Feel So Good -3-
  



  

膝がしっかりと見える丈のプリーツスカート。

赤く映えるセーラーのリボン。

肩口にふわふわと掛かる柔らかそうな髪の毛。

白い肌と大きな漆黒の瞳。

待ち合わせ場所で道行く青少年を知らぬうちに魅了している同い年の友人に蘭は暫し言葉を失った。

普段元気一杯の彼女が何故か憂い顔だからだ。

そうすると、雰囲気が甘く滲んでなんだか額縁に納まる美しい絵の様に嵌まるのだから、声が掛けにくくなってしまった。

腕時計で時間を確認して伏せていた顔をふと上げる。

視線が出会って、彼女が嬉しそうに微笑んだ。

「蘭ちゃん!」

「青子ちゃん。お待たせ。」

並んで歩き出すと、この二人は目立つ事この上ない。

本人達が互いに「可愛いなぁ・・」と思っている二人の美少女は、傍にその幼馴染が居ない時には、これでもかというばかりに男性の視線を独占している事に気が付いていない。

罪なくらいの天然ぶりに、気が付いていない所もそっくりで、その外見も相俟ってまるで双子の様だった。







冷たい風が指先を撫で、青子がぶるりと身を震わせた。

「青子ちゃんその格好じゃ今日寒いでしょ?」

「うん。天気は良いのに、もう風はこんなに冷たいんだね〜。」

青い空を仰いで、青子が少し苦笑した。

悴んだ指先を擦り合せて暖め、鞄を抱え直した。

「早速だけど、お店はここから真っ直ぐの所にあるんだよ?」

「初めてなんだ〜。面接終わったらお茶していかない?」

「うん!今日青子ホットハニーココア飲もうvv」

「甘そうだね。でも美味しそう♪」

「お薦め一杯あるんだよ〜。蘭ちゃん一杯食べて飲んでね!」

嬉しそうな様子に蘭も零れるような笑顔を浮かべる。

そして悪戯っぽく瞳を瞬かせて青子の顔を覗きこんだ。

「青子ちゃん、結構通ってるんだね。それ黒羽君と?」

「う・・・」

快斗の名前を耳にした途端、青子の態度が少しおかしくなった。

頬をぷぅっと膨らませて唇がへの字に結ばれる。

蘭はその仕草にぴんっと来た。

「やだ・・・喧嘩してるの?黒羽君と。」

「快斗が悪いんだよ。快斗が。」

尖った口調とうっすらと滲む涙。

桃色に染まった頬が柔らかそうに膨らんだ。

「約束、してたのに。破るんだもん。」

「それは黒羽君が悪いよね。」

脳裏に思い浮かんだ自分の幼馴染と快斗を重ね合わせて蘭も少しだけ怒った声を出した。

青子が力強くうんうんと頷く。

「本当はこのバイト、最初に声を掛けてもらったのはずっと前なの。でもその時は快斗と出掛ける約束してたから断っちゃったんだ。そしたらそこのオーナーさんがじゃぁこの企画は今回は止めようって言い出しちゃって・・・凄く悪いなぁって思ってたの。」

「うんうん。でも黒羽君がその日の約束を反故にしてきたって事なのね。」

「うん。・・・理由、教えてくれないの。」

沈んだ表情はぱさりと顔に掛かった黒髪に隠されてしまった。

蘭は困ったように腕を軽く組む。

自分にも覚えがある気持ちだから、なんだかほおって置けないのだけれども、なんと声を掛ければ一番ベストなのか、悩んでしまうのだ。







  


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