「糞ゲー」という言葉が現れて以来、ゲーム業界では「…ゲー」というACT・STG・RPG・ADVといったそれまでのとは違うジャンルの表現の仕方も併せて使用するようになってきました。
代表的な物がさっき上げた「糞ゲー」ですがそのほかにも、
「味ゲー」
「馬鹿ゲー」
「ギャルゲー」、
「エロゲー」(というか本当はこれが元の語源じゃなかろうか)
「音ゲー」
などと、用途も呼び名も多種多様。
そんな中、私が今回取り扱うこのゲームにそれらの称号(?)をあたえるとするならば、この言葉を与えてあげたいです。
「惜しゲー」
惜しゲー。惜しいんです。もうちょいなんです。
このゲームに出会って8年(2003年現在)。私は超魔法大陸WOZZという名前を思い出すたびに、
「あれ、本当に惜しかったよなぁ…」
と、切ない気持ちになります。
なにが惜しいのか? これからおいおい話して参りましょう。
では、記念すべきか記念せざるべきか、ゲーム枯れ知識コラム、コーナーできて以来事実上初の書き下ろし話は超魔法大陸WOZZ(機種:SFC メーカー:BPS)です。
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まず、このゲームはゲーム雑誌を通じて一部読者が企画に参加するという形で開発が進められていったゲームです。
ラグランジュポイントや、ソルモナージュ(ソフト会社のファンクラブだけど)とか、そういうタイトルのお仲間ですね。
で、この超魔法大陸WOZZがお世話になった雑誌が「ゲーム ON!」。
小学館から発行されていましたが、遠の昔に廃刊です。
けれど、当時の「ゲーム ON!」誌でこのゲームを取り扱う勢いは半端ではありませんでした。
取り扱うというよりは、すでにタイアップといった感じ。
総合ゲーム雑誌ではあったんですが、派手にページを使ったゲームの紹介と、キャラクターデザインをつとめた樫本学ヴ先生が漫画を描いたりと、とにかくスゴイ勢い。
他の雑誌ではファイナルファンタジーかドラクエかを扱う勢いで…、いや、それ以上の勢いでこの超魔法大陸WOZZを紹介していました。
その甲斐あってか(?)、当時この雑誌を購読していた私は超魔法大陸WOZZにそれなりの期待を抱いたもんです。結構このゲーム専属のコーナーも盛り上がっていましたしね。ですが、まぁ、発売メーカーの「BPS」さんがその昔「スーパーブラックオニキス」などというものを販売していたので一抹の不安は感じておりました(パソコンの移植にしても…わざわざこんなものを…ねぇ)。
時は流れ、ついに超魔法大陸WOZZ発売。実際の売れ行きのほどはどうなったのかというと。
ガックシ。バッテン。
燃えたのは「ゲーム ON!」だけだったんでしょうか(笑)。ついでに今このゲームを支持してる人って「ゲーム ON!」の購読者だった人が多いと思います(想像だけど)。
ですがこのゲーム、売れ行きがイヤンだったからといって私が「惜しゲー」と述べたとおり、決してヘッポコぷーな内容ではありません。と、思ってます(笑)。
では「惜しゲー」たるゆえん「こういういい所があるのに…」という「惜しい」部分をこれから語っていきましょう。
まずシナリオに関しては、
「なんか色々テンパッて来たから、異世界から勇者を召還で引っ張ってきました。でも召還されたのは勇者とはとても呼べないチェリーな若者達でした。しかも、再度その若者を召還元に返す余力はないんでなんとか相手をボコにしてください」
という、ありがちな 「現世=ファンタジー」 相互リンクな世界物語です。
ですが、その世界観をそのままシナリオに持ってくるのではなくて、システムの方にしっかり持ってきてるのは秀逸です。
主人公キャラの一人、レオナの「発明」。現世の科学を持ち込んでみましたというコマンドですが、ただのアイテムクリエイション(どっかで聞いた名前だ)に飽きたらず、陸を走ったり海を渡ったり空をとんだりする乗り物類まで発明出来ます。アイテムクリエイションより凄い発想です。
イベント進行用の乗り物まで製作するというのはなかなか考えられたものですね。さらにロボットまで製作できちゃったりします。
乗り物、ロボット類はそのまま敵と戦えるというスグレもの。
なかなかどうして、結構色々と楽しませてくれます。このゲームの核とも言うべきシステムでしょう。
ちなみににアイテム製作関係に特化した「研究」なんてものもあります。
そのほか変わったシステムがないかと目を当ててみますと、戦闘の高低差なんてものが。
高いところから攻撃すると有利なんていうちょっぴり現実感あふるる、シュミレーションにありがちなシステムをRPGで豪快に再現しております。
地震系とかの特技を使うと地形が変形と、そんな感じです。ザッツ自然破壊。
また、ライトなギャグと謎解きが多いのもこのゲームの特徴。
レバーを引くとタライがおちてきたりとかね。
このように、システム自体はそこそこいい感じです。今のゲームでも通用します。と言うのはちょっと言い過ぎで、多少は今風に捻らないといけないかもしれませんが、根本的な物はしっかり出来ています。やるじゃん、BPSという感じです。
しかしこれだけで「惜しゲー」と呼ぶにはもう少しインパクトが欲しいところですので、このゲームの一番いいところを述べましょう。
ズバリ制作者の愛と期待が光っています。
純粋に超大作を目指して作られたというべきか、シナリオもイイ意味でかんなり長くて、プレイする方も「出し切ってる」という感が伝わって来るんですよ。
一本道なんだけどなりに豊富なイベントが次々に来ます。
こういう単純に大作を目指したゲームってこの当時結構あったとおもうんですが、息切れが多く、こっちが満腹になるまでやりきってるのは事実少なかったので、結構貴重な存在とも言えます。
キャラ達の設定の方も頑張っており(更に言うと樫本センセの絵もなにげにマッチ)、それがちゃんとシナリオでも機能していて、さらにはお話における細かな演出も余すことなくやりきっているので、しっかりWOZZの世界観にはまれる運びとなっているのです。
これらをみていると本当に丁寧に製作されてるなぁってことが分かります。
更にこれは「ゲーム ON!」をみていた人にしかわかりませんが、発売前、このゲームに対して熱っぽくカラーでバンバン紹介し、開発陣のスナップショットまでのってたりします(物はないんで覚え書きだけど)。
それらをみてるとこれを開発してる人達のこのゲームにかける意気込みと期待が嫌でも伝わってくるんですね。
最後に極めつけにちょいとネタバレですが最後の画面には「また会いましょう!」(日本語訳)の文字。
子供に夢を売るといっても商業優先のこの業界。最後にこういう事を書く同人以外のゲームってそんなにはないですよ、実際。覚えてるのは「カエルの為に鐘は鳴る」とかかなぁ。
で、ここまで褒めちぎるこのゲームが売れなかったのか。
更になんでコアな人気さえもあまり獲得せず、「知る人ぞ知る、いや、知る人しか知らないしそんなにいない」程度のとっても知名度の低い状況にあるのか。
それはまぁしりませんが(笑)、次にそういう敗戦原因にともすれば当てられる「惜しゲー」の「これさえなければ…」という「惜しい」部分に次は触れてみましょう。
というかこちらは簡単(まぁ、粗を探すのはどんなゲームでも簡単です)。
一言。
「地味!!!」
地味なんです。伝染るんです。
嘘です。伝染らないですが、地味です。
地味なんですよね。見た目でかなり損をしているというか。
キャラのドットや背景、マップは及第点の上をいく描き込み具合なんですから、もうちょっと工夫しておけばもっとインパクトあったのになぁと。
地味具合はまずウインドウなどが目に付きますが、一番のウイークポイントは戦闘シーン。
いえ、戦闘シーンの一枚絵自体ならそこそこのものです。
敵・味方キャラも描けてるし、背景もバッチグー。斜め見下ろし型の画面も別にパッと見悪い出来ではないです。
なんですが、戦闘アニメがいただけない。
妙にタルっと動く上に、敵を攻撃したときのエフェクトが爽快感ないんです。
さらに、主人公のうち二人は武器に飛び道具を使用しますが、攻撃すると飛び道具が自分からまっすぐ直線に飛んでいき、敵集団の前で攻撃ターゲットの方向へくいっと曲がるという(ごめんなさい、うまく説明できませんでした。どういうことかは実際やってみてください(笑))、なんだか無理矢理な感じ。
似たような戦闘シーンで「ブレスオブファイア」というゲームが既に2年前に出てたんですから、それと同等か上をいっとかなくちゃあ…。
こういう感じですから、せっかくの乗り物・ロボット達も戦闘の迫力がそがれて威力も面白さも軽減。
良質のアイデア、及第点のシステムを、最後の最後、プログラムで再現しそこねたままいっちゃったという(涙)。
この辺がWOZZがWOZZたるゆえんだったのかというか…(笑)。
はがゆいんですよね。
もうちょいがんばっておけば、十分胸張って「これはスゴイ!」といえる物ですし、シナリオはそのまんまで上記の点を改善してたら、多分他誌も食いついてきて売れてただろうし、まぁもし売れてなくても今よりは支持者の多い「カルトな名作」(エストポリス伝記Uのような)の地位を獲得出来てたかもしれないと思うんですよ。
そういうことで、このゲームは私がこの世で一番「惜しかったなぁ」と思うゲームです。
地味さを除けば、一般的にも水準より上を行く作品だと思います。…と、信じています(笑)。
もし興味がありましたら、スーパーファミコンを扱ってる中古ソフト屋さんなんかで手に取ってみて下さいね。
シナリオは練ってなさそうでもなにげに練られていますし、世界設定も凝ってなさそうでもなにげに頑張ってますから(笑)、決してわるいソフトじゃないはずですよ。 |