“自衛隊が図書館にやってきた”
子ども向け企画として笠懸図書館が開催、疑問の声も 2023.12.5
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南極の氷に触れられるコーナーも。 |
勤労感謝の日の11月23日(金)、多くの保育園児や幼稚園児、小学生とその保護者らが笠懸図書館で行われた「自衛隊が図書館にやってくる」の行事に参加しました。
この行事は、市内で森林火災の消火などに当たってくれた自衛隊の災害救助の仕事を知ってもらう機会として図書館が企画したものです。当初は南極の氷や装備品などの展示、戦車や軍艦の塗り絵、戦闘機のペーパークラフト、ミニ制服などの体験を行うというものでしたが、市民団体から「子どもたちが戦争のための武器などに触れる機会を図書館が持つというのはあまりにも市民感情を軽視したものである」などの抗議を受けて、「市民感情への配慮が足りなかったところもある」として再検討の意向を表明していました。
この日行われたのは御嶽山の噴火時や熊本地震での救助のようすを示した写真展示、幼稚園の地震災害時を扱った『きっと助けに来てくれる』という紙芝居、「南極の氷に触れる」、「自衛隊装備のリュックを背負ってみる」などの体験、「本結び」「もやい結び」などロープの結び方の教習などで、戦闘機のペーパークラフトや軍艦の塗り絵などの体験は用意されていませんでした。子どもたちはリュックを背負って「わー、めっちゃ重い」と声を上げたり、南極の氷を触っては「硬くて冷たい」と声を上げ、「氷には昔の空気が閉じ込められている」などの説明に耳を傾けていました。図書館員から「いろいろな立場の人がいるので、撮影はご遠慮ください」と言われ、撮影ができなかったのは残念でした。
図書館前の道路では、「憲法九条を守ろう」の横断幕を掲げた人たちが、「自衛隊の主な仕事は災害救助なの?災害救助は二の次の仕事です」と書かれたビラを来館者に配布していました。メンバーの一人は「自衛隊は武器を持った軍隊であり、戦争は弱いものが殺される場です。子どもたちを洗脳するようなことは許されません」と話していました。
市民団体の申し入れを図書館当局が受け入れ、企画の一部を変更したこともあり、この日は特に混乱もなく行事は行われました。しかし、自衛隊の装備や武器を題材にした体験を幼い子どもたちを対象に実施しようとした当初の計画は不適切であったと言わざるを得ません。日本図書館協会の『公立図書館の任務と目標』という文書の中で、図書館は住民の要求あるいはニーズに応える機関であること、活動の企画においても住民参加が欠かせないと書かれています。今回の出来事を教訓にして、ぜひ住民の願いに応える行事とは何かを追求してほしいと思います。