1999.4.17

It Happened
One Bite

Dan Hicks
(Warner Bros./WEA Japan)


for Music Magazine (revised)

 ついに出た。ようやく出た。ベイエリアきっての粋人、ダン・ヒックスが78年にリリースした幻のアニメ・サントラ『イット・ハプンド・ワン・バイト』の国内初登場・世界初CD化だ。

 60年代末からダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックスを率いて活動していたダンさんだったけれど、持ち前の気まぐれが炸裂したか、73年の4枚目『ラスト・トレイン・トゥ・ヒックスヴィル』を最後に所属していたブルーサム・レコードとの契約を破棄。実際にはその後もホット・リックスとしてのライヴは続いていたらしいが、当然レコード発売はなし。どうなっちゃってるんだろうなぁ、と遠く海の彼方で思っていたところへ前触れなく登場したのが本盤だった。

 実際に録音されたのは75年。マリアン・プライス、ジョン・ガートン、シド・ペイジといったホット・リックス黄金期のメンバーも参加しているし、プロデューサーもホット・リックス時代からの付き合いになるトミー・リピューマだし。むしろホット・リックスの5枚目のアルバムとして楽しんだほうがしっくりくる作品だった。

 サントラ盤だけに歌詞のない曲もある。アニメの登場キャラクターを想定して書かれたらしき曲もある。が、メロディもアレンジも歌唱も演奏も、すべてが見事な完成度。オリジナル・アルバムとしての存在感たっぷりだ。ジャズ、カントリー、フォーク、ラテンなどを縦横に行ったり来たり。マリア・マルダー、ジム・クエスキン、レオン・レッドボーン、アスリープ・アット・ザ・ホイールらとも共通するグッド・タイム・ミュージック感覚をよりエキセントリックに研ぎ澄ましたダン・ヒックス・ワールドを堪能できる。

 まずこいつでダン・ヒックスの魅力にハマっていただいて。以降は、輸入盤で出ているダン・ヒックス&ヒズ・ホットリックスのブルーサム時代の3枚のオリジナル・アルバムを聞いてもらって。この種のグッド・タイム・ミュージック系の支持の輪をぐいぐい広げようじゃありませんか。

 スクァーレル・ナット・ジッパーズとか、今回レビューでも取り上げたアサイラム・ストリート・スパンカーズとか、デヴィル・イン・ア・ウッドパイルとか、ホット・クラブ・オヴ・カウタウンとか、その道の新鋭もいろいろ出てきたし。近ごろ、ブライアン・セッツァーあたりのネオ・スウィングものも人気あるし。もう一息ですよ。


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