さあ、いよいよ終わりの方に近づいてまいりましたが、前章の最後で述べさせて貰った通り、
ここでは旦那様の事について詳しく語ってみたいと思いますが、
その前にこれ迄私が皆さんに語ってきた事を、もう1度思い出して頂けないでしょうか。
まずは第U章ですが、ここで私はかつて旦那様が、
『神の玉座に最も近い位置に座していた』 事をお話ししましたよね。
続く第V章においては、『6対の羽根を持った蛇』 の事について触れさせて頂き、
更に前章においては、旦那様が”奸智”や”権謀”に長けており、
bPたるあの方とは対極の位置にいる事迄も述べましたので、
ここら辺の事情に詳しい人であれば、魔界のbRたる旦那様の正体について、
おおよそ見当がついているものと思います。
しかしながら他のサタン達と比較して、旦那様は意外と地味な存在なので、
殆どの皆さんは恐らくわからないでしょうから、
前述の3点について、もう少し突っ込んでお話しする事と致しましょう。
まずは第U章の 『神の玉座』 の件ですが、言う迄も有りませんが旦那様はサタンであります。
それなのに何故、神の玉座に最も近い位置に座していられたのでしょうか?
これは実に単純な答えでして、旦那様もかつては天界にその籍を置いていたからに他なりません。
当時天界においては、後に魔界のbPとなるあのお方が神の玉座の右側に、
そして間を夾んで左側に旦那様が座しており、
両者の権勢ぶりはそれは素晴らしいものであったのですが、
どういう訳かあのお方は神に反逆を起こしてしまい、天界を追放されてしまうのです。
その後どういった経緯が有ったのかは存じませんが、程なくして旦那様もその座を辞し、
まるであのお方に続くかのように魔界を統べるサタンの1人となるのですが、
お2人とも同じフォリンエンジェル(堕天使)であっても、
末席に近かった私とはそれこそ雲泥の差であったと言えるでしょう。
次に第V章の 『蛇』 の件ですが、これは別段深い意味がある訳ではありません。
元々神の玉座に最も近い − つまり、神の使いでもあった旦那様自身の正体が、
6対の羽根を持つ蛇そのものであったからなのです。
ですからリリス様や後にアダムより生まれしエヴァについても、
旦那様の甘言にコロッと騙されてしまったのですが、
これは彼女達が完全・不完全の違いはあってもともかく人間であり、
元々は神の使いであった旦那様のお言葉を疑う事が出来なかったからなのです。
旦那様はそれを良い事に彼女達にエデンからの脱出を唆し、
そのうちリリス様については、魔界に連れ込む事にも成功するのですが・・・
まさか、あのお方とくっついてしまう事になるなんて、
旦那様にしては珍しい、大いなる誤算であったと申せましょう。
さて、最後、第W章の 『対極の位置 』 ですが、これには2つの意味があります。
1つは先程も述べましたが、旦那様とあの方は、
神の玉座を夾んでそれぞれ左右対極の位置に座していた事で、
そしてもう1つは、自由奔放! 遊び好きの上に女好きであった旦那様に対し、
あの方は謹厳実直! 真面目一筋といった感じでして、
”対極”という意味合いも、どちらかと言えば後者の方の比重が大きかったと言えましょう。
そんな誠実な人物であったあの方が、どうして神に反逆するなどという暴挙に出たのでしょうか?
これはあくまで推測なのですが、あのお方が神に反旗を翻したのは、
どうしても旦那様に何か良からぬ事を唆されたとしか思えません。
何しろ私が最初にその話しを聞いた時は、反逆したのは旦那様の間違いではないのか、
と確認を実施した程であったのですから。
一方旦那様の方も、神の玉座の左側の座を何故かあっさりと手放してしまうのですが、
それについてのはっきりとした理由は神からも、旦那様からも明示される事が無く、
こちらについても未だに謎のままとなっているのです。
仮に前述の私の推測が当たっていたとして、追放の身分となったあのお方に罪悪感を感じたのか?
あるいは、あのお方と旦那様との2人を結びつける何か特別強固な絆が存在していたのか?
などといった事が理由として考えられなくもないのですが、
あのお方のケースに比べればどれも今一つ説得力に欠けると言えるでしょう。
ただ、旦那様の事を良く知る者であれば、誰もが納得出来る案が一つだけ有りまして、
それは、『お嬢様と一緒になられるために魔界の住人となった』 と言うものでした。
確かにお嬢様の素晴らしい魅力を持ってすれば、神の玉座の左側に座するという、
これ以上ない地位・名誉・権力を捨てさせたとしても不思議では無いと思えるのですが、
それにしても、かつては神の左右を囲んでいた2人が今は魔界において、
bPとbRの位に居るとは・・・ 何とも皮肉めいているものですね。
しかしとにもかくにも、旦那様はデルタサタン(第3の魔王)となられると同時に、
魔界に有りながらも美と愛の 「女神」 と迄謳われたお嬢様を娶る事になった訳です。
となれば当然! ベタベタで甘々な生活が始まるものと予想されたのですが、
なんと旦那様は次々と色々な女性達と浮き名を流し、
基本的にすごい焼きもち焼きであるお嬢様の神経を常に逆撫でするという行動を取り、
周りの者達を唖然とさせたのでございます。
お嬢様の心を射抜くために、どれだけの男達が争い、どれだけの血と涙が流されたのか、
到底図り知る事は出来ない程の名声を得ている女性を妻としながら浮気をするという神経が、
小物である私にはどうしても理解する事が出来ないのですが、
逆に旦那様からすればそうする事が当然の事なのかもしれません。
何しろあのお方は、モ○ガン達を初めとするサキュバス、
あるいわインキュバスを全て束ねる、愛欲と色欲のサタンなのですから。
とまあ、とりあえず前章迄の事を振り返るのはこれぐらいにして、
今一度お嬢様とベーゼ様との会話の方に戻ってみる事に致しましょう。
それでは、ページを捲って下さい。