全金属製、低翼単葉、引込脚などの新技術でプロベラ旅客機の革新が行われていた1930年代後半に登場したフランスを代表する旅客機である。
近代化の先端を切った米国のボーイング247やダグラスDC-1以降のアメリカ旅客機がいずれも双発になっていたのに比べると、3発形式はいかにも保守的である。これはヨーロッパには適当なエンジンがなかったことに加え、アメリカと違って辺境の植民地へ飛ぶ飛行コースが多かったことが、設計者やエアラインに3発に固執させることとなった。それでも戦前のフランスの最も優れた旅客輸送機である。
3発は双発に比べて、1エンジン停止時の上昇性能こそ優れていると言えるが、整備性が劣るし、空気力学的な効率も悪くなる。結果として、ダグラスDC-3とほぼ同じ大きさや重量の機体に、合計では15%も上回るパワーのエンジンを付けていながら、正常状態での速度や航続距離などの性能ではだいぶ下回ってしまった。
客室は主翼のキャリースルー構造が床面を横切るため(DC‐3では胴体を大くして平坦な床になっている)、その部分で前後に仕切られていて、前方が1+1列配置の6席、後方が2+1列の18席となっている。
大きな主車輪がエンジンナセルからはみ出しているのは、辺地の未舗装飛行場を考慮して低圧タイヤを使い、胴体着陸した時の安全性を配慮して、あえて半引込式にしたためだ。
エールフランスに採用されたドボアチンD338は、パリ〜ダカール(飛行艇による南大西洋横断線に接続)や、パリ〜中東〜インド〜ベトナムそして広州という路線に就航し、戦争を生き残った小数機が戦後もパリ〜ニース間で時折運航されていた。 |