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昭和１０年（１９３５年）陸軍は従来の９３式重爆撃機に代わる新型機の試作（キ-１９）を三菱・中島の両社に内示し、１１年２月に要求諸元と性能を指示した。
三菱は小沢久之丞技師、中島は松村健一技師をそれぞれ配して、昭和11年末から１２年にかけて試作機が完成した。
三菱機は当然三菱製の発動機ハ-６を、中島はハ-５を装備していた。（両社とも試作名称はキ-１９と不可解な指示であった） 昭和１２年３月から立川で飛行性能審査、６月からは浜松で爆撃装備の審査が行われた。
仕様的には中島機の方が流麗なデザインと機構的にも新しい試みが織り込まれていた。
実用比較審査の結果成績に甲乙つけがたく、審査部は先の競作であったキ-１８・キ-３３の件で三菱に負い目を持っており、その結果
両社のメンツを建てる形で 機体は三菱、発動機は中島ということで政治決着が計られた。
なお中島機は増加試作機に三菱製ハ-６発動機を搭載して２機製作したが、この機体はN-１９長距離通信機として民間転用が計られ同盟通信社にて使用された。なおこのシコリに懲りて以降競作は中止となった。（時局からもその余裕は無くなった）
政治決着の結果、三菱機に中島ハ-５発動機を装備したキ-２２の増加試作が改めて発令され、日華事変に実戦参加して更に改修を進め昭和１２年６月に制式採用（Ⅰ型）が決定して９７式重爆撃機となった。制式機では燃料タンク容量を1,840リットルから2,635リットルに増加したり発動機の排気管の発炎対策などに続き、尾部銃座の新設防弾タンク類の採用、酸素吸入装置や編隊用無線の装備に加え水平尾翼の面積増加などが行われた。さらに昭和１４年に性能向上の要求が出され、Ⅱ型では発動機が三菱製ハ-１０１に換装され側方銃なども追加装備された。
この９７式重爆撃機は日華事変中期から太平洋戦争全期間に渡って使用され、中国大陸から南方戦線フィリピン・マレー・蘭印での長距離爆撃だけではなく、物資輸送にも多く活躍し、後の１００式輸送機への転用に繋がった。製作機数はⅠ型が782機、Ⅱ型が1,282機、総計2,064機となっている。
一方、MC-２０旅客機は昭和１５年（１９４０年）９月に羽田で公開された。この機体のベースは９７式重爆撃機ではあるが、それに至る間に陸軍１００式輸送機がある。陸軍は９７式重爆の成功からこれを輸送機に改造する試作を昭和14年に発令した。即ち９７式重爆の胴体だけを輸送機として再設計したのが１００式輸送機（キ-５７）ある。飛行に係る翼などは全く同じであったため審査も順調に終了し制式採用となって兵員物資輸送の他に落下傘部隊専用の特殊装備（ラ装置と呼ばれた）が施された機体も製作され、製作数は507機に及んだ。
M-20は逓信省航空局の後押しで民間機転用のテストが行われていたが昭和１５年１２月には羽田を離陸後、千葉県姉ヶ崎の沖合いに墜落し航空局航空官や技師ら１３名全員が殉職する原因不明の事故を起こしている。しかし日華事変後期ころから国産の高性能旅客機として大日本航空、満州航空、中華航空で数多く使用された。イラストは大日本航空のMC-20-Ⅰ型「白根」である。また朝日新聞社も「朝雲」の愛称で内部に通信設備や写真現像室を設けた「空と飛ぶ編集室」として社有機として活用した。また読売や大毎新聞社もこぞって保有した。 |