おうしゅうはるか やぶにらみけいかん
みずのかたちへん
欧州悠々 藪睨景観
水象編 15
第4回 1995年欧州農村環境整備視察からの報告
/環境スコープ:景象探訪 野崎悠子
「おわりに」 の章から
かわ みず たど やぶにら かんきょう な ま
はいかい
川やなぎ 水を辿りて 薮睨み。 感興も 綯い交ぜなりき 徘徊に。
バイエルン州の河川緑地の水管理と、チューリッヒの浄水施設におけるゼミは、
近年の気象状況、洪水、渇水続きの日常的断水、その他、日本の状況を投影して、
一層の関心を集めたところだった。
近自然工法研究会についての報告が、我々の帰国から程なく、スイスとドイツ
日本の専門家たちで組織する研究会で開催された。視察を含む講演会や討論会が
10月16日から27日まで、チューリッヒ州立大学のイルヘル分校を主会場に催され
たという。この記事は中部地区では、中日新聞社会部・茂原恭三氏の「人と自然
にやさしい川を・スイスの近自然工法を見る」として、その同行記が、11月14日
から3回にわたり掲載されていた。1987年を端緒に、自然と環境の係わりを軸に
河川の新しい洪水対策を推進してきた智恵に、ようやく大きな関心が集まり各地
での適用援用が進行している。ちなみに、日本での工法適用第一号とされている
豊田市の加納川の事例は、バイエルンでも紹介され、関係者に於いては既に広く
周知のことである。
英国のグランドワーク、グリーンツーリズム、ナショナルトラスト等について
は、小山善彦氏からストラスフォード アポン
エイボンで直接、解説を受けたが、
これらの関係資料は最近レポートや書籍等多数著されているので、時間をかけて
照らしてみたい。帰国後に早速、小山善彦氏と、山崎光博・大島順子さん共著に
よる「グリーンツーリズム」(家の光出版)を手にした。
クラインガルテンは、従来は単に「市民農園」とだけ訳されることに何の躊躇
もなかったのだが、今回の現地視察で、発端のシュレーバーコンセプトを聞き、
実際の運用、活動状況を垣間見て、概念的な解釈と大きく異なる実際の存在との
差異を知ることが出来たのは収穫であった。
リヨン市のプレゼンテーションで終始語られていたのは、分散化されたことに
よる行政のディメリットの改善をどう再構築したかであった。不備の構造を洗い
だし、広域の地区再編成から行政改革を順次図っていく。掲げたグランドリヨン
の名乗りを、名実ともに果たしていこうとする当事者の熱気をみた。CI計画、
コミュニティー・アーバン・リヨンを示すサイン、赤・青・黄のシンボルカラー
に委ねるその気概の根底には「パリに追い付き、追い越せ」があるのだ。
通訳のこと
前述の内容にもかかわることだが、待ち受けた現地の通訳諸氏の熱のこもった
通訳は、予期以上のもので大変幸せだった。ロンドンの莇さんは、車中から頻繁
に視る建築のクリーニング事業や草原に生息する衝動物の話題など、市民の視点
で小気味よい口調で生き生きと。ミュンヘンで迎え役の沖縄出身カラットさんの
軽妙なガイドに始まり、若き女性通訳の高杉さん、少々語尾が聞きにくかったけ
れど、よくこなされ、その見識にも共鳴。チューリッヒの
OIKAWA 氏は、地理、
歴史、民族、生態系など、大変な博識をタイムリーなポイントで丁寧に解いてく
れた。リヨンでは、在住日本人が少ない中での山本さん、元気な語り口で難しい
専門用語に汗をかき、ご苦労でした。パリの語り部、高綱節の魅力は圧巻。残念
にもテープ不足。精一杯録音した通訳の内容、案内の箇所を何度も聞き取りなが
ら、ようやくワープロに全て収めた次第であった。
この「環境スコープ:景象探訪」は、
(社)農村環境整備センター企画による欧州に於ける
農村環境整備事業:第4回視察(1995年8月26日から9月8日)報告書
に寄稿したものである。
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