Wanted!【4】





どこかレトロな鐘が鳴る。



其れがこの単純でありながらスリリングな鬼ごっこの開始の合図だった。

何処に逃げるのも自由。何を使っても自由。

鬼には逃げる権利が与えられている。

追い掛ける方は個人でも団体でもO.K.

事前にエントリーした仲間と共に鬼を追い掛ける。

制限時間はお昼の鐘まで。

たっぷりとある時間は、事実上全ての鬼が捕まる事によってイベントが終了する事を示していた。

鬼の印は左の手の甲に撒いた赤い布。

快斗は其れを右手で確かめて苦笑いをした。

「こんなもん付けて走り回る俺って結構間抜け?」

校内の抜け道も近道も、この高校にまるまる2年間通って3年生となった快斗にとって分からない物はなく、地の利を活かして逃げ回ればなんとかなりそうだった。

素早く計画を立てながら、其れでも追い掛けてくる人間の中に無意識に青子を探す。



捕まるならあいつにしか捕まりたくない。

そう、思っているからこそ目は自然に愛しい姿を追い求める。

恋人と言う特等席を手に入れて未だ1ヶ月。

座り心地を確かめる余裕も無く、必死にしがみ付いている自分が少しおかしかった。

幼馴染の確固たる絆は確かに未だ有るのだけれども、其れに変わる絆を必死に紡いでいる。



・・・些細な事で喧嘩するのは相変わらずだけど・・・





苦笑がつい唇の端に昇ってしまうのはしょうがない。

「いたぁっっっ!黒羽先輩だ!」

背後から幼い女子高生の声。

どうやら早速見つかってしまったらしい。

快斗は小さく笑みを浮かべると、思考をスライドするように戦闘モードに切り替えて、追手を振り切る為に走る速度を上げた。







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