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「・・・もう良いや!快斗の馬鹿っ!バ快斗の大馬鹿!」
大声をだしてはっきりと不満を口にすると青子はくるりと蘭を振り返った。
吹っ切れた満面の笑顔。
「快斗が約束無しにしたから青子、そのオーナーさんに未だ手伝えますか?って聞きに行ったんだ。そしたら、青子の都合が良くてお友達も何人かお願い出来るなら是非って言って貰えたから、やる事にしたの。」
「そうだったんだ・・・」
「蘭ちゃんと青子と・・・出来ればもう一人くらい捕まえたいんだけど・・・」
う〜んと思案顔の青子に、蘭が笑いながら提案した。
脳裏に浮かんだのは可愛らしい関西弁を話す、溌剌とした女の子。
「一人、心当たりあるよ?」
「え?本当!」
「あ、でもこっちに来るの土曜日だから、事前面接は出来ないなぁ・・・」
「『来る』って何処から?」
「あ、その心当たりの彼女、大阪在住で今度の土曜日から遊びに来るの。それじゃ駄目かな?」
「分からないなぁ。今日オーナーさんに直接聞いてみよう。でもその彼女こそ突然の話しで大丈夫なのかなぁ。」
「それはそうだね。でもこの前の電話では、冬に向けて洋服欲しいからおこづかい足りないなぁって言ってたし、結局の所、私と同じで彼女も日曜日に予定をドタキャンされた口だから・・・」
「へ?どういうこと?」
不思議そうに問い掛ける青子に蘭は苦笑を返す。
本当にどうしようもない幼馴染兼名探偵を恋人にしてしまったものだと和葉と二人で愚痴を零しあったばかりなのだ。
「日曜日にね・・・キッドの予告が来たんだって。それで新一と、和葉ちゃんの彼、警視庁に借り出される事になったの。」
「・・・予告?キッドから・・・」
青子の中で一本の線が繋がった。
理由を言いたがらない快斗の約束を破った原因。
青子がはらはらと心配するから、そして自分の無事な姿を見るまで寒空の下パジャマ姿でベランダなんかに立ち続けるから、快斗は青子にキッドの予告日を言いたがらなかった。
つまり、今回のドタキャンは全てキッド絡みだということか。
青子はずぅぅんっと地にのめり込みそうなほど落ちこんだ。
自分だけならまだしも、こんなに可愛らしい女性二人も巻き添えにして、世紀の魔術師が聞いて呆れる・・・!!
「蘭ちゃん!」
がしぃっと両手を捕まれて蘭が驚きから「ひゃんっ!」と変な声を出した。
青子は力強い眼差しで蘭の双眸をじっと見詰めてきた。
「彼女をほっぽりだして泥棒と鬼ごっこしてる彼氏なんてほっといて、こっちはこっちで好きにしようね!バイトやってがっちり稼いで可愛い洋服一杯買って、それでぱぁっと遊ぼう!」
「はい・・・そう、だよね。結局いっつもこっちが振り回されるなんて、納得出来ないよね。うん。そうよ!」
青子の熱意に煽られて蘭も首をこくりと縦に振る。
もの分かりの良い彼女の役にも飽き飽きしていた所なのだ。
たまには羽目を外しても良いじゃないかと思える。
「そうと決まったら和葉ちゃんに電話!」
鞄から携帯を取り出し蘭は和葉に、青子はブティックのオーナーに電話を掛けた。
後はとんとん拍子で話しが進み、彼女達3人は日曜日のハロウィンイベントにバイトとして参加する事になったのだった。
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