Last UpDate (09/04/25)
満開に花を咲かせた桜舞い散る丘の上。
宙を舞う花びらが音もなく切断される。斬撃を後から追いかけてきた風によって更に舞う。
周囲に響く金属音は全て、打ち合いの後に発生している。
音よりも早い、無数の打ち合い。
その中心にいるのは青と白の一組の男女。
青一色の服を纏い、柄に白と黒の翼をあしらった細身の剣で構える男の名はマルス。
整った顔立ちに切れ長な黒の瞳には強い意志の光りが宿り、相手を射貫くように見据える。
その長身とバランスの良い体は、積み重ねた修練を十分に発揮できるバネと力を持っていた。
対する白の女はガイア。
誰もが羨むような美しい女性のラインを経帷子で包み隠し、流れるような動きでマルスの攻撃を受け流す。
刃から長い柄に至まで全てが「白」で出来た槍から繰り出される攻撃は全てに無駄が無く、確実に彼を追い詰めて行く。
腰まで伸びた、黒くしなやかな髪の動きすら、彼女の意志が宿っているかの様だ。
それでもマルスは諦めず彼女の動きに必死に食らいついて行く。
一瞬でも隙を見せれば、直ぐに呑まれて槍がのど元に突きつけられるだろう。
日頃の研鑽と修行の成果を見せるためにも、簡単にやられるわけにはいかない。
開始から徐々に上がってゆく速さと、一撃一撃に込められた意思を読み取るのが精一杯でいつ負けてもおかしくはない。
フェイント等の、幾重にも張り巡らされた罠の様な攻撃の数々。
経験と知識をフル回転させそれらを見破り、なおかつ相手への一撃を繰り出す。
まさに心・技・体、すべてを使った攻防。一瞬の油断が勝敗を分ける。 しかし、勝負はあっけなく終わりを迎えた。
「よくここまで腕をあげたな、マルス」
打ち合いの、ほんの一瞬だけできた隙にガイアがポツリと笑みとともにつぶやく。 彼女の言葉とその微笑に、一瞬の隙が決定的なものへと変わる。
「だが、やはり詰めが甘いな」
彼がそれに気がつく前に、槍の切っ先がの喉元で止められていた。
「ガイア、今のはちょっとずるくないか?」
小さくため息をつきながらおどけてみせる。
「いや、お前が腕を上げたことが嬉しくてつい、な?」
いたずらっぽく肩をすくめる。そう言われてしまえば何も言えない。 いや、彼女の仕草に見とれてしまったのかもしれない。
「とりあえずお前が修練を怠っていないようで安心した。剣を仕舞え。花見の続きをしよう」
そういって微笑む彼女はやはり美しく、花よりも何よりも見とれてしまうのだった。
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