陸奥へのドライブ(かつて公開していた旅行記)

東北道 青森 十和田湖


陸奥へのドライブ

連休は車で青森まで行き到着した日の午後は友人K氏と弘前に行った。これは、その翌日の話しである。

八甲田・奥入瀬

屋根を叩く雨音で目を覚ます。折角人が青森くんだりまで来たのに、お天道様は冷酷である。

旅行に出る前は、下北半島の方向に行こうということでK氏と申し合わせていたのだが、この天候では良い見晴らしなどを望めまい。遅れて起きてきたK氏と相談、何かいい代替案があるかどうか話し合った結果、八甲田・十和田方向に行先を変更した。

朝9時半、観光には随分遅い出発である。しかしどうにも眠い。昨日の長距離ドライブの疲れが未だ残っているようだ。遠出を中止してこのまま家まで戻っていいかK氏に尋ねるが、0.3秒で却下された。仕方がないので、コンビニに行ってリゲインを飲み、元気をつける。

八甲田の残雪

青森から八甲田山・十和田湖といった観光地を抜ける国道103号線を走る。青森市街を抜けてしばらく行くと、突然大きく曲がって山道に入る。つづら折りを抜けて尾根に出てしばらく走ると、すぐふもとでは桜が満開だというのにに雪が残っている。萱野茶屋のあたりまで来ると一面真っ白な雪原になった。

まっすぐ行くと八甲田ロープウェー・酸ヶ湯温泉方向に出るが、連休初日ということもあって道が混んできた。途中で左折して林道に入る。残雪は堆く、1メートルも積もっている。それらから湯気みたいなものが立ち昇っている。当然新緑などその気配すらない。

林道の突き当たりが銅像茶屋。ここは、明治時代に起きた軍隊遭難事件の現場であり、「雪中行軍遭難記念像」が立てられている。駐車場から銅像までは距離があり、普段なら遊歩道になっているが、観光シーズンが始まったばかりだが、雪が積もっている。足跡を頼りに歩くが、途中でそれらが分かれていたりするのでなかなか厄介だ。歩いているこちらまで遭難しそうだ。所々、道標の代わりに木々の枝に縛ってある細いリボンが随分頼もしく見える。

空は全く晴れ間を見せないどころか、ガスまで出てきた。上越地方の真冬のような天候・風景であり、スキー場に来た錯覚に陥る。

車のヘッドライトを付け、警笛を鳴らしながらしばらく走ると田代平。ここは八甲田の豊富な高山植物を見ることができる・・・はずなのだが、残雪堆いこの季節、それらは見る影もない。遠くに八甲田の稜線が伸び、ふもとはただ雪原が広がるだけであった。そして空気が湿っぽい。

さらなる山奥へと車を進めるが、残念ながら進むにつれ残雪が少なくなってくる。今回のドライブでは、奥入瀬から十和田湖が最大の見せ場だと思っていたのだが、そこに至る道筋ににかなり大きな見せ場があったように思えてならない。車を進めてゆくと、あれ程までに積もっていた残雪を全く見かけなくなった。 

途中の蔦温泉で車を停める。カウンターで入湯料400円を払って、風呂場に向かう。天井が高いひなびた木造の建物、同じく木の浴槽、天井近くに設けられた窓の外は降りしきる雨、人が少なかったこともあり、あたかも山奥の湯治場の一軒宿の湯に浸かっているようだ。心が安らぐ。

ここで昼食を食べる。食欲のあまりない筆者はカレーライスで済ませるが、K氏は1000円の松花堂弁当を注文。メニューを見ると最初に5000円の定食が載っており、一瞬ギョッとする。カレーライスのサラダに付いているオレンジを見て、K氏は「こういう時こそ県産品のリンゴを添えなくちゃ」と言っていたが、リンゴは剥いて放っておくとすぐに変色してしまうので、そのまま客に出すのは無理があろう。現にK氏の弁当に入っていたリンゴは、甘露煮にしたものだった。

 

清冽なる奥入瀬

十和田湖温泉郷で右折、奥入瀬川沿いを走る国道に入る。

奥入瀬川はか細い小川でしかないのに、水深327mにもなる十和田湖から流れ出る唯一の河川(こういうのに筆者弱いんです)、原生林の中を流れる「奥入瀬渓谷」としてあまりにも有名である。

近くにあった旅館街もすぐに途切れ、目に入るものは原生林と小川とその中を走る道路のみになる。もともと陽が照っていないうえに、正午を回ったこともあってどことなく薄暗い。奥入瀬川の水音が聞こえてくると、間もなく石ヶ戸に到着。ここは新築の休憩所・売店などが整備されている。

ここで車を止め、休憩所に立ち寄った後、渓流のふもとに降りる。雨は止んだが、水蒸気をたっぷり含んだ空気が木々に染み渡っている。石もしっとりと濡れていて、指をあてがえばアイスのように柔らかく溶けそうである。あたり一体の景色が、水蒸気によって一体化している。天気の悪い時でなければこんな形式は楽しめない。

しかし、奥入瀬の風土は厳しい。なぎ倒された枝、渓流の中に落ちた枝も多数あるが、水が冷たいためだろうか腐敗して地に帰ることを許されないまま、その姿をさらしている。

奥入瀬渓流一体は、国立公園の中でも特に厳しい規制が敷かれているため、人工の構造物はあまり見かけない。その中で、草木が根を張っていない新しい盛土・斜面に突然出会う。近くには工事現場のような囲いも設けられている。昨年奥入瀬で発生した大規模な土砂崩れの形跡に違いない。

清冽に流れ落ちる渓流を右に左に見ながら車を進める。いや、正確には車なんか進めたくないのだが、周りの交通のことを考えるそうもいかない。おかげで、見ごたえのある景色をいくつもやり過ごしてきた気持ちになる。今度来るときは絶対渓流全体を歩き通そう。車で来るところではない。

奥入瀬渓流の最上流である銚子大滝に着く。ここは奥入瀬川がほぼ垂直な滝で下っており、そのため魚などがここより上流の十和田湖に遡上できなかった、という。

 

車は十和田湖に着く。身を削るほど清冽な奥入瀬と比べると、のどかな景色である。しかし、それでも展望台の隣の崖が垂直に切り立っていたりする。途中の休屋で車を停めて、砂浜をしばしの散策。キリタンポのみそ焼きがおいしかった。

さて青森に戻ろう。秋田県に入り、十和田湖を南から望む発荷峠から小坂・大館に直通する樹海ラインに入る。高い木は余り栄えていない。厚い雲が垂れこめていることもあって、景色もあんまりよろしくない。ひたすら小坂まで下ったような気がする。小坂から先は高速道路で青森まで出てしまった。

 

K氏とはときどき至極まじめな話から鉄道趣味のどうでもいいような話まで、いろいろなテーマを織り交ぜて電話で何時間も議論をしている。昨晩も取り留めの無い話で遅くまで盛り上がった。さて今夜はどんな議論になるのだろうか。しかし、K氏宅で夕食をご馳走になった後、事もあろうにK氏は気持ちのよさそうな顔で寝入ってしまった。

 


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更新日 2005.5.24/無断転載および無断引用はご遠慮ください/Link Free/・・・
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