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「まぁぁぁぁぁ♪」
ぱんっと手の平を胸の前で合わせて、ブティックのオーナーが出来あがった3人を前ににこにこと笑う。
今日のバイトの内容をお浚いしながら待っていた3人は、扉を開け入ってきたこの婦人に最初度肝を抜かれた。
上品に栗色に染められた髪の毛をシニヨン風に後ろに纏め、踝まですっぽりと隠れるような長いロングスカート。
つま先が三日月みたいに反り返った革靴に大きな特徴的な帽子。
これでおなじみの箒を持たせたら、完璧な魔女が一人出来上がると言う訳なのだろう。
「似合ってますね♪。オーナー。」
青子が親しげに笑うと、婦人もにっこりと微笑み返して、3人を順にチェックするかのように見詰めて行く。
なんだか緊張して動けずにそのまま視線を受ける蘭と和葉。
「良かったわ。こんなに可愛らしく着こなしてくれるお嬢さん方で。今回ちょっと遊びが過ぎたかしらと思っていたのだけど、こちらの想像以上に服が貴方達の魅力を引き出してくれてるみたいね。」
「あの。初めまして。遠山和葉言います。今日は宜しくお願いします。」
3人の中で唯一オーナーと初対面の和葉が、ぺこりと礼儀正しくお辞儀をした。
オーナーは同じように頭を下げると、「下でお話しましょうか。」と改めて3人を階下のブティックに連れて行き、椅子を勧めた。
「今日は午後からカフェの方が忙しくなると思うので、午前中はお店の前でのお菓子配り、午後からはカフェのウエイトレスをお願いします。カフェの方は注文を取って、テーブルに出来あがったモノを運ぶだけ。確か皆さんウエイトレスの経験は無いのよね?」
「はい、ありません。」
「あ、経験無いと難しいですか?」
蘭が心配げに尋ねると、オーナーはころころと笑って首を振った。
3人は顔を見合わせてほっと息をつく。
「でも、貴方達今日は大変かもね。人気者は辛いのよ?」
悪戯っぽく微笑むオーナーの真意には気が付けず、今日1日だけのバイトに3人はそれぞれ四苦八苦する事となるのを未だ知らない。