14)
Emerging alternatives in Palestine(訳) Al-Ahram Online Weekly 2002年1月10-16日号(No.568)

※於/東京 聞き手/鹿島拾市 記録/2002.5.18 (2002.6.25 Upload)


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