絶対そうに決まってる! -【1】-





「勝ったぁぁ!!!」

「負けたぁ・・・」



両手を挙げて万歳する人間とがっくりと肩を落とす人間。

勝者と敗者の典型的なリアクションである。



「くっそぉ。オメーなんでんな隠し玉持ってんだよ?」

「えへへ〜♪そりゃ快斗に勝つ為に決まってるでしょう?青子、一生懸命練習したんだから。」

「すんなよ〜練習なんて。スポ根じゃあるまいし。」

「青子にとってはスポ根だもん。快斗に負けっぱなしじゃ悔しいじゃない。」



快斗の周りをぴょこぴょこと飛び跳ねる青子に快斗は恨めしそうな視線を向けた。

決して油断していた訳ではない筈だ。

今日も勝負を颯爽と頂いて青子には罰ゲームで明日家を空ける母親に代わって夕食を作らせるつもりだったのに。

もうメニューまでばっちり考えていただけに、今日の負けは予想外も予想外。

快斗にとっては青天の霹靂だった。

青子の大きな瞳に浮かぶ愉悦の光の粒。

ヤラレタ、と快斗は改めて落ち込んだ。



「さぁって♪快斗には頑張って罰ゲームやってもらおうかなっ♪」

「随分楽しそうじゃねーかオメー。」

「当たり前でしょう?青子4連敗中だったんだから。」

「・・・くっそ〜〜。」

「あ〜良い気持ち♪」

「・・・で?オメーの罰ゲーム何なんだよ?」

「封筒開けて見て?」



嬉しそうに言われてしまえば、快斗には従う以外他は無い。

勝負の前に二人でお互いへの罰ゲームの内容を書いたメモを封筒に入れて封をしておいた。

それが今快斗の目の前に置かれている。

何故だか妙な緊張が快斗の身を襲う。

青子が無茶な要求を快斗に対して行うとは思っていないのだが、なかなか突飛な考えを時折見せて快斗の度肝を抜く青子に油断は大敵なのだ。

それが経験上分かっているから、快斗は慎重に封筒の封を開けた。

中から出てくるのは二人分の白いメモ紙。

自分の分は折り方ですぐ分かるので、迷わず青子のメモを手に取った。

何の変哲も無い、四角いメモ。

青子の楽しそうな表情を一度だけ盗み見て、覚悟を決めてそれをぱらりと開いた。







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