What's New (Feb, 1996)



■1996年2月27日

 ベン・フォールズ・ファイヴのライヴ、行ってきました。2月25日、渋谷クワトロ。か っこよかったぁ。歌詞はランディ・ニューマン、メロディは中期ビートルズのころのポー ル・マッカートニーというか、トッド・ラングレンというか、編成は初期エルトン・ジョ ンみたいなピアノ・トリオ、音圧はニルヴァーナ……という、まじ、ごきげんなやつらで すが。例のデビュー・アルバムでの手触り通りの、近ごろ得がたいポップ&パンク野郎た ちでした。椅子をピアノに投げつけるわ、足で弾くわ、鍵盤めがけて飛びかかるわ。かと 思うと、見事なジャズ・ピアノを聞かせたり、もろに現代のランディ・ニューマンを思わ せる内省的な弾き語りを聞かせたり。ぐっときました。

 バンドもよかったよ。けっしてスクエアな演奏じゃないのだけれど、ドラムのダレルも ベースのロバートも、3人が一丸となって走ったりモタったり。ひとりの人間が気ままに 弾き語りを聞かせているみたいな、柔軟で表現力に満ちたバンド・サウンドだったと思う。 ひいき目に見すぎかもしんないけど(笑)。ベースのロバートが曲のパートごとにディス トーションかましたり、ピックで弾いたり、指で弾いたり、激しいソロを聞かせたり。ギ ターがいないぶんをベースで見事に補っている感じ。曲 目表を載せておきます。見に行けなかったファンの方はぜひチェックを。

 翌日インタビューもしました。次の次のミュージック・マガジンに載る予定なので楽し みにしててください。3人ともけっこうおしゃべりで、いろんな話が聞けました。彼ら、 ヴァージン系のインディ・レーベルからデビューしたんだけど、すでにエピックへの移籍 が決まってるそうで。セカンド・アルバムに向けて準備中だとか。とりあえずは同じフォ ーマットでやっていくそうなので楽しみです。いちばん印象深かったのは、ベン・フォー ルズがソングライティングの面で最初に大きな影響を受けたのがニール・セダカだってこ と。こいつ、わかってるじゃん(笑)。いろんなキャッチコピーが彼らの周辺には渦巻い ていたけど、ニール・セダカ・ミーツ・ニルヴァーナ、と。これでキマリかな。



■1996年2月21日

 泣きごと言ってもしょうがないんだけど。2月ってのは短くてね。おかげで普段の月よりも各出版社からの原稿の取りたてが厳しくて厳しくて。ワタシの楽しみであるところの、本ホームページの更新もままならない今日このごろです。

 だから、相変わらずバシバシ飛ばしたペースで新譜CD買ってるのに、全部レポートできません。まあ、いいや。テキトーに気に入ったものから順に紹介していきますね。今回の更新はその新譜CD紹介です。全部、ジャンル分けすればラップものなんだけど、近ごろはラップといえどけっこうな歌心に支えられたものが多くて。今回取り上げた3枚はみんなそういうやつです。いいよー、どれも。他にも、アメリカものではフュージーズとかマッド・スキルズとか、日本ものではスモール・サークル・オヴ・フレンズとか、いろいろ気に入ってるのはあるのになぁ。

 それはそうと。ちょっと前の話になりますが。例の、羽生VS谷川。あれ、どっちも羽織ハカマ姿で対戦してたじゃないすか。でも、どっちもけっこう似合ってなかったりして。その様子が面白かったな。伝統と格式の場だったりするんだろうから、当然あれでいいはずなんだけど。二人とも普段のスーツ姿とかのほうが全然自然。将棋連盟だか何だか知らないけど、そういう業界を仕切っているのはやっぱり年寄り連中で。あれこれ礼儀だ作法だ何だとうるさいのかなとか思いましたよ。でも、シーンを引っ張ってるのは、もうそんな旧時代の格式とかてんで関係なく、新しい方法論で将棋に取り組んでいる世代だったりする、と。この辺、音楽の業界とも見事に二重写しになる構造じゃない?



■1996年2月12日

 最近、ふたつほど興味深いコンサートにいきまして。ひとつは2月10日、日本武道館で行なわれた岡村靖幸のライヴ。ぼくは岡村ちゃんの大ファンっすから。基本的にはむちゃくちゃ楽しかったんだけど。反面、ちょっと思うところもあって。その辺のことを含めてレビューしてみました。ライヴを見終えて、あまり時を置かずに書いたものなので、客観性には乏しい文章かもしれません。ファンが読んだら怒っちゃうかな。まあ、こんなこと思ったやつもいるんだな、くらいの気分で目を通してやってください。これ、まじに愛情のほとばしりですから。え? 言い訳するな? すんません。

 で、もうひとつのほうは、その岡村ライヴのレビューでも触れた、加山雄三&ザ・ハイパー・ランチャーズ。2月7日、銀座のケネディハウスで見てきました。山下達郎ご夫妻とご一緒させていただいたんだけど。去年、まりやさんが見て感激したってことで。その言葉は間違いない、もうとんでもなくかっこいい若大将がそこにいたのでありました。ワイルドワンズの島さんや植田さんを含むハイパー・ランチャーズを率いて、特注のモズライト・ギター“加山雄三モデル”を抱えた加山さんが、往年のベンチャーズ・ナンバーのフル・コピーから、懐かしいヒット曲、カントリーのカヴァーなどを存分に披露。すごかったなぁ。90年代の手触りはかけらもないんだけど、邪気のない、本当に音楽を楽しんでいる姿には、まじ、心を打たれましたぜ。ベンチャーズ・ナンバーに関しても、もはや本物のベンチャーズの来日公演に行くより、こっちのほうが断然、往年のベンチャーズ・サウンドを再現しているって感じ。

 あと、「フォー・ザ・グッド・タイムズ」みたいなバラード曲はもちろん、「リップ・イット・アップ」みたいなロックンロール曲のカヴァーでも、加山さん、英語の歌詞ちゃんと歌ってるんだよねー。発音もばっちりで。意味もちゃんと把握して。当たり前のことだけど、そんな当たり前のことができている日本人シンガーなんて、果たして10人いるんだろうか。特にロックンロールの歌詞とか、みんなあまりにもテキトーだもんね。オムニバス形式のコンサートのラストとかによく、出演者全員で「ジョニー・B・グッド」やったりすることがあるけど、そういうとき、ちゃんとまともに歌えている日本人シンガー、いた試しがないもん。

 そうそう。ステージ途中で達郎さんも呼び出されて、ドラムを叩かされてました。ホントに打ち合わせなし、完全飛び入り状態でベンチャーズの「ドライビング・ギター」を演奏。ごっきげんな演奏で、もう、なんだかとてつもなく得をした気分の一夜でした。次回は3月13日だとか。予約だ予約!



■1996年2月5日

 最近、相次いで“健太さんはもうオールディーズ番組とかやらないんですか?”というメールを何通かいただきまして。やらないつもりはないんだけど、なかなか近ごろのFM局の体制だと、ね。ハヤリもののJポップとやらを中心に据えた編成でないと大変らしくて。あまりわがままな番組企画は通りにくい状態なのですが。

 でも、めでたくこの4月からオールディーズ番組を復活させることができそうな感じ。かつて『サウンド・ストリート』の後を受けてスタートした『ミュージック・シティ』って番組を担当していたころ(もう7年くらい前だなぁ)、オールディーズをかけまくっていまして。あのときと同じNHK−FMで。毎週月曜日の午後4時から1時間45分、オールディーズやります。番組の構成とかはまだ具体的に考えてないのですが、基本的には『ミュージック・シティ』のときと同じ感じでいくつもり。最新のヒットチャートから消えたら、その曲もすでにオールディーズ……という路線は変えません。幅広いよー(笑)。リクエストもありなので、そのうちEメールでのリクエストなんかも募集しますね。そのときはよろしくっ。

 メールといえば、びっくりしちゃったんだけど、先日、テキサス州ラボックのインターネット・ユーザーの方からメールもらっちゃいましたよ。ラボックといえばバディ・ホリーの故郷なんだけど。バディ・ホリーへのトリビュート盤のレビューを載せたでしょ? で、その人のマシンじゃ日本語は当然読めないんだけど、ジャケット写真と簡単な英文が載っていたので、詳しい内容を知りたい、と。こういうとんでもないコミュニケーションがあったりするからインターネットは面白いっすね。英語ですらすら文章が書けるようになりたいなぁ。勉強し直しかぁ?





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