930日 土曜日
昨晩は ハーツでのごたごたで疲れたせいか良く眠れた。
今朝
5時に目が覚めたが 外はまだ暗く ホテルの窓から見える空港はオレンジ色の街灯に照らし出され静寂そのものである。
ときおり車のライトが行き来するほかは 空港の機能はまだ活動を始めていない。
部屋の窓からガラス越しに見える日の出前の薄暗い景色は あまりにも静寂で これから僕がはじめようとする大陸横断ドライブに挑戦する自分自身の高ぶった気持ちとはなかなか結びつかない。
540分 白の綿パン ジーンズのシャツ 黒の薄手セーターにリュックを背負い出発である。

ハーツで借りた車は フォードのマーキュリー。
ライトブラウン走行11,000マイルのフロアーシフトATだ。
当初、レンタカーは日本で乗る機会の少ないフルサイズをレンタルしようと考えていたのだが 治安の悪い不案内な国を一人で旅行する場合には 目立たない車がベストである との先輩の教えに従ってミドルサイズに変更したのだ。



ホテルの玄関を出て 冷えきった外気を思いっきり胸に吸い込む
駐車係りに合図をおくると 昨晩預けたマーキュリーがエキゾーストから白い排気を
あげながら回送されてきた。

シートベルトを締め左ウインカーを出す。
静かにスロットルを踏みながらステアリングを左にきる。
夢にまでみた クロスカントリードライブの幕開けであった。


6
時。薄暗く通行量の少ないハイウエイ78号線を 右側通行に慣れるまでは制限速度
55マイル、そしてキープライトを守りながら走行を開始する。

早朝で 車も少ないインターステイツでは ルームミラーに写る後方から迫ってくる車のライトは左側の追い越し車線に変更したかと思うと すぐに僕の車の左側を通過し さらに右ウインカーを出して僕の車線前方に入りこみ みるみる橙いテールランプが遠ざかっていく。
時速80マイルはでているのだろうか。



ビルに囲まれた風景が 次第に田園風景へと変化するにつれ ニュージャージー州からペンシルベニア州へと入る。

西へ走る僕の車の後方から 大きな太陽が昇りはじめ 車のサイドミラーに眩いばかりに映しだされた。

ボンネットの先の道路に写し出される自分の車の大きな陰を追走する。

しだいに 車の流れに慣れてくるにつれ 左右を眺める余裕がでてきた。
道路沿いの風景もビルや家屋が少なくなり 都市の風景が変化して、 映画や写真で見たことのある田園風景が展開しはじめたのである。

とりあえず オハイオ州からインディアナ イリノイ ミズーリー各州を経てオクラホマ州を目指す予定だ。

しばらくして 予想ルートとは違う81号線に入ってしまいメリーランド州を通過 そしてウエストヴァージニア州に入っている。
予定の道路より南下していることに気がついた。
進路修復のための休憩が必要と考え 道路添いのマクドナルドで朝食兼昼食を摂ることにする。
時間は11時。 既に280マイル走行していた。


マクドナルドの駐車場に旧いフォードが駐車している。
現代を象徴する このお店で二人が朝食をとり帰宅するところなのであろうか、品のよい小柄な老夫婦であった。
 黒いカーデガンを羽織った少し猫背ぎみの奥様を車に乗せるときには ご主人が助手席側に回り込み しっかりとサポートしていた。

それにしても 隣に駐車してある 私がレンタルしているフォード・マーキュリーと性能を比較すれば天と地ほどのひらきがある。
時代を超越した新旧フォードの両車をみていると 時代の推移って何だろうと考えさせられてしまう。
隣のクラシックカーと比較した現代の車は 薄っぺらで 芸術性に欠け グリコのおまけのようになんの意味を持たない 家電製品と同じような単なる道具のようにみえてくる。 

クックックッ ボロッボローン。
 エンジンがかかり 小刻みに車体を震わせながら走り去っていく老夫婦の車を眺めながら タイムスリップした感に襲われた。

    
ここで 初めてセルフスタンドでガソリンを入れてみる。
11.236ガロン 13ドル70セントと表示されたのでレジのおばさんに ポンプ番号を告げて現金で支払う。ちゃんと できたぁ〜

赤枠の中は 左からRegular87オクタン価が1ガロン1.119ドル真ん中はMid Grade89オクタン価 1.219ドル
右側はSuper premium 93オクタン価 1.319ドル
日本と比較すると極端に安価だが ガソリンの品質はオクタン価から推測すると劣るようだ。
280マイル走行して11.2ガロン給油。
燃費は日本式で10.6Km/リットルである



馬を搬送している車
馬の尻尾がなんとも可愛い
ピックアップトラックを運転している人は カーボイハットをかぶったおじさんです


 


朝の出発時点に想定していた70号線のルートとは違っって南下しているが、 あまり細かいことにとらわれていては このさき神経を使いすぎてしまう。
どっちみち最終到着地はロサンジェルスなんだから ケ・セラ・セラ。 

このまま81号線を走行することにして ヴァージニア州からテネシー州に入り 夕方近くにインターステイツ40号線に合流した。

スーパーマーケットで当面の食料を調達する。
エビアンの飲料水 バドワイザーの缶ビールを各半ダース、リッツクラッカーとチーズ各1箱 しめて12.6ドル。
日本と比較すると嘘みたいな安さだ。


40号線のサービスエリアで 駐車中のトラックの運転手の了解を得て写真を撮らせてもらった。

ノックスヴィルまで40マイルの標識をみながら 今日は一日目なので 慣れない都市部より田舎のほうが安心だろうと考え EXT407で一般道路に降り 今夜の宿を探すことにした。
20マイル走り
Kodakという小さな街の小高い場所にある こ綺麗なモーテルにお世話になる
ここのオーナーは軍属で横須賀に駐留していたことがあるらしく 富士山とか神風タクシーとか 知る限りの日本のことを話かけてくれた。

 僕も初めての大陸横断ドライブでニューヨークからここまで一気に走ってきたことを話す。

時間は7時。日没まであとわずかである。
本日の走行距離700マイル(1,120Km)であった。




隣接するレストランから食事を終えてモーテルに帰ってくると 玄関に真っ赤なセダンのリヤグラスにJust Marriedと白く描かれた車で 18歳ぐらいの男の子と女の子がモーテルに入ってくるところであった。
なんと可愛らしい。 
今日は新婚さんと同じ屋根の下で就寝することにしよう。
 ハッピー 

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