好き好き大好きっ

2009.2.16.mon (パーマリンク)

[エロゲ][萌え]
オタク文化の本質は「引力」にある

  売れるエロゲーは『ユーザーが参加する』 (緑玉板2.0)

 ちょっと懐かしい時代の話が。いわゆる葉鍵と呼ばれた二次創作文化圏の発祥は、それこそ自分のまさに最も多感な時期に体験できただけあって非常に印象深いわけですが、ああいう空気や空間はどうやって作り出せたのか。その要素について語りだせば、それこそ強い思い入れもある分、キリのない話になりそうなので、その要点を端的にあげるとすれば、「入り込みやすさ」と、「なんとなく、その輪の中に入りたくなる引力」っていうのが大きかったのかな、と。

 TYPE-MOON、ひぐらし関係なんて、まさにその「輪の中に入りたくなる引力」っていうのが、そのまんま作品をプレイしたときに感じる魅力の本質の中に含まれていますよね。あと、同人という「なんとなく心地の良い空間」に存在していたことも当然影響してるでしょう。
 いずれにせよ、それをプレイしているときだけ楽しめて、それで終りっていう「消費型」の作品だと、こういう萌え文化のムーブメントにはなりにくいんですよね。ある意味では作品としての質や面白さ以上に大事な、「その作品の空気を楽し続けられる空間・集団」が形成しにくくなるので。もちろん、その作品の面白さが際立っていれば、それを語り合いたいって人の集いは必ず生じるわけですけれど、やはりそれだけでは、空間・集団を構成する引力としては弱い……っていうか、一過性になってしまうんですよねどうしても。

 オタク、特に自分のような萌えオタ(←実質的な定義からはちょっと外れるかもですが)というのは、優れた作品を楽しみたいという以上に、好きな作品やキャラを愛し続けたい、楽しみ続けたいってモチベーションこそが一番根っ子にあるわけなんですよね。だからこういう、「楽しみ続けられる空間・集団」を上手に作ってくれる作品というのは、その作品の持つクオリティ以上に重要……というか、「ありがたいこと」なんですよ。俺たち的には。
 そういう意味においては、アーケード以来の『アイドルマスター』なんかは、実に見事にその空間を維持し続けてくれているなあ……と、感心するばかりです。一ファンとして嬉しく思うとともに。本編を追っかけるプレイヤー=プロデューサーとしての意欲を維持し続けてくれるための仕掛け(L4UやPSP版、そしてDLC)も巧みですし、それに加えてニコニコ動画でのムーブメントも、あれはあれで一つの「参加型」な楽しみを与えてくれるので、ますます入り込むための入り口が多くなっている、と。

 ただ、そういうアイドルマスターのような動きって、なにかと規模が大きくなるので、エロゲメーカーにはなかなかやろうと思ってもできないところがありますからね。そうなるとむしろ、「同人」という、参加障壁が低くて、かつ安定した土壌のあるところの方がやりやすい部分があるぐらいで、商業エロゲーとして、そういうムーブメントを引き起こすのは、なかなかに難しい話なんじゃないかと思うわけですよ。
 最初に例に挙げた葉鍵の頃は、まだそういう空間・集団というものが世の中にはなくて、しかもタイムリーなことに、インターネットが普及し始めてきたという、ネット文化圏のフロンティア時代だったんですよね。そういう意味では、あの時期に生まれるべくして生まれて、あの時期にしか生まれ得なかったムーブメントだったのかも……って思ってしまいます。
 つまり何が言いたいのかというと、今の商業エロゲー市場は、葉鍵や同人ヒット作、あるいはアイドルマスターのような引力を持つ「その作品の空気を楽し続けられる空間・集団」を作り出すのは難しいフェイズに入ってしまっているのではないかと。作品としては、どんどん優れたものが出てきているんですが、しかしながら、それを享受する消費者の、オタ的娯楽を享受するスタイルが細分化・高度化しすぎてしまっていて、引力を形成できず、どんどんペースの速い消費型市場に移行してしまっている、という気がするのです。
 「引力」作り出すには、コンシューマーメーカーのような企業力で継続的な展開を行うか(もちろんファンの需要があることが前提なので、完全なトップダウン型ではないですけれど)、同人の中で極めて小さな格から作り出すか(当然、それが大きくなる保障などないですが。同人市場って狭いので、あまりそういうのを狙いすぎると、あっという間に土が痩せてしまうって心配も)、そういった方法でないと難しい時期になっているんじゃないかなあ……と、ここ数年とみに感じております。

 もちろん、一人のオタとしては、そんな理屈などどうでも良く、自分が好きになった作品をひたすら好きであり続ければそれでいいだろって風にも思うんですが、やはり自分一人の思いだけでは、なかなかそれを維持するというのは難しいわけで。
 たとえば、俺がこういうサイトをやっているのだって、その一番大きなモチベーションになっているのは、自分にとって好ましい方向性を引力を持つ空間・集団を維持していたいって思いですからね。要するに、アイドルマスターやストライクウィッチーズなどについての楽しさを共有し合う場が欲しいわけなんですよ。もちろんべびプリもです。

 とまあ、オタク文化の本質は「引力」にある、という結論を出して、この取り止めのないお話にケリをつけようかと。

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