for What's In? Magazine (Revised)
生前、リンダが強く望んでいたというポールのロックンロール・アルバムが登場した。リンダ他界後、ポール名義ではこれが初リリースになる。新曲は3曲のみ。あとはすべてポールが愛した50年代ロックンロールの雨アラレだ。もっと新曲を……という声も聞こえてきそうだが、長年連れ添った最愛のパートナーを失ったショックを癒す再起作としては絶好の企画だろう。
ポールがルーツ・ロックンロールに回帰することは何度かあった。が、これまでは趣味性が強かったというか。渋かったというか。アコースティックな響きを大事にするためか、あえてエレクトリック楽器の音圧を強調することなく、ひどくデッド/ドライな音像に仕上げられていることが多かった。そのため、マニアにはたまらないものである反面、一般的な耳にはどこかチープな、遊びっぽいものとして届いていたんじゃないかと思う。
が、デイヴ・ギルモアやイアン・ペイス、ミック・グリーンらをバックに従え、バンドっぽい勢いを大切にしながらなんと1週間で仕上げられたという本盤は一般的にもわかりやすい音圧とグルーヴ満載。「ビートルズがやっていたのと全く同じようにレコーディングした」というポールの言葉に嘘はない。
アルバムのリリースに先駆けてインターネットで先行公開されていたエルヴィス・プレスリーの「アイ・ガット・スタング」以下、ラストまでの4曲には特に腰が抜けた。ポールならではの強靱なノドを駆使したリトル・リチャード唱法の連発だもの。見事なカントリー・ロックへと変身したチャック・ベリー作品「ブラウン・アイド・ハンサム・マン」も最高!
前回のアレックス・チルトンに続き、またまたカヴァー・アルバムの傑作登場って感じ。つーか、アスリープ、アレックス・チルトン、ポール……と、ここんとこカヴァー・アルバム連発でした。ちなみに、インタビューCD付き限定リリースもあります。
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