Feel So Good -35-
  



  

「ねーちゃん来るでっ!工藤っ!」



弾んだ声に、新一はしゃきっと起き上がり、どこか畏まってそちらを振り返った。

魅惑的な丈のミニスカートからは、すらりとした透き通った白い肌の足が惜しげも無く伸びている。

引き絞られたウエストに盛り上がったバスト。

黒髪はアップにされて、動き易そうだ。

初めて正面から蘭のウエイトレス姿を見る事が叶った新一は、魂を抜かれたようにぽぅっとその姿に見惚れた。

快斗と平次は、別方向を向いてコーヒーを大人しく飲んでいる。



怒っている顔でも、ちゃんと見れるなら嬉しい。



新一は心の底が歓喜に満たされていくのをぼんやりと感じた。



やはり、蘭は誰よりも可愛い。

だから、誰にも渡せない。



単純過ぎる気持ちは小さな頃から新一の体に染み付いているモノだから、今更変えられるものでもない。



怒らせてしまった非は勿論認めているから。

反省だって山程している。

許してもらえる為の努力なら惜しまない。



新一はぎゅっと拳を握ると、背筋を伸ばして蘭が近付いてくるのを待った。





















「蘭・・・」



溜息みたいな小さな声が零れ落ちる。

これは反則なんじゃないかと心の奥底で幼い自分の声がする。



なんだってこんなに可愛いだろう?



近くで見たらそんな気持ちが胸を一杯に満たした。



「新一?お仕事ご苦労様。」



刺々しい口調とにっこりと笑う顔の中で瞳だけが冴え冴えと輝く。

整った造形は怒った顔をより美しく、近寄り難いものへと昇華させる。

しかし其処は付き合いの長い新一。

怯まず直球勝負に出た。



「ゴメン。蘭。」

「あっそ。言いたい事がそれだけなら私仕事に戻るから。」



脇で聞き耳を立てていた平次と快斗が思わず身を竦めてしまうほど、冷たく響いた蘭の声。

新一は負けなかった。



「勿論言いたい事はそれだけじゃねー。・・・今日の事は、俺にも言い訳らしきものはあるんだが・・・そんなのオメー、聞きたい訳じゃねーだろ?」

「聞きたくないわね。」

「だからこれ以上言わねーけど。俺は蘭の事大切に思ってるし、特別に思ってる。」

「ふぅん。それで?」

だから何?と彼女の瞳がすっと細くなる。

新一はゆっくりと言葉を紡いだ。

「でも、俺が俺である為には、やっぱり譲れない事があるんだ。その時には蘭を優先出来ない時だってある。」

「・・・開き直り?ソレ。」







蘭は踵を返した。

新一は動かない。

はらはらと平次と快斗が手に汗を握った時だった。





思わぬハプニングが蘭を襲った。





飛び出して来た小学生が、思いっきり蘭のヒップに抱き付いたのだ。



「きゃあっっ!!!」



瞬間的に顔を真っ赤に染めて蘭が飛び上がる。

蘭のヒップに丁度顔が来るくらいの背丈しかない小学生の少年は、悪戯が成功したと得意満面でぱっと離れた。











  


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