おうしゅうはるか やぶにらみけいかん
みずのかたちへん
欧州悠々 藪睨景観
水象編 １４
第４回 1995年欧州農村環境整備視察からの報告
／環境スコープ：景象探訪 野崎悠子
「はじめに」 の章から
1996年元旦は思わぬ出色なテレビ番組を堪能して始まった。このところ予定表
もあらばこそ、次々と際限の無い割り込み作業に追われ通しで、ゆっくりとくつ
ろいで、テレビを見る時間などなかったせいもある。はからずもふと目に入った
見覚えのある画面はＮＨＫスペシャル番組「生命40億年はるかな旅」。そして、
「ワトソンが語る水の星・地球」次に「アフリカ・ザイール謎の類人猿ボノボ」。
この、人類の進化から環境への適応をほどいた連続再放送番組は、今日の環境の
多面性を丁寧に追いかけ、今改めて考えるひとときを、私にも与えてくれた。
鮮やかな青い地球の姿を、電子の映像で茶の間に持込み「生態系」という学究的
領域まで真摯に論じあうなど、ふと思い返してみても、ほんの少し前までは現実
離れの笑い話の種になりこそすれ、まじめな会話にはなり得なかったことだった。
「環境」とか「環境の形成」などの論議は専門的な研究の対象で片付けていた。
しかし昨今、世の中の、ことに環境を認識するレベルは急速に変わりつつあると
誰しも実感しているだろう。
日々の暮らし、場所、習慣、様々に係わりあう環境の「要素」を見つめたとき
に、私たちはどのように、それらを読み取りながら理解しようとしているのか。
それは、農村という環境に於いても埒外ではない。視点の持ち方、決め方によっ
て対象が見えたり隠れたりもすれば、また歪みもしてくる。このところの出来事、
個人、家庭、地域、国々、様々な場面、展開した施策、多発する事故、思いもか
けなかった影響など、私たちは不用意に繋ぎ、引き出してしまったアクシデント
にこと欠かない。「農村環境整備の在り方・求め方」について、いよいよ真摯に
模索することが要求され、特定された道筋だけでなく、むしろ日常のレベルから
の目線で、方向付けをする必要性を感じてきている。それは大変な社会的変貌を
示唆するものであり、吟味をする読み手の資質、さらにまた、その姿勢の保ち方
によって、返る答えが大きく異なってくることも、私たちは既に気付いているの
だから。
さて昨年、農村環境整備センターから「第三回の海外視察に出向きませんか」
とのこと。久しぶりにまた欧州の空気に触れられる機会とは、まことに時宜を得
た嬉しいお誘いとばかりに気軽く受け入れたが、場に臨み最適の取材を果たすに
は、いささか準備不足、折角の機会を充実させられずに終わったのは、大変残念
に思うことしきりである。昨今は、環境問題、整備事業等に対する関心が深まり、
海外視察が各機関で様々に企画され、視察先も重なり合い、報告も多数提示され
ている。従って今回の視察報告は、その状況も踏まえねばならない。情報量の少
なかった時に僅かなニュースでも知り得ればという程度では意味がないのだ。
この報告書に期待される内容は何か、そしてどのような表現が可能か。ここに
報告するスコープの一篇は、現地で撮った３千余枚のフォトから「水のかたち」
をキーにピックアップし編集したものである。ここには、掲載できなかったが、
視察先（英・独・瑞・仏）に於ける魅力ある特別レクチュァーの記録も併せて、
前述のような意味で、現地がそこに至るまでに辿った経緯かつ関係者の思い入れ
をも含め、環境整備の複雑さを「一瞬の通りがかりでからではなく、ゆっくりと
確かめ、深かめていきたいとの独自なプロットから、この編集を試みた。蓄積し、
考え合わせ、多面的に繋いでいくことへ、共感を得られたならば誠に嬉しい。
これを機に、更に視点を深め合える活発な出会いをと願って、一先ずこの章を
結ぶ。
この「環境スコープ：景象探訪」は、（社）農村環境整備センター企画による欧州に於ける
農村環境整備事業：第４回視察（1995年８月26日から９月８日）報告書に寄稿したものである。
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