1999.1.21

Devil in a Woodpile
Devil in a Woodpile
(Bloodshot)

 なんかこいつらブルース・ハープの教則レコードとか出してたって話だけれど。とにかく自らの単独名義ではこれがデビュー・アルバム。すげえ気持ち悪いジャケットだけれど、ここに描かれているウォッシュボード、ドブロ、ウッド・ベースといった楽器が大活躍するブルース/ロカビリー/ジャグ・バンド/R&B/カントリー・バンド。4人組で、チューバがいるのがミソか。以前紹介したバッド・リヴァーズと近いセンだけれど、こっちのほうがより一途かも。

 すごくいいです。サニー・ボーイ・ウィリアムソン、ビッグ・ビル・ブルーンジー、レイ・チャールズなどのカヴァーを中心に、適所にオリジナル曲を配した構成。ほぼ全曲を一発録りしたという演奏力も見事だし。アメリカにはすごい人材がまだまだいるんだなぁ。



By Your Side
Black Crowes
(American/Columbia)

 メンバー・チェンジしての心機一転盤。ここんとこ数作はどうもしっくり聞けなかったぼくだけれど、今回はイケました。

 以前、どこかの雑誌のレビューで書いたことがあるのだけれど。ぼくはこいつらのファーストが大好きだった。エルモア・ジェイムズの曲名をアルバム・タイトルに冠したり、オーティス・レディングをカヴァーしたり。クリスのヴォーカルの薄さは気になったけど、マニアックなはしゃぎぶりが楽しかった。だけど、あるとき何の拍子か大当たりしちゃって。バカ売れしたがゆえ、セカンド以降アメリカを代表するバンドとして本気にならざるをえなかったというか。そういう皮肉な歩みがなんだか息苦しかった。

 でも、そうしたいわれのない期待感もだいぶ薄らいできて。今回は初期の感触が戻ってきている。ニューヨーク録音ながら、70年代の音が好きなアトランタのローカル・バンドって佇まいが聞き取れて、なんだかうれしい。



Los Super Seven
Los Super Seven
(RCA)

 これはかなり前、去年の9月か10月ごろに入手した盤。つい紹介しそびれてました。

 ただ、先日、グラミー賞のノミネートを眺めていたら最優秀メキシカン/アメリカン部門にこいつが入っていたもんで。いい機会かなと、今さらながらのご紹介です。

 一言で言えば、テックス・メックス/チカーノ/コンフント系のオールスター・セッション盤。ロス・ロボスのデイヴィッド・ヒダルゴとセサル・ロサスを筆頭に、リック・トレヴィノ、ジョー・イーライ、フラコ・ヒメネス、フレディ・フェンダー、ルベン・ラモスというごきげんな7人が勢揃いして、これまたごきげんなスティーヴ・バーリンのプロデュースのもと、自らのルーツに最大限の敬意を表した音楽を聞かせてくれる。

 参加メンバーそれぞれ、微妙にルーツからの影響の受け方が違うってところがじっくり味わえて楽しい。正統に伝統を継承するフラコ・ヒメネスや、こてこてのフレディ・フェンダーがいる一方、イーストLA系のロス・ロボス組がいたり、ラボック〜オースティン系のテキサス組であるジョー・イーライあたりがいたり。

 ほぼすべてスペイン語で歌われているけれど、ジョー・イーライが歌うウディ・ガスリー作品と、ロス・ロボスがボブ・ディランとメキシコ・ツアーしたときに作ったというオリジナル曲では英語も混じる。こういう楽曲がすっと組み込まれているところにも、何やら深いものを感じさせるなぁ。



Bring It On
Gomez
(Virgin)

 で、こっちはさらに古い盤で。確か去年の4月ごろに日本盤も出ているんじゃなかったかな。イギリスのゴメスってバンド。イギリスものなんで、ぼくはまったくノーマークのまま過ごしていたんだけど、萩原家がもっとも信頼を置いている雑誌『MOJO』12月号の表紙になっていて。例のジョン・ランドーの名言をパロディにした“ぼくはロックンロールの未来を見た。ロックンロールの未来はユーフォニウムを吹いていた”といういかしたキャッチコピーまで載っていて。

 『MOJO』がここまで盛り上がっているなら聞かねば……と、むちゃくちゃ遅ればせながら買ってみました。イギリスものを買ったの、久々ですよ。もちろんこいつら、ブリット・ポップでもビッグ・ビートでもなくて。要するに、ザ・バンドとかリトル・フィートとかJ・J・ケイルとかグレイトフル・デッドとかCSN&Yとかティム・バックリーとかフレッド・ニールとかが好きな、もう名盤探検隊みたいなやつらで。でも、音の処理はけっして“もろ”にはなっていなくて。そういうアメリカのルーツ・ロックっぽいニュアンスの曲を、たとえばモリッシーとか、その辺の人がやっているかのような音像とでも言えばいいのかな。コーラスが中期ビートルズっぽかったりする瞬間もあるし。まじ、ユーフォニウム担当のメンバーもいるし(笑)。

 いい曲多いです。アメリカもののように、ぶわっとヴォーカルが前面に出てきてはいないのだけれど、ヴォーカルの人の声、けっこうぐっときます。スティーヴ・ウィンウッドとかヴァン・モリソンに通じる何かがあるような気がする。ものすごく好意的な耳で聞けば、ね(笑)。




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